英国人女性がジョージアで大麻密輸容疑 家族が2,600万円を支払い釈放――「ジョージアという謎の国」から見えること

ジョージアで大麻密輸容疑に問われた英国人女性と警官を描いたイラスト。背景にジョージア地図と現金、ハシシが描かれている。

1. 事件の概要

2025年春、19歳の英国人女性 ベラ・メイ・カリー(Bella May Culley) が、南コーカサスの国 ジョージア共和国(Georgia) の首都・トビリシ国際空港で、
約12kgの大麻と2kgのハシシ(大麻樹脂) を所持していたとして逮捕されました。

カリーは当時妊娠中で、タイ滞在中に行方不明となっていたと報じられています。
本人は「タイで脅され、強制的に運搬させられた」と主張しました。

ジョージアの麻薬密輸罪は非常に重く、通常なら 最長20年の禁錮刑 もあり得る厳罰が科される犯罪です。

しかし、家族が 約50万ラリ(Georgian lari)=約14万ポンド(約2,600万円) を支払い、
「司法取引(プレアグリーメント)」と呼ばれる合意により、刑期を大幅に軽減。
すでに拘留されていた 約6か月 をもって刑期を満了したとみなされ、釈放されました。

彼女はその後、英国へ帰国しました。


2. なぜこの事件が注目されたのか

  • 若く妊娠中の女性が外国で重大犯罪の容疑を受けた という異例のケースだったこと。
  • 「タイで失踪 → ジョージアで逮捕」という不可解な経路。
  • “お金で釈放” という形が、ジョージアの司法制度の柔軟さと矛盾を同時に示した点。
  • 外国人旅行者・留学生のリスク意識の低さに対する警鐘として、英国社会で大きく報じられたこと。

この事件は単なる麻薬密輸容疑のニュースではなく、
「発展途上の司法制度を持つ国で、外国人がどのように扱われるのか」を考えさせる象徴的な事例となりました。


3. ジョージアの司法制度と「プレアグリーメント」

ジョージアでは、裁判前に被告人が罪を認め、一定の金銭を支払うことで刑を軽減する 「プレアグリーメント制度」(司法取引)が存在します。
これは西欧諸国にも似た制度ですが、実際には「罰金型の合意」として機能している場合も多く、
富裕層や外国人に有利に働くとの批判もあります。

今回のように、重罪に該当する麻薬事件でも「妊娠中」「若年」「協力的」といった要素が考慮され、
裁判所の裁量で短期間の拘留+罰金で済むケースがあるのです。


4. お金の動き:どのくらいの金額だったのか

  • 支払い額: 約50万ジョージア・ラリ(GEL)
  • ポンド換算: 約14万ポンド
  • ドル換算: 約18万6,000ドル
  • 日本円換算(1ポンド=約185円):2,590万円

つまり、家族はおよそ 2,600万円 を支払って釈放を勝ち取ったことになります。
これが罰金なのか、司法合意のための供託金なのかは報道により差がありますが、
事実上「高額の和解金」で自由を得た形となりました。


5. 「ジョージア」という国とは?

位置と概要

ジョージア(旧称グルジア)は、黒海とカフカス山脈に挟まれた国
北にロシア、東にアゼルバイジャン、南にアルメニア・トルコと接しています。

  • 首都: トビリシ(Tbilisi)
  • 人口: 約370万人
  • 公用語: ジョージア語
  • 宗教: 東方正教会(キリスト教)
  • 通貨: ジョージア・ラリ(GEL)

歴史

古代から東西交易の要衝であり、19世紀にはロシア帝国の支配下に入りました。
1991年、ソ連崩壊とともに独立を回復。以後、民主化と経済開放を進めています。

経済と社会

観光・ワイン産業・ITなどが主要産業で、欧米志向が強い一方、
旧ソ連的な官僚制度や汚職の名残が残る国とも言われます。

観光地としての人気は高く、山岳リゾートや古都・トビリシの旧市街、
ワインの名産地カヘティ地方などが注目されています。


6. ジョージア司法の特徴と外国人のリスク

ジョージアは欧州評議会加盟国で、司法改革を進めていますが、
「捜査・拘留の厳格さ」「合意金額の不透明さ」など課題も残ります。

外国人が拘束された場合、

  • 通訳や弁護士の手配が遅れる
  • 英語が通じにくい
  • 拘留環境が劣悪
    などの報告もあり、旅行者には注意が必要です。

7. 事件から見える教訓

  • 海外での法制度は日本や欧州とは大きく異なる。
    「知らなかった」「頼まれただけ」では通用しません。
  • 他人の荷物を預かる、運ぶ行為は極めて危険。
  • 拘束されると、自由を得るまで莫大な費用が必要になる場合がある。
  • 外国での“司法取引”は交渉力と資金力で結果が左右されることもある。

8. まとめ

この事件は、
「異国の地での法の重さ」と「お金で決まる司法の現実」を同時に示した出来事でした。

南コーカサスの美しい山々とワインの国、ジョージア。
しかしその裏には、政治・司法・経済の複雑な構造があり、
軽率な行動が一瞬で人生を変える危険をはらんでいます。

旅行や留学、ビジネスでこの地域を訪れる際には、
「文化とともに、法律を学ぶこと」が何よりの安全策と言えるでしょう。

英国生活サイト編集部の一言

犯罪に巻き込まれたかどうかはともかく、家族を釈放するために2600万円もの大金をすんなり支払えるということは、彼女の家庭はおそらく裕福な家庭だったのでしょう。
富裕層にとって2600万円などはした金にすぎません。そんな環境で育ったからこそ、彼女は世間知らずで浅はかな行動を取ってしまったのかもしれません。
お金持ちでなくてもいい。ただ、自分の子どもには決して犯罪に関わるような人間にはなってほしくないと、心から思います。

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