🚙 イギリスでEVが思うように普及しない本当の理由

「2030年にはガソリン車とディーゼル車の新車販売を終了する」という政府の目標を掲げるイギリス。しかし、その道のりは決して平坦ではありません。政府はEV購入者に最大で約3000ポンドの補助金を提供し、充電インフラの拡充にも投資を進めていますが、実際には普及が思うように進んでいません。 その背景には、EVという新しい技術ならではの問題だけでなく、イギリス特有の住宅事情、地域間格差、価格政策の課題が複雑に絡み合っています。今回は「なぜイギリスでEV普及が進まないのか」を、現場の視点から掘り下げてみたいと思います。 1️⃣ EVはまだまだ「高い買い物」 まず多くの消費者が感じるのは「EVは高すぎる」という現実です。たとえば、イギリスの小型車市場で人気のVauxhall Corsaの場合、ガソリンモデルよりEVモデルは約5700ポンド高価です。政府が用意した最大3000ポンドの補助金を差し引いても、なお2000ポンド以上の差が残ります。 また、EVの販売価格が高い理由の一つはバッテリーです。EVのコストの大部分はバッテリーに集中しており、原材料価格が高止まりする中で値下がりは簡単ではありません。この「価格差」が、消費者の心理的障壁になっています。 さらに購入時の不安要素として「中古市場での価値」があります。EVのバッテリー劣化や技術進歩の速さが「数年後に価値が急落するかもしれない」という懸念を呼び、購入をためらわせているのです。 2️⃣ 充電インフラの偏在と「充電デザート」 イギリスのEV普及における大きな課題が「充電インフラ」の不足と偏在です。ロンドンや主要都市圏には比較的充実した充電ステーションがありますが、地方や郊外では状況が全く異なります。 いわゆる「充電デザート」と呼ばれる、最寄りの急速充電器が25km以上離れているエリアも多く存在します。特にイングランド北部、南西部、農村地域では「そもそも充電する場所がない」状況であり、こうした地域の住民にとっては「EVを買う」という選択肢自体が現実的ではありません。 加えて、イギリスの住宅事情も障害になります。約40%の世帯は自宅敷地内に駐車場を持っておらず、「自宅で夜間に充電する」ことができません。そうした人々は公共の充電器に頼らざるを得ませんが、その数は限られ、充電器の稼働率や故障率にも問題が残っています。 3️⃣ 公共充電は「高い」「面倒」「不便」 仮に近所に充電器があったとしても、そこにはさらなる課題が待っています。自宅充電では1キロワット時あたり6~10ペンス程度の電力料金で済むところ、公共の急速充電器では80ペンスにも達するケースがあります。 これは「110マイルを走る場合、自宅充電なら2~3ポンドで済むのに、公共充電だと25ポンド以上かかる」という格差を生み出しています。結果的に「充電できる環境を持たない人ほど、ランニングコストがかかる」という矛盾した状況に陥っています。 さらに、充電器ごとに異なる認証方法、決済方法も利用者のストレスを増大させています。スマートフォンアプリの登録、専用カードの発行、異なる料金体系など、現状の公共充電体験は「ガソリンスタンドで給油する」というシンプルさからほど遠いと言えます。 こうした細かい「煩わしさ」も、特に一般消費者のEVへの関心を削ぐ要因です。 4️⃣ 支援制度が「足りない」「一貫性に欠ける」 イギリス政府はかつて「Plug-in Car Grant」というEV補助制度を導入しましたが、2022年に一度廃止。その後、再び3000ポンド程度の補助を設けています。こうした制度の「出たり消えたり」は消費者に不信感を与え、「本当に今EVを買ってよいのか」という疑問を生じさせます。 また、支援の内容も限定的です。新車購入補助に加えて、政府は「公共充電器への投資」を行っていますが、その予算規模は決して十分とは言えません。 さらに、家庭充電と公共充電で課税率が異なる問題もあります。家庭用電気料金には5%の軽減税率が適用される一方で、公共充電では20%の標準VATが課されるため、自宅で充電できない人が割高な負担を強いられているのです。これは「住宅環境によって支払うコストが左右される」という公平性の問題として注目されています。 5️⃣ 地域間格差・社会格差も背景に 都市部・裕福層ほどEVの導入が進んでいる一方で、地方や所得の低い人々は「価格が高くて買えない」「充電場所がない」「公共充電が高い」と三重の不利を抱えています。 つまり、現状のEV政策は社会的弱者に不利に働いており、このことが格差の拡大を助長しかねないという懸念が指摘されています。EV政策は「地球環境のため」という大義名分がありますが、その一方で「公平性」という観点から見れば改善が必要な状態なのです。 6️⃣ 何が必要か?改善へのヒント では、イギリスでEV普及を進めるためにはどのような改善が必要なのでしょうか。主なヒントを挙げてみます。 🔹 公平な充電インフラ整備地方、特に充電デザートと呼ばれるエリアへの重点的な充電器整備が不可欠です。また、住宅街では「歩道下への充電ケーブル配線」など現実的な解決策の導入も必要でしょう。 🔹 公共充電の料金改革家庭充電と同じ5%VATの適用、公的補助による価格調整、場合によっては特定の条件下での「無料充電」オプションなど、公共充電の負担軽減が求められます。 🔹 充電器の信頼性向上と利便性改善故障率の低減、複雑なアプリ・カード認証の簡素化、ワンタッチ決済の普及など、利用者目線のサービス改善が重要です。 🔹 一貫性ある長期的支援消費者が安心してEVに乗り換えられるよう、補助金政策やインフラ政策に「予測可能性」と「継続性」を持たせることが大切です。過去のように政策が二転三転すると、消費者は慎重になり、結果として普及が遅れます。 まとめ 政府の支援金は確かにEV購入への後押しにはなりますが、車両価格の高さ、充電インフラの偏在、公共充電のコストと手間という現実的なハードルの前では、まだ「不十分」と言わざるを得ません。特に、住宅事情や地域格差を背景とした「公平性の課題」が、イギリスのEV普及を難しくしています。 EVの普及は単なる自動車の買い替えではなく、社会全体のインフラ整備、制度設計の見直し、そして「誰でも使いやすい」という公平な社会設計が必要です。 これから数年、イギリス政府の政策がどこまでこうした現実的課題に向き合い、抜本的な解決を図れるか。そこが、イギリスのEV普及の成否を分けるカギとなるでしょう。

「ロンドンの夏は暑すぎる!運転マナー激変と街中の怒号──猛暑のロンドンで起きているリアルな風景」

ロンドンにようこそ──ただし、いつもと違う顔を持つ「暑すぎる夏のロンドン」へ。ここ数日、太陽は容赦なく輝き続け、私たちは待ちに待った夏だと喜んでいたのに、気付けば蒸し暑さにうんざり。街を歩けば蒸気でむせかえるし、地下鉄の車内はまるでサウナ。そんな中、車に乗れば、普段の穏やかなロンドンのドライバーたちが豹変しているのだ…… ☀️ 1.待ち焦がれた夏、期待と現実 数か月前、冬の寒さからようやく解放され、春に向けて芽吹く緑を見つめながら「今年こそは、あたたかいロンドンの夏を満喫したい!」と心躍らせていた。ピカデリー・サーカスの角でアイスクリームを買い、ハイド・パークで読書し、テムズ川沿いでゆるやかに過ごす──そんな夢を描いていた人は、私だけではないはずだ。 しかし、太陽が本気を出し始めたところから、状況は急変。ロンドンの気温は連日30℃以上、湿度も高め。日本とは違い、エアコン設備が街中に普及していないため、室内も車内もジワジワと蒸されるような感覚に囚われる。日陰に逃げ込もうとするも、アスファルトからの照り返しでまるで網の目に入った虫のように蒸されている──そんな日常だ。 🚗 2.ニコッと挨拶が消えた! 増す冷たい視線、そしてクラクション ● 空気が変わるドライブ風景 普段、ロンドンのドライバーは穏やかで控えめ。歩行者や他の車に道を譲り合うことで知られていた。それが、この暑さを境に、変わり果ててしまった。クラクションが無秩序に鳴り響き、赤信号無視や急発進急ブレーキが日常化。車線変更の際の横入りに割り込んでくる車も増え、背後には怒号と「Move it!」「What the hell are you doing?」といった短い悪態が飛び交う。ロンドンの街に走るのは緊張と苛立ち──「静かな闘争」だ。 ● 窓全開の地獄ツアー? 英国の夏、通称「ロンドン・スウェット・ツアー」は窓全開で走るのが常識だった。しかし今季はただの自虐的なサバイバルだ。熱気と排気ガスが入り混じり、車内が地獄のように暑い。にもかかわらず、「早く降りてエアコンのあるカフェにでも避難したい」という無言の圧力が背中を押す。そんな中、信号待ちで脚を伸ばし気を紛らわせていると、「ポンッ」と車の窓が開いて運転手が怒鳴ることも。「I’ve had enough!」「Keep your windows up!」と、猛暑下のストレスが一気に爆発する一瞬がそこかしこで見られる。 😡 3.なぜこんなに怒りっぽくなるのか? 気温と心理の関係 暑さ=短気のもと 心理学的にも知られるように、暑さは人の感情に大きく影響する。気温が1℃上がるごとに、怒りや攻撃性を司る生理的反応が増大しやすいという研究結果もある。ロンドンの住人も例外ではない。常に「これは暑すぎる」とイライラし、ちょっとしたミスにも敏感に反応してしまう。今日は歩行者が遅く渡った、昨日はドライバーが一瞬無視した──それだけでキレてしまう。 マナーの逆作用 ロンドンのドライバーは通常、きちんと順序を守ることに誇りを持っている。でも現状を冷静に見ると、「みんな暑さで疲れている」という共通認識があるからこそ、ちょっとした遅れやミスが”裏切り”に感じられるのだ。例えば、右折ウインカーを出すのを忘れただけで「この暑さのせいで常識すら忘れたのか?」と逆上する。つまり、マナーという名のハードルが逆に「完璧さ」を要求しているのだ。 🏙️ 4.街中の光景:車 vs 車、ドライバー vs 歩行者 交差点は戦場に変貌 信号待ちは露骨なストレス場に。早く青になってほしいがために、赤信号でも前に行こうとして交差点で詰まり合う車。後ろでは、割り込もうとする車と押し合うようにクラクションの応酬──一瞬だけだが、光景はまるで小さな戦場だ。 歩行者との無言のバトル 歩道からは車窓に向かってボタンを連打し抑制を促すドライバー、逆に歩行者は「ちょ、早くしろよ」の顔で対峙。お互い目を合わせて火花が散り、ロンドンらしい淡々とした空気が突如緊張感に包まれる。しかしすぐに冷えてまた、ロンドンでしかできない「あうんの呼吸」に戻る。 🧊 5.対策? 暑さ対コンクリートジャングルでの知恵 クールダウンのための準備 コミュニケーションで希薄さを補う 🌿 6.それでも夏は必要だった この暑さの中での飛び交う怒号と苛立ちに触れて、つい人混みにゲンナリしてしまうかもしれない。でも振り返ってみれば、これは「生きてる」証。ロンドンの街が、気温とともに生気を帯びている瞬間でもある。 ──待ちに待った夏だからこそ、「暑すぎる!」と文句を言いたくなるのは自然だし、「今日はちょっとイマイチだな」と切りたくなる人がいても当たり前。むしろそこにこそ、夏の醍醐味、いや、夏の“本性”がある。 🎶 7.まとめ:この夏、あなたが遭遇するかもしれないこと シチュエーション 予想される事象 対応ポイント …
Continue reading 「ロンドンの夏は暑すぎる!運転マナー激変と街中の怒号──猛暑のロンドンで起きているリアルな風景」

イギリスでの車所有は日本人にとって試練の連続?―狭すぎる駐車場、盗難、そして保険事情まで

日本人にとって車は「大切な財産」であり、丁寧に扱うのが当然という文化があります。しかし、イギリスではその価値観はあまり共有されておらず、車はあくまで「移動手段」という位置づけ。そのため、日本の感覚で車を所有すると、日々ストレスを感じることになります。 ◆ 狭すぎる駐車場と“ドアパン”のストレス イギリスのスーパーマーケットやショッピングモールの駐車場は非常に狭く設計されています。ドアを開ければ隣の車に接触してしまうようなスペースが当たり前で、どれだけ注意していても**“ドアパン”(隣の車のドアによる接触傷)**は避けられない環境です。 さらに、イギリスでは駐車場のマナー意識も日本ほど高くなく、駐車スペースをはみ出して停める、斜め駐車、車幅ギリギリの強引な駐車なども頻繁に見かけます。こうした現状に、日本人は大きなカルチャーショックを受けることになるでしょう。 ◆ 当て逃げ多発、そして車載カメラは“前・後・左右”が基本 イギリスでは当て逃げ(hit and run)が非常に多発しています。車をこすられても加害者が名乗り出ることは稀で、駐車中の事故も見て見ぬふりをされがちです。こうした背景から、多くのドライバーが全方向に車載カメラ(ドライブレコーダー)を設置して、自衛しています。 特におすすめされるのは、以下の構成: 録画データは当て逃げの証拠として警察や保険会社に提出する際に非常に重要です。 ◆ 車両盗難は年々巧妙に――イギリスの盗難率とその背景 イギリスでは車両盗難が社会問題となっており、特にロンドン、バーミンガム、マンチェスターなど都市部での被害が顕著です。英政府の犯罪統計(Office for National Statistics, 2024年)によると、 さらに近年では、**電子機器を使った“リレーアタック”や“CANインベーダー”**と呼ばれるハッキング手法で、鍵なしでも数分で車が盗まれるケースが急増しています。 ◆ イギリスの自動車保険制度:カバー範囲と注意点 イギリスでは、車を公道で運転するには最低限「Third Party(対人・対物賠償)保険」の加入が義務付けられています。しかし、車両損害や盗難までカバーするには、以下のようなフルカバー型の保険を選ぶ必要があります: 保険タイプ カバー内容 Third Party 他人への損害賠償のみ(自分の車は対象外) Third Party, Fire and Theft 上記+火災・盗難被害までカバー(車両損傷は対象外) Comprehensive 自車の事故・盗難・当て逃げまでカバー 盗難や当て逃げの被害に備えるなら「Comprehensive(包括保険)」一択です。また、保険会社によっては、車載カメラ装着やGPSトラッカー導入により保険料が割引されることもあります。 ◆ 被害にあった場合の対応フロー 1. 証拠の確保ドライブレコーダー映像、現場写真、目撃証言などを速やかに集めましょう。 2. 警察へ通報盗難や当て逃げに遭った場合は、必ず**警察に連絡し、Crime Reference Number(事件番号)**を取得する必要があります。保険請求に必須です。 3. 保険会社に連絡保険の種類に応じて、修理費や代車の提供が受けられる場合があります。早めの連絡がスムーズな対応につながります。 4. 防犯対策の見直し同様の被害を繰り返さないために、駐車場所の変更、防犯装置の追加、車種の見直しなどを検討しましょう。 ◆ 日本人が取るべき現実的な対策 まとめ:割り切りと対策がカギ イギリスでの車所有は、日本と同じ感覚で臨むと心身ともに疲弊してしまいます。文化の違いを理解した上で、「割り切るべき点」と「守るべき資産」のバランスを取り、現実的な対策を講じることが、快適なカーライフへの第一歩です。

イギリスのMOT検査とは?検査内容から業者選びまで徹底解説

イギリスに住んでいる自動車所有者にとって避けて通れないのが「MOT検査」。これは日本でいう車検に相当する制度で、車両の安全性、環境性能などをチェックするために毎年実施されます。この記事では、MOT検査の具体的な内容、検査に通らなかった場合の対応、業者ごとの違い、そして信頼できる整備工場の選び方について、深く掘り下げて解説します。 MOT検査の概要 MOT(Ministry of Transport Test)は、車両が公道を安全に走行できる状態かどうかを確認する法的義務のある年次検査です。イングランド、ウェールズ、スコットランドで登録されている車両は、初度登録から3年を過ぎると、毎年MOT検査を受けなければなりません(タクシーや救急車など一部の例外あり)。 検査は、国の認可を受けたMOTテストセンターで行われ、検査合格後には「MOT証明書(VT20)」が発行されます。合格しなかった場合は「MOT失敗通知(VT30)」が出され、指摘された不備を修理し再検査を受ける必要があります。 検査内容とは? MOT検査でチェックされる項目は主に以下の通りです。 検査は視認確認が中心で、部品の分解や内部の点検までは行いません。そのため、見た目に現れない故障や問題点はMOTでは見逃される可能性もあります。 MOTで不合格になった場合の対応 MOT検査に不合格となると、指摘された箇所を修理し、再検査を受ける必要があります。ここで問題になるのが、検査業者がその後の対応についてどのように扱うかです。 業者によって異なる「連絡の有無」 MOT検査に落ちた際に、 という2種類の対応が見られます。 法律的にはどちらが正しい? イギリスの運輸省(DVSA: Driver and Vehicle Standards Agency)のガイドラインでは、MOTテストセンターには検査結果を正確に報告する義務はありますが、「連絡義務」や「修理の提案義務」はありません。つまり、業者が連絡をくれるかどうかは法律で定められていないため、業者の方針次第となります。 ただし、顧客サービスの観点から、問題点を説明したり、修理の選択肢を提示する業者の方が信頼されやすいのは確かです。 修理費の違いと注意点 MOTで不合格になった後に必要な修理費用は、業者によって大きく異なることがあります。以下の理由が考えられます: 中には、意図的に高額な見積もりを出し、実際には軽微な修理しかしていないケースもあるため、見積書は詳細まで確認することが重要です。 信頼できる整備工場の見極め方 修理業者の選定は、費用面だけでなく安全性の面でも非常に重要です。以下のポイントに注意しましょう: 1. レビューと評価をチェック GoogleマップやTrustpilot、Yell.comなどでの顧客レビューを確認し、特に「MOT後の対応」や「料金透明性」に関するコメントに注目しましょう。 2. 認定マークの有無 「Good Garage Scheme」や「Motor Ombudsman」に登録されている業者は、一定の顧客対応基準を満たしており信頼性が高いとされています。 3. 見積書の明確さ 詳細なパーツ明細、工賃、VATの有無まで明示されている見積書を出す業者は、信頼性が高い傾向にあります。口頭説明のみの業者は要注意です。 4. 修理前の承諾確認 修理前に必ず確認を取る業者(=勝手に修理を進めない)は、顧客との信頼関係を大事にしている証拠です。 まとめ:MOT検査を味方につけるには イギリスでのMOT検査は単なる義務ではなく、安全・安心なカーライフを守るための重要なチェックポイントです。検査内容を理解し、業者ごとの対応の違いを知ることで、不必要な出費や不安を避けることができます。 車のメンテナンスは命を預ける行為でもあります。信頼できる業者を見つけ、MOTを面倒ではなく「安心材料」として活用していきましょう。

イギリスでの中古車購入:個人売買や小規模業者から買ってはいけない理由

近年、イギリスでは物価高騰とともに中古車市場も大きな変化を見せています。特にコロナ禍以降、新車の供給が滞った影響で、中古車の需要が急激に高まり、その結果として価格も高騰しました。多くの人が手頃な価格で信頼できる車を求める中、「Autotrader」や「Gumtree」、「Facebook Marketplace」などのオンラインプラットフォームを通じた個人売買や、小規模修理工場が販売する車を検討する人も増えています。 しかし、結論から言えば、「イギリスで車の個人販売には手を出してはいけない」と断言できます。本記事では、なぜそう言い切れるのか、その背景にあるリスクやトラブル事例、信頼できる購入先の選び方などを詳しく解説していきます。 目次 1. イギリスの中古車市場の現状 イギリスでは、自動車の新車登録台数が年々減少傾向にある一方で、中古車の販売数は安定的に推移しています。これは新車の価格上昇、サプライチェーンの混乱、ブレグジットによる輸入制限など複合的な要因が関係しています。 これにより、中古車の需要が急増。2023年には、平均的な中古車価格が過去最高を記録したとの報告もあります。小型車でも£5,000以上、中型車で£8,000〜£12,000が相場になりつつあり、以前のような「数百ポンドで良い車が手に入る時代」は完全に終わったと言えるでしょう。 2. 個人売買の魅力と落とし穴 AutotraderやFacebook Marketplaceには個人が直接出品する中古車が多く出回っています。一見、ディーラーを通さない分、価格が安く見えるのが魅力です。しかし、そこには大きなリスクが潜んでいます。 主なリスク 特に走行距離(Mileage)の改ざんや、HPI(Hire Purchase Information)未チェックの車が多く出回っており、トラブルが絶えません。個人間売買では法的保護も非常に弱く、販売者が雲隠れすればそれで終わりです。 3. 小規模修理工場の闇 一部の中古車は小さな修理工場(mechanic garage)から販売されており、こうした業者は「プロだから安心」と思われがちです。しかし、現実はそう甘くありません。 小規模工場の特徴とリスク こうした業者は、表面上は清掃や塗装がされており綺麗に見える車でも、ブレーキパッドの摩耗やタイミングベルトの老朽化など、致命的な故障リスクを抱えた車を平然と売りに出しています。 4. ロンドン西部の修理工場事情 特に注意が必要なのがロンドン西部(例:Southall、Hounslow、Hayes、Ealingなど)にある小規模修理工場です。 ここでは次のような傾向が見られます。 この地域には比較的多国籍なバックグラウンドを持つ工場経営者が多く、言葉の壁や文化的背景を悪用して交渉を不利に進めるようなケースも報告されています。 5. よくあるトラブル事例 事例1:購入後1週間でエンジン警告灯点灯 Facebookで見つけた車を£3,000で購入。3日後にエンジンチェックランプが点灯し、修理工場に持ち込むとターボが完全に壊れていた。修理費は£1,800。 事例2:HPI未確認で未払いローン付き Autotraderで見つけた車を安く購入したが、数ヶ月後にファイナンス会社から差し押さえの通知。実はローンが完済されていなかった。 事例3:ブレーキが効かない 小規模修理工場で「点検済み・安心」と書かれた車を購入。2週間後、高速道路でブレーキが効かなくなり事故未遂。整備記録もなかった。 6. 法律と消費者保護の限界 イギリスには「Consumer Rights Act 2015」や「Sale of Goods Act」など、消費者を守る法律がありますが、これはあくまで商業ディーラーからの購入が前提です。個人間売買では、基本的に「現状有姿(sold as seen)」が適用されるため、購入後に問題が発覚しても訴訟するしかありません。 加えて、訴訟費用や手間を考えると、多くの人は泣き寝入りするしかないのが現状です。 7. 安全な中古車の購入方法 最も安全なのは、以下の条件を満たす大手中古車ディーラーを利用することです。 たとえば以下のような販売店やプラットフォームが該当します。 8. おすすめの信頼できるディーラーとプラットフォーム これらは価格は若干高めでも、トラブルリスクが圧倒的に少なく、安心して購入できます。 9. …
Continue reading イギリスでの中古車購入:個人売買や小規模業者から買ってはいけない理由

なぜ雨の国イギリスで「オープンカー」が売られ続けているのか?

【はじめに】 オープンカー。その名前の通り、トップを開けて風を切り、太陽の光を目いっぱいに受けながら走る。その情景は、ハワイやカリフォルニアのようなトロピカル地域を思い起こさせるだろう。 しかし、ここはイギリス。小雨や暮れ暮れとした天気、さらによく話題になるPM2.5などの空気汚染。そして人口密寄の大都市ロンドンにおけるドラフィックの狭さ。 こんな環境でなぜ、そしてだれが、オープンカーを選ぶのだろうか?そのナゾと矛盾を深掛りに考察してみよう。 【経済・市場的背景】 そもそもオープンカーは不要事なのではないか。そんな覚悟の上で買われるこの車は、それ自体がもはや「亲好品」であり、必要性よりも感性に基づく買い物である。 イギリスは自動車用品市場が楽しまれる有力な国の一つであり、「アストンマーティン」や「ジャガー」など、ライフスタイルを重視する働きかけも多い。とりわけ、カーライフやハーレーダーなどのプレミアムライフメーカーにとって、オープンカーは一種のステータス象徴となる。 そして形の上でのバリエーションの591aさは、大手メーカーがヨーロッパで販売モデルを絞る中で、イギリスのような市場は仍然に重要であることを意味する。 【ロンドンの空気汚染と開放感の矛盾】 ロンドンは証券仕組みと世界経済の要地である一方で、PM2.5や一気気化物の汚染空気が問題視される地域でもある。 しかし、人はラショナルな選択をするものである。 「どうせ富士山も見えないし、日光も少ない。でも、せめて、オープンにして、風を感じて走りたい」 そんな、ロンドンという現実と自分の満足を抑えるための、軸のずれたロジックがこの選択をさせる。 そして実際には、オープンで走っている人は、その楽しみを「ごく突発的に」行います。たとえば、まれに現れる晴れ間。それも日曜日。このような「一瞬の機会」を大事にするのは、いわば、イギリス人の「ウィット」的精神の表れとも言えるだろう。 【文化的要因】 イギリスは、カーカルチャーやモータースポーツなど、自動車文化の経歴も深い。 クラシックカーの素養として、オープントップカーは、たとえ実用性にかけたとしても、一定のロマンを持ってる。 それはまるで「アフタヌーンの新しいスーツ」のようなもので、「それを着ることによって、自分を従えさせる」。そんな、パフォーマンス性が位置づけられているのである。 【おわりに:矛盾を楽しむイギリス人の動態】 オープンカーは、確かにロンドンの環境には適していない。 だが、その適していないことこそが、逆に課題意識を刺激し、人を「わざわざ」選択に足を向けさせる。 それは、文化、イメージ、経済、人間の想像力。そのすべてが重なり合った結果、オープンカーは雨のロンドンを走る。 その車内で、たとえ微笑を気にすることはなくとも、きっと主人公は「自分らしい」時間を楽しんでいるのだろう。

イギリスで車を持つなら「正規ディーラーで新車契約」が最も安全な理由~外国人が中古車と整備工場で直面するリアルなリスクとは~

イギリスで生活するにあたり、公共交通機関だけでは生活が不便な地域も多く、車の所有を考える人は少なくありません。特に郊外や地方都市では、車はほぼ必需品です。しかし、いざ「車を買おう」と思っても、現地での購入方法やメンテナンス体制に不安を感じる人は多いのではないでしょうか。 日本と同様、イギリスにも新車・中古車を購入する選択肢がありますが、外国人という立場で考えると、新車を正規ディーラーから購入する方が圧倒的に安全で安心です。本稿では、その理由を深掘りし、中古車を買って整備工場を利用した際のリスクや、実際に起こり得るトラブルなども交えながら、約8000文字で徹底的に解説していきます。 1. 正規ディーラーで新車を契約する5つの安心ポイント (1)初期不良の心配がほぼゼロ 正規ディーラーで新車を購入すれば、その車は出荷前に厳格な検査を受けています。加えて、走行距離もゼロに近く、前オーナーによる乱暴な運転や整備不良などの心配もありません。中古車だと、走行距離や使用状況により、納車直後に故障するケースも少なくありません。 (2)3年間はMOT(法定点検)が不要 イギリスでは新車は初回登録から3年間はMOT(Ministry of Transport Test)を受ける必要がありません。これは日本の車検に相当する制度で、通常は年に1度必要になります。つまり、新車であれば最初の3年間は法定点検・更新費用の心配がなく、非常に経済的です。 (3)正規サービスの品質と信頼性 正規ディーラーにはメーカーのトレーニングを受けたスタッフがおり、最新の設備と診断機器を完備しています。車両に不具合が生じた場合でも、純正部品と専門技術で修理され、修理履歴も公式に記録されます。これにより、万が一の際も責任の所在が明確で、安心して車を任せられます。 (4)外国人でも明朗会計と法的保護がある 正規ディーラーは契約書、保証内容、整備履歴を詳細に記録し、料金も事前に明示します。イギリスでは「Consumer Rights Act」などの消費者保護法があり、正規業者との取引はその範囲内で守られています。言語や文化の違いでトラブルになるリスクが最小限に抑えられるのです。 (5)アフターサービスと保証の充実 通常、イギリスの新車には3年または走行距離6万マイルのメーカー保証が付きます(一部メーカーは7年保証などもあり)。この保証期間内であれば、故障や不具合が発生しても無料で修理対応してもらえます。さらに、定期点検パッケージや延長保証などのオプションも選べるため、長期的にも安心です。 2. 中古車を買って整備工場に持ち込むと起きがちな問題 (1)中古車市場は「当たり外れ」が大きい イギリスの中古車市場は日本以上に玉石混交です。個人売買、街角の小さなディーラー、大手中古車チェーンなど販売形態も多岐にわたり、整備履歴や事故歴が不透明なまま販売されている車も多く存在します。「安く買えた」と思った車が、実は多くの修理が必要なポンコツだった…というのはよくある話です。 (2)信頼できる整備工場を見つけるのが難しい 正規ディーラー以外の整備工場(インディペンデントガレージ)は、技術力や価格設定がまちまちです。中には優良な業者もいますが、外国人と見ると相場より高額な見積もりを出してくる業者も少なくありません。 (3)「修理したことにするだけ」の詐欺も横行 残念ながら、外国人がターゲットになることも多く、実際には修理していないのに高額な修理費を請求されるケースが報告されています。例えば、ブレーキパッドを交換したと伝えられたが、実際には古いまま。エンジンオイルの交換もされておらず、エンジンが故障するという被害事例もあります。 (4)保証がなく、トラブル時に泣き寝入りになることも 正規ディーラーと異なり、多くの小規模整備工場や中古車販売店は保証制度が曖昧です。書面で保証内容が明記されていないことも多く、トラブルがあっても責任を認めてもらえないことがあります。訴訟になった場合も、費用や時間がかかり、現実的に泣き寝入りになるケースがほとんどです。 3. 実体験から学ぶ:外国人が被害にあいやすい典型的パターン パターン1:安さに惹かれて個人売買で購入 → 直後にエンジンが故障 ロンドン在住の日本人Aさんは、Facebook Marketplaceで「格安・即納」と宣伝されていた中古車(フォード)を£1200で購入。しかし納車3日後、エンジンから異音が。修理工場で見てもらうと、「タイミングチェーンが切れかけており、修理には£1500かかる」との診断。売主は「売った後は責任を負わない」と返答し、泣き寝入りに。 パターン2:「地元で評判」と聞いた整備工場 → 実際には過剰請求 マンチェスターで中古車を所有する中国人Bさんは、近所のガレージにオイル交換とブレーキチェックを依頼。£60程度の予定が、後から「サスペンションが壊れていた」と言われ、£500を請求された。さらに数か月後、別の工場で診てもらったところ、修理は行われておらず、ブレーキもパッドが削れたままだった。 4. イギリスで車を持つ外国人がとるべき最善策 ① とにかく新車を選ぶ 価格は高めですが、安全性、長期的なコスト、精神的な安心感を考えると、新車購入が最も合理的です。さらに、リース契約やPCP(Personal Contract Purchase)など月額払いのプランも多く提供されており、初期費用を抑えることも可能です。 ② 正規ディーラーを通じて整備・点検する 車のメンテナンスやMOT、修理が必要な際も、必ず正規ディーラーや認定ガレージを利用するのが安心です。料金はやや高くつくこともありますが、品質・責任の明確さ・法的保護の面で安心できます。 ③ 口コミとレビューを重視する やむを得ず中古車を買う場合や、整備工場を利用する必要がある場合は、Googleレビュー、Trustpilot、Yelpなどの口コミを必ず確認しましょう。星の数やレビュー件数が多い業者ほど信頼できます。 まとめ:結論として新車+正規ディーラーがベスト イギリスでの車の購入・維持には、**「安全性」「信頼性」「法的保護」**という3つの観点が欠かせません。中古車+インディペンデントガレージという選択肢は、コストが安く見える反面、外国人には多くのリスクが伴います。 …
Continue reading イギリスで車を持つなら「正規ディーラーで新車契約」が最も安全な理由~外国人が中古車と整備工場で直面するリアルなリスクとは~

テスラとイギリス:アメリカ発の革新に英国民はどう向き合っているのか

はじめに アメリカ生まれの電気自動車メーカー「テスラ(Tesla)」は、世界的に注目を集めている存在だ。その革新的な技術、未来的なデザイン、そして創業者イーロン・マスクのカリスマ的存在感は、いまや自動車業界に限らず、テクノロジー界全体の象徴のような存在にまで成長している。 そんなテスラが、イギリスというヨーロッパの伝統と保守を重んじる国にどのように受け入れられているのか。アメリカに対する複雑な感情、そして輸入製品に対する英国人の姿勢を背景に、テスラは敵視される存在となっているのか、それともその革新性を素直に評価されているのか。本稿では、イギリスにおけるテスラの受容状況と、英国人の価値観や国民性との関係について深く掘り下げていく。 第1章:イギリスにおけるテスラの存在感 急増するテスラ車の登録数 テスラは2020年代に入ってからイギリス市場で急激に存在感を増している。特に人気なのが「Model 3」で、英国の新車登録ランキングでもしばしば上位に食い込んでいる。2021年には一時的にではあるが、テスラのModel 3がイギリスで最も売れた車種となった月もある。これまでBMWやアウディ、ジャガーといった欧州勢の高級車ブランドが支配していた分野に、突如としてテスラが割って入った形だ。 テスラはまた、独自の販売方式を採用している点でも注目される。ディーラーを通さず、オンラインで完結する注文システムは、イギリスの消費者にとって新鮮だった。これまでの「車はショールームで選んで、値引き交渉して、納車を待つ」という常識を覆すもので、特にテクノロジー志向の強い都市部の層からは高い支持を得ている。 充電インフラとスーパーチャージャー網 イギリス政府は2035年以降、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止する方針を明確にしており、それに伴いEV(電気自動車)の普及が急務とされている。その中で、テスラは自社の「スーパーチャージャー」網を全国に展開し、他社に先駆けて充電インフラを整備してきた。このインフラの充実が、消費者の不安を解消し、テスラの販売促進にも繋がっている。 第2章:イギリスにおける「アンチ・アメリカ」「アンチ・テスラ」感情は存在するか? 歴史的背景と文化的距離感 イギリスとアメリカの関係は、歴史的に複雑だ。かつては大英帝国の植民地であったアメリカが、20世紀には覇権を握り、21世紀の現在ではテクノロジーや文化の中心地となっている。この構図に対し、イギリス人の中には「アメリカ的なもの」に対して一定の距離を置く姿勢を見せる層も少なくない。 しかし、それは必ずしも敵対的な感情ではない。どちらかと言えば「アメリカのやり方は少々騒々しくて品がない」といった文化的な違和感に近い。映画やファストフード、SNSのトレンドなどに見られるアメリカ的な価値観に対して、イギリス人は時に皮肉を交えてコメントするが、完全に否定するわけでもない。むしろ「面白いけど、自分たちのやり方とは違う」と線引きをする傾向がある。 テスラに対する評価:技術力への敬意 このような文化的背景の中で、テスラはアメリカ企業でありながら、意外にも高く評価されている。それは「技術的に優れているものは素直に認める」という、イギリス人の合理性が背景にある。特に理系分野やイノベーションにおいては、出自よりも成果を重視する国民性が、テスラを冷静に受け入れているのだ。 もちろん、イーロン・マスクという存在に対しては賛否両論がある。彼のSNSでの過激な発言や、時に倫理観を問われる行動に対しては懐疑的な見方も多い。だが、それとテスラというブランドや車の性能とは別問題として切り分けて考える傾向が見られる。 第3章:英国人の「中庸」な姿勢と製品評価の仕方 「良いものは良い」と評価する英国的合理主義 イギリス人は伝統を重んじる一方で、実利主義・合理主義にも根ざしている。例えば、紅茶の消費量が多くても、実際には多くの家庭で使われているのは英国産ではなくインドや中国産だ。自国ブランドへの誇りはあるが、それがすべてではない。 テスラに対しても同様で、「アメリカの企業だから嫌い」といった単純なレッテル貼りは少ない。実際に走行性能や安全性、環境性能、そして維持コストを比較して「テスラが最も合理的な選択肢」と判断すれば、あっさりとそれを選ぶ。それが英国流のクールな実用主義だ。 クラシックとモダンの共存を受け入れる文化 イギリスはロールスロイスやアストンマーチンといった伝統的な自動車ブランドを抱える国であるにもかかわらず、テスラのような新興ブランドを受け入れている。それは、伝統と革新が対立軸ではなく「共存すべきもの」として捉えられているからだ。 ロンドンの街中では、クラシックなレンガ造りの建物の前に、テスラが駐車している光景も珍しくない。その対比は、まさに現代のイギリス社会を象徴していると言える。英国人は、変化を受け入れつつも、自分たちのアイデンティティを保つというバランス感覚に長けている。 第4章:今後の展望と課題 政府の支援と規制のバランス イギリス政府は電気自動車の普及を強力に後押ししているが、一方でインフラ整備や電力供給の安定化など、解決すべき課題も多い。テスラのような企業が引っ張っていくことは歓迎される一方で、アメリカ主導のプラットフォームに過度に依存することへの懸念も一部に存在する。 今後は、英国産のEVベンチャーや欧州連合との連携による技術開発も視野に入れながら、多様な選択肢を維持していくことが課題となるだろう。 テスラとイギリス人との「距離感」の変化 現時点では、テスラは「技術的に優れている外来種」として受け入れられているが、これが長期的にイギリス社会に溶け込むかどうかはまだ見通せない。特に、今後イギリス国内に製造拠点が作られたり、英国人技術者との連携が進めば、より「内なるブランド」として愛される可能性もある。 おわりに イギリス人は決して無条件でアメリカやその製品を称賛するわけではない。しかし一方で、政治的・文化的な出自にかかわらず「良いものは良い」と冷静に評価する一面も持っている。テスラがイギリスでここまで受け入れられている理由は、まさにそこにある。 イーロン・マスクの派手な言動に距離を取りながらも、その作る車の実力はしっかりと認める。テスラという革新の象徴は、古き良きものと新しきものが調和するこの島国に、思いのほか自然に馴染んでいるようだ。

ロンドン市内に新たな風?時速20マイル規制の背景とその影響

近年、ロンドン市内における交通安全対策の一環として、道路の最高速度が20マイル(約32キロメートル)に引き下げられる動きが注目を集めています。この動きは、一般市民の安全を守るためという側面と、環境負荷の軽減や都市部の騒音対策という目的を同時に持っており、従来の交通ルールに大きな変化をもたらしています。しかし、この新たな規制に対して、特にスーパーカーを所有する層からは「やりすぎではないか」といった声が上がっており、その影響は経済的、文化的にも多角的な議論を呼んでいます。 政策の背景:なぜ20マイル規制なのか ロンドンは、世界の中でも歴史と現代性が融合する大都市です。そのため、都市計画や交通インフラにおいても他都市とは一線を画す施策が行われています。過去数十年にわたる都市再生計画の中で、歩行者や自転車利用者の安全確保、環境保全、そして交通渋滞の緩和は最重要課題のひとつでした。特に市内中心部では、交通事故や騒音、排気ガスによる健康被害といった問題が深刻化しており、地域住民からは「もっと安全で快適な環境にしてほしい」という強い要望が寄せられてきました。 そこで行政は、時速20マイルという低速走行を義務付ける規制を段階的に導入することを決定しました。この施策は、車両の速度を抑えることで事故のリスクを低減し、また歩行者や自転車利用者との接触事故を未然に防ぐ狙いがあります。さらに、低速走行によって排出される有害物質の量が減少し、都市部の大気環境の改善にも寄与するとされています。こうした背景から、ロンドン市内全域で規制が順次実施されることとなりました。 ロンドンの交通安全への取り組み 過去の統計データからも、都市部における事故件数の多さが明らかになっており、特に歩行者や自転車利用者が被害に遭うケースが頻発していました。市内各所で行われる交通安全キャンペーンや、歩行者天国の実施、公共交通機関の充実など、ロンドンは住民の安全を守るための取り組みを強化してきました。今回の時速20マイル規制もその一環として位置付けられており、政府関係者は「市民の命を守るためには、何よりも安全が最優先」と強調しています。 また、低速走行によりドライバーの集中力が高まり、危険な運転行動の減少が期待される点も見逃せません。これにより、従来の交通事故が大幅に減少し、事故後の医療費や保険料といった経済的負担も軽減される見込みです。こうした効果は、長期的な都市運営の視点からも有益であり、多くの自治体で類似の取り組みが参考にされる可能性があります。 スーパーカーオーナーの反応とその背景 一方で、ロンドンは世界的にも富裕層が多く住む都市として知られており、スーパーカーの所有率が非常に高い地域でもあります。ランボルギーニ、ポルシェ、フェラーリといった高級車は、単なる移動手段を超えたステータスシンボルともなっており、所有者にとっては自己表現やライフスタイルの一部として重要な意味を持っています。こうした背景から、時速20マイルという極端な速度規制は、スーパーカーオーナーたちにとっては、愛車に対する自由な走行や走りの楽しみを大きく奪うものと映っています。 実際、規制の発表直後から、ソーシャルメディアやフォーラム上では「車の性能を生かせない」「この制限ではスーパーカーを楽しむ意味がなくなる」といった批判の声が上がりました。彼らは、スーパーカーが持つスポーツ性や高い加速性能、そしてエンジン音といった魅力を重視しており、これらの魅力は高速域でこそ発揮されるものであると主張しています。また、所有者の中には「これはただの安全対策ではなく、個人の自由を奪う政策だ」といった意見もあり、規制の背後に政治的・経済的な意図が潜んでいるのではという憶測も飛び交っています。 経済的・文化的な影響と都市の変革 ロンドン市内での規制は、単に交通安全の側面だけでなく、都市の経済や文化にも多大な影響を与える可能性があります。まず、スーパーカーオーナーや高級車ディーラー、カスタムショップなど、関連する産業に対しては直接的な影響が懸念されます。高級車の販売台数が落ち込むと、関連市場全体に波及効果が及び、地域経済の一部を揺るがす可能性があります。また、これらの車両はイベントやレース、展示会などを通じてロンドンのブランドイメージの一翼を担ってきたため、文化的な面でも一抹の不安が生じています。 さらに、ロンドンは国際都市として多くの観光客を惹きつけていますが、街を訪れる外国人観光客にとっては、かつてのスピード感あふれる都市のイメージが変わってしまう可能性も考えられます。観光客が求める「エネルギッシュで活気あるロンドン」というイメージは、時にスピードやダイナミズムと結び付けられてきたため、これまでの象徴的な側面が薄れる懸念もあります。 一方で、都市の環境改善や歩行者の安全確保といったメリットは、長期的な視点から見ると大きなプラスとなるでしょう。環境意識の高まりに伴い、低速走行による排出ガスの減少は、地球温暖化対策や住民の健康維持に寄与することが期待されます。また、騒音公害の軽減により、都市生活の質が向上することも見逃せません。こうした取り組みは、世界中の他都市でも模範となりうるものであり、ロンドンが先駆者として注目される要因ともなっています。 海外事例との比較と今後の展望 実は、ロンドンだけでなく、欧米の多くの大都市でも交通安全対策として速度制限の見直しが進められています。例えば、スウェーデンやオランダでは、すでに市内中心部において低速走行区域が設けられており、その結果、交通事故の減少や歩行者の安全確保に成功した事例が報告されています。こうした事例は、ロンドン市内での規制導入の根拠としても活用され、国際的な信頼性を高める材料となっています。 また、技術革新の進展により、自動運転車やスマートシティの実現に向けた取り組みが加速する中で、従来の交通システム自体が大きく変わろうとしています。低速走行の普及は、こうした新技術との相乗効果を狙った試みとも捉えられ、将来的にはより高度な交通管理システムの基盤となる可能性があります。政府関係者は「安全と環境の両立を図るためには、従来の慣習にとらわれず、革新的なアプローチが必要だ」と強調しており、今後もさらなる見直しや改善策が検討される見込みです。 専門家の意見と市民の反応 交通安全や都市計画の専門家の間では、今回の速度規制について賛否が分かれています。安全面からは「事故のリスクを大幅に低減できる」という評価がある一方、経済や文化の面では「都市の活力を損ねる可能性がある」との懸念も示されています。特に、スーパーカーの所有者をはじめとする富裕層からは、「個人の趣味やライフスタイルに対する過剰な規制である」という批判が根強く、これが政治的な対立の火種となることも予想されます。 また、一般市民の中でも意見は二分されています。多くの住民は「安全性が向上するならば、多少の不便さは仕方がない」と考える一方で、「市内を走る車両の選択肢や走りの楽しみが奪われるのは残念」という声も少なくありません。こうした議論は、単に交通安全の問題に留まらず、都市の未来像や住民の暮らしの質といった大局的なテーマと結びついていると言えるでしょう。 結論:都市の安全と自由のバランスを求めて ロンドン市内における時速20マイル規制の導入は、単なる速度制限の変更にとどまらず、都市の未来を左右する重大な政策転換であることは間違いありません。交通事故の減少、環境改善、騒音低減といった多くのメリットが期待される一方で、スーパーカーをはじめとする高級車所有者にとっては、その魅力が大きく損なわれるという懸念も存在します。これにより、市民や専門家の間で、安全性と自由度、経済的利益と文化的価値とのバランスについて、今後も議論が続くことが予想されます。 ロンドンが世界に誇る大都市として、常に革新的な取り組みを推進してきた背景からも、この新たな規制は単なる一時的な流行ではなく、都市政策の根本的な変革を示すものと言えるでしょう。今後の展開次第では、他都市に先駆けた先進的な交通管理システムの構築や、新たなライフスタイルの提案につながる可能性も秘めています。政策の是非を問う議論が激化する中で、重要なのは市民一人ひとりが自らの安全と未来に対する責任を持ち、議論に参加することではないでしょうか。 最終的に、都市が抱える多様な課題に対して、どのような解決策が最も望ましいのかは一概に決められない問題です。しかし、ロンドン市内のこの動きが、未来の都市交通やライフスタイルに対する新たな視点を提供する契機となることは確かです。市民、専門家、政治家が互いに意見を交わしながら、より安全で豊かな都市生活の実現を目指す中で、今回の規制が果たす役割は大きな注目を集め続けるでしょう。 以上のように、ロンドン市内の時速20マイル規制は、交通安全対策としての意義だけでなく、都市全体の未来や文化、経済にも多大な影響を及ぼす可能性を秘めています。賛否両論が渦巻く中で、今後の動向に注視するとともに、都市の安全と個々の自由のバランスをどのように実現していくのか、国際的な注目を浴びるテーマとして議論が続くことが予想されます。

英国ではブラックキャブは緊急時もしくは短距離移動以外は使うな!

ロンドン最大の空港ヒースローの到着ゲートを抜けた後、「TAXIはこちらです。」的な案内を目にします。空港前には英国のタクシーいわゆるブラックキャブが数十台の列を並べて、カモを待っています。ブラックキャブ(後ろの扉が観音開きタイプ)は世界的に認知されていますが、今ブラックキャブの使用率がかなり低迷しています。 ブラックキャブは観光客向けのタクシー 日本から長時間のフライト後の時差ボケ、寝不足で疲労はピークに達しています。思わずブラックキャブに飛び込んで、ホテルや自宅に直行したくなる気分はよくわかりますが、本当にブラックキャブでいいのでしょうか。先週、日本から英国に戻ってきた際に荷物の受け取りで2時間ぐらい待たされたこともあり、思わずブラックキャブに乗り込んでしまいました。運転手さんは、私がアジア人だとわかると、とても親切に重たいスーツケースを運ぶのを手伝ってくれ、優しい声でどちらまで行かれますか?と聞いてきました。日本では空港待ちしているタクシーの運転手さんが荷物を運ぶのは当たり前ですが、英国ではあまりそんなことしてくれる運転手さんはいません、正しくは、いませんでした。彼らにとっては死活問題なので、背に腹は代えられないということでしょう。先に座席に腰を下ろして、運転手さんが荷物をトランクに入れるのかと思いきや、運転手さんが荷物を置いたのは私の座っている座席の足元でした。確かにブラックキャブは後部座席部分がとても広く造られており、スーツケースの1つや2つは簡単に置けるようになっていますけども…少し雲行きが怪しくなってきたなーと思いながらも、疲労には勝てず行き先を告げると、「あーよく知っている」みないた地理感ばっちり的なことを言った後に「郵便番号教えて」と言われました。「え?」ってなりましたけど、郵便番号を告げるともくもくと携帯のナビに打ち込み始めました。「結局ナビ使うんかい!ぜんぜん地理感ないやん」とツッコミを入れたかったが、とにかく自宅に早く帰りかったので、スルーして、そのまま出発進行しました。「M25のルートでいいよね。」と言われたので、「それで」と返答しました。時間帯は夕方の5時で帰宅ラッシュの時間でしたが、M25は経験上最短最速ルートだと知っていたので、そのまま安心してキャブのなかでうとうとと眠りに落ちてしまいました。30分ぐらいしたところで目が覚めて、周りを見渡したところキャブは想定外の高速道路から降りて下道を走っていました。「えーーーーー!!!なんで高速降りた?」理解不能です。念のためグーグルマップで高速の混み具合を確認したところ、渋滞の赤い線一切なし、というか通常より空いていました。私も過去何度が車でヒースローから自宅に帰ったことがありましたが、ラッシュ時でも40-45分ぐらいです。参考までにスマホでUberの所要時間を確認したところ47分と表示されていました。結局、なんだかんだで1時間30分ほどキャブにゆられ、料金メーターを見たところ、なんと「140ポンド!!!」。Uberなら80ポンド、空港タクシーを事前予約すれば70ポンド、安い時で60ポンドです。もう2度とブラックキャブは使わないと心に決めた瞬間でした。ブラックキャブはロンドン都心で半径2キロぐらいの異動には便利ですが、長距離はとにかく料金が高いので使わないのが賢明です。都心で終電逃した場合で家までの足がないといった緊急時はブラックキャブを使うのは致し方ないと思いますが、それ以外はUberかBoltが安くて安心です。