ロンドンで退去通知を受けたときの対応完全ガイド

ロンドンの賃貸物件でSection 21退去通知を受けて困惑する入居者のイラスト。背景にロンドンの街並みとBig Benが描かれ、手元には『NOTICE TO QUIT』と書かれた書類と家のイラストが配置され、退去対策ガイドを象徴する構図。

法律の基礎から平和的解決策まで

ロンドンで賃貸生活をしていると、突然大家さんから「退去してほしい」と言われることがあります。住宅需要が非常に高く、家賃も年々上昇しているロンドンでは、新しい住居探しは簡単ではありません。そのため、「今すぐ出ていかないといけないのでは?」と不安になる方も多いでしょう。

しかし安心してください。イギリスの賃貸制度には入居者を守るための法律が整備されており、大家さんが「退去してほしい」と言っても、すぐに強制的に追い出されるわけではありません。本記事では、退去通知を受けた際に知っておくべき基本的な法律、Break Clause の扱い、裁判費用の問題、そして平和的な解決方法までを詳しく解説します。


1. 契約形態を確認する:ASTとは何か

ロンドンで最も一般的な賃貸契約は Assured Shorthold Tenancy(AST) です。
AST には以下の特徴があります。

  • 一定の契約期間(たとえば12か月)が定められている
  • その期間中は基本的に借主が保護され、大家さんが一方的に退去を迫ることはできない
  • 契約終了後も自動的に「Periodic Tenancy(更新型)」に移行するケースが多い

まずは自分の契約書を確認し、ASTであるかどうか、期間がいつまでかをチェックしましょう。


2. 退去通知の種類を理解する

大家さんが入居者に退去を求める場合、イギリスでは大きく分けて2種類の通知を使います。

2.1 Section 21 Notice(無条件退去通知)

  • 大家さんが契約終了後に「理由を示さず」退去を求められる手続きです。
  • 少なくとも2か月前に書面で通知する必要があります。
  • ただし、大家さんが保証金(Deposit)を適切に保護していない場合や、特定の手続きを怠った場合、この通知は無効になります。

2.2 Section 8 Notice(契約違反に基づく退去通知)

  • 家賃滞納や騒音トラブルなど、入居者が契約違反をしている場合に使われます。
  • 通知期間は状況によって異なり、2週間程度のケースもあります。

どちらの通知に該当するのかで対応が大きく変わります。


3. Break Clause がある場合

契約期間の途中でも、Break Clause(途中解約条項)があると、大家さんや借主が一定の条件を満たせば契約を終了させることができます。

典型的な条件は以下のとおりです。

  • 通知は書面で行い、通常2か月前までに提出する
  • 契約開始から6か月が経過した後にのみ有効
  • 契約書に指定された方法(郵送や手渡し)に従って通知しなければならない

もし大家さんがBreak Clauseを使って退去を求めてきた場合、その手続きが契約書通りに正しく行われているかを確認することが重要です。不備があれば、通知は無効となり契約は継続します。


4. 強制退去はすぐには行われない

たとえ通知が有効だったとしても、期限が過ぎたからといって自動的に退去を強制されることはありません。法律上、大家さんができるのは以下のステップを踏んでからです。

  1. 裁判所に Possession Order(明渡命令) を申請する
  2. 裁判所が命令を出す
  3. 借主が従わない場合、Bailiff(執行官) が実際に退去を執行する

つまり、口頭で「出ていけ」と言われても、法的効力はありません。入居者には十分な時間と権利が保障されています。


5. 裁判費用の負担について

退去手続きが裁判に進んだ場合、気になるのは「費用は誰が払うのか」という点です。

  • 裁判所の申立手数料は大家さんが先に支払います
  • ただし裁判所が「費用を借主に請求する」と判断する場合もあります
  • Section 21 のケースでは、基本的に数百ポンド程度の裁判費用が借主に課されることが多いですが、大家さんの弁護士費用まで全額負担させられるケースはまれです
  • 借主が弁護士を雇う場合は原則自己負担ですが、収入が少ない方は Legal Aid(法的扶助) を利用できる可能性があります

6. 平和的な解決方法

法的手続きに進む前に、できるだけ円満に解決する方法を探すことが大切です。

6.1 交渉(Negotiation)

  • 大家さんに誠実に事情を伝え、退去期限の延長や条件の緩和をお願いする
  • 「新しい家が見つかるまであと4週間ください」といった具体的な提案が有効です

6.2 メディエーション(Mediation)

  • 中立的な第三者(メディエーター)が入り、合意をサポートします
  • 費用は低額で済み、迅速に解決できることが多いです
  • 代表的な機関:
    • UK Mediation
    • Tenancy Redress Service(無料の場合あり)

6.3 Cash for Keys(退去補償)

  • 大家さんが「自主的に退去してくれたら補償金を払う」という形で合意するケースもあります
  • 合意内容は必ず書面に残しましょう

6.4 公的機関への相談

  • Shelter(住宅支援NPO)や Citizens Advice に相談することで、無料で法律的アドバイスを受けられます
  • ローカルカウンシル(区役所) にはホームレス防止義務があり、退去リスクがある人への支援を提供する法的義務があります

7. 実際の行動ステップ

  1. 契約書と通知文を確認
    • Break Clause や通知期間が正しく守られているかをチェック
  2. 大家さんと交渉
    • 延長や条件の調整を丁寧に依頼する
  3. 必要ならメディエーションを利用
    • 早期解決の可能性が高まる
  4. ローカルカウンシルに相談
    • ホームレス防止義務に基づくサポートを申請
  5. 最悪の場合に備え、次の住居探しを進める
    • 同時並行で物件を探し続ける

8. まとめ

ロンドンで退去通知を受けても、すぐに強制的に追い出されることはありません。

  • 通知の種類やBreak Clauseの有効性を確認
  • 裁判になっても費用の全額を負担する可能性は低い
  • 交渉・調停・公的支援を活用して平和的解決を目指す

「退去してほしい」と言われるとパニックになりがちですが、法律は入居者を守っています。焦らず、順序立てて行動することが大切です。


📌 最後に:通知文や契約書のBreak Clauseの内容は非常に重要です。もし不安なら、専門家や支援団体に見てもらうことをおすすめします。

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