
イギリスで一番大きな国立公園「ケアンゴームズ国立公園(Cairngorms National Park)」が、今後4月1日から9月30日までの期間、キャンプファイヤーやバーベキューを禁止すると発表しました。理由は至ってシンプル、「地球温暖化の影響で降水量が減り、山火事の危険性が高まっているから」。
……いやいや! ちょっと待て、とツッコミを入れたくなる人、多いんじゃないでしょうか? そもそも「国立公園」でキャンプファイヤーやバーベキューが許されていたこと自体、驚きですよね。他の国では考えられないレベルの自由度。国の保護を受けている自然の中で、火をガンガン焚いてソーセージを焼く、なんて日本人からすると「え、それ大丈夫?」って感覚になるはずです。
■ケアンゴームズ国立公園とは?
まず簡単におさらいしましょう。ケアンゴームズ国立公園は、スコットランドに位置するイギリス最大の国立公園で、広さはなんと4,528平方キロメートル。東京ドーム約96万個分という、途方もないスケールです。高山、森、湖、湿地、野生動物と自然の宝庫で、ハイキングやキャンプ、ウィンタースポーツで人気があります。
しかし近年、この雄大な自然を脅かしているのが「山火事」。実際、2024年にも大規模な山火事が発生し、広大な森林が焼失。野生動物の生息地が失われただけでなく、燃えた木々が膨大な二酸化炭素を放出し、地球温暖化の“手助け”をしてしまったのです。
■禁止期間「4月1日~9月30日」の違和感
今回の規制、問題はその“期間”です。なぜ「4月から9月」限定なのか? 理由は簡単、夏場は乾燥しやすく火事のリスクが跳ね上がるからです。……でもね、ちょっと考えてください。10月1日から3月31日までの間ならキャンプファイヤーもバーベキューも解禁って、意味あります?
「冬だから湿気が多いから火事にはならんだろ!」って理屈なんでしょうが、火は火です。山火事が100%起きない保証なんてない。もし乾燥した寒波でも来ていたら? もし強風が吹いていたら? そのときに焚き火をしていたら……。
結局「禁止」してるようで、してない。根本的な解決にはなってないわけです。
■イギリス国立公園の「緩さ」
ここで日本をはじめとした他国の国立公園と比べてみましょう。多くの国では、国立公園内での火の使用は原則禁止。直火なんてもってのほか。指定された焚き火台やキャンプ場内の設備を利用するのが一般的です。ところがイギリスでは「まあ、常識の範囲内でやっていいよ」というスタンス。なんともおおらかというか、緩いというか……。
もちろん文化の違いはあります。イギリスではアウトドア=焚き火とバーベキュー、というくらい人気のアクティビティ。でもその自由さが仇になって、山火事という巨大リスクを招いているのだから本末転倒ですよね。
■「温暖化対策」として逆効果になっている現実
皮肉なのは、地球温暖化の影響を理由に「火を使うな」と言っているのに、実際には山火事が発生して森林が大量に燃えてしまうと、温暖化を加速させる要因になってしまうことです。
木は二酸化炭素を吸収してくれる大切な存在。にもかかわらず、一度山火事になればその吸収役が一気に燃え尽きて、大量のCO2を吐き出してしまう。つまり「火を許していたこと自体が温暖化の原因を増幅していた」という、笑えない構図が見えてきます。
■そもそも「焚き火文化」を見直すべきでは?
アウトドア=焚き火やバーベキュー。この固定観念をそろそろ見直す時期に来ているのかもしれません。自然を守るために自然を燃やすって矛盾してませんか?
「キャンプ=火を使わない新しい楽しみ方」が世界標準になってもいい。ポータブルコンロや電気式の調理器具も普及しているし、そっちを主流にすれば山火事リスクは激減します。焚き火の炎を眺めたいなら、バーチャル焚き火アプリでも十分癒やされる時代です(笑)。
■「10月からOK」って、それでいいのか?
繰り返しますが、最大の違和感は「期間限定の禁止」措置。4月から9月まで禁止、10月から解禁。これじゃあ「火を使ってもいいよキャンペーン」をやってるようなものです。せっかくの規制も「ザル法」になってしまいかねません。
もし本当に地球温暖化や森林保護を考えるのであれば、全面禁止に踏み切るのが筋。それをしないのは「観光客の人気を失いたくない」という大人の事情でしょう。でもね、その結果山火事が起きれば、観光資源そのものが消えてしまうんです。これ以上の本末転倒はないですよね。
■まとめ:目の付け所がズレている規制
ケアンゴームズ国立公園の「火気使用禁止」は一見すると温暖化対策に見えますが、実際には「一部期間だけ」「観光客に配慮しつつ」という中途半端なもの。自然を本気で守る覚悟があるなら、火の使用を全面的に見直すべきです。
自然を守るためにやっているようで、結果的に自然を危険にさらしている。この矛盾をどう解消するのか、今後のイギリス国立公園の姿勢に注目が集まります。
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