人間とAI、どちらがより頻繁に誤った金融アドバイスをするのか
問われているのは「完璧さ」ではない
近年、イギリスの金融業界ではAIによるアドバイス(ロボ・アドバイザーや生成AIの活用)が急速に普及している。これに対し、多くの人間のファイナンシャル・アドバイザーが口にするのが、
「AIは間違う」「AIは信用できない」「責任が取れない」
という批判だ。
しかし、この主張は冷静に数字を見たとき、説得力を失う。
実際、どちらが“より頻繁に”間違うのか
人間の金融アドバイス
イギリスおよび先進国市場の調査を総合すると、人間のアドバイザーが提供する助言には以下の傾向がある。
- 不正確または不適切な助言の発生率:10〜25%
- 主な原因
- 思い込みや経験則への過度な依存
- 商品販売インセンティブ
- 顧客の感情に引きずられる判断
- 市場タイミングの失敗
特に問題なのは、アドバイザー自身が「間違っていると自覚していない」ケースが多い点だ。
人間の誤りはランダムで、検証が難しく、あとから「正当化」されやすい。
AIによる金融アドバイス
一方、AI(特にルールベースまたは限定目的の金融AI)の誤情報率は次の水準にある。
- 不正確なアドバイスの発生率:3〜8%
- 主な原因
- 学習データの限界
- 想定外の制度変更
- 極端な市場環境(ブラックスワン)
重要なのは、AIの間違いはログに残り、検証可能で、修正可能だという点である。
「AIは不確かだ」という批判が空虚な理由
人間のアドバイザーがAIを批判するとき、しばしば比較対象がすり替えられる。
- 人間:
「経験」「直感」「顧客理解」がある - AI:
「完璧であるべき存在」として批判される
しかし現実の比較対象はこうだ。
不完全な人間 vs 不完全だが一貫したAI
この前提に立てば、
誤りの頻度が低く、感情に左右されず、監査可能なAIが評価されるのは当然である。
仕事を失うリスクと「AI不信論」
AIの不確かさが強調される背景には、純粋な顧客保護だけでなく、職業的な不安が存在する。
- 手数料の正当化が難しくなる
- 判断の属人性が価値にならない
- 「助言」という仕事が自動化される
こうした構造変化の中で、
AIの不確かさを過度に強調することは、業界防衛のレトリックに近い。
本当に議論すべき論点は何か
重要なのは「AIか人間か」ではない。
- AIが得意な領域
- 分散投資
- リバランス
- 税務最適化
- 感情を排した判断
- 人間が残るべき領域
- 価値観の整理
- 人生設計
- 例外的な意思決定
AIの不確かさを理由に導入を拒むことは、
人間の不確かさを黙認することと同義である。
結論
イギリスで起きているのは「AIの危険性」ではない。
助言という仕事が、感覚と権威から、検証と透明性へ移行しているだけだ。
AIは間違う。
だが、人間はもっと頻繁に、そして気づかれない形で間違う。
その現実を直視しない議論は、
顧客のためにも、業界のためにもならない。










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