AIの脅威とIT業界の現在地:10年前との時給比較から見える未来

1. 10年前と現在の「フリーランスIT時給」比較

10年前(2015年前後)

  • ロンドンなど先進都市では、優秀なアプリ開発者・プログラマーが£200〜£250/hで契約するケースが存在。
  • スマホアプリの急成長期で、需要は爆発的。供給が追いつかず、「作れる人」が重宝された時代。

現在(2025年)

  • 平均時給:£35〜£55/h(Web開発・一般的プログラミング)
  • エキスパート/コンサルタント:£75〜150/h
  • ハイエンド(戦略・AI関連):£89/h前後が上位10%の目安
  • 初心者〜中堅:£20〜60/h

つまり、£250/h級の案件は極めてレアになっており、ほとんどが特化分野(AI、ブロックチェーン、超大規模システムのコンサルティングなど)に限られています。


2. なぜここまで変化したのか?

(1) AIによる代替

ChatGPTに代表される生成AIは、コード生成・デバッグ・設計補助までカバーしつつあります。従来は「人間しかできなかった」部分がAIで自動化され、初級〜中級レベルのプログラマー需要は明らかに減少。

(2) 競争の激化

プラットフォーム(Upwork、Freelancer、Fiverrなど)が普及し、世界中の開発者が案件を奪い合う状況に。結果として、相場は「グローバル標準」に収束し、先進国の開発者のプレミアムが薄れました。

(3) クライアントの成熟

10年前は「アプリを作りたいから高額でも払う」企業が多かったですが、現在は発注側もリテラシーが高まり「適正価格で品質を担保する」ことを重視。結果、無駄に高額な案件は減少しました。


3. 現在の市場データ

最新の各種調査から、現在のイギリスにおけるフリーランスIT時給をまとめると次の通りです。

  • YunoJuno 2024: 平均£49/h、上位職種£65/h、トップ10%で£89/h
  • Caroola: Web開発は£35〜45/h、複雑案件で£55/h
  • Freelance Rate Calculator UK: 初心者£20–30/h、中堅£30–60/h、エキスパート£75–150+/h
  • Glassdoor: 平均年収£46,597(時給換算£22/h)、上限で£31/h程度
  • 国際相場(Fullstack 2025): $50–300/h(£40–£240/h)と幅広い

これらを見ると、「£40〜60/hが相場、£100/hを超えると高単価」というのが現実的なラインです。


4. 「AI時代のITキャリア」の生存戦略

では、エンジニアはどう生き残ればよいのでしょうか? ここからは実践的なキャリア戦略を提示します。

(1) AIを味方にする

AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使って生産性を爆発的に高める。「AIを使えるエンジニア」は、今後も価値を維持できます。特にAI活用+人間の創造力の組み合わせは、代替が難しい領域です。

(2) 上流工程へのシフト

要件定義、アーキテクチャ設計、クライアント折衝といった「人間的判断力」が必要な工程は、今後もAIでは代替困難。ここにキャリアをシフトすることが賢明です。

(3) 特化分野で「希少性」を持つ

ブロックチェーン、量子計算、セキュリティ、AI倫理といった先端領域は、まだ人材不足。「他に代わりがいないスキル」を持てば、再び高額案件を狙うことが可能です。

(4) グローバル市場を意識する

英語を武器にすれば、依然として米国・欧州の高単価案件にアクセス可能。物価や生活費の差を逆手に取り、「場所に縛られない働き方」を実現すれば、報酬の最大化が狙えます。


5. これから10年でどうなる?

  • 初級・中級プログラミング:AIが代替 → 単価低下続く
  • 上流工程・コンサルティング:人間中心 → 単価維持
  • AI関連分野:需要爆発 → 高単価維持
  • グローバルフリーランス市場:競争激化で「平均相場」は下がるが、「尖った専門家」はむしろ稼げる

つまり、今後のキャリアは「平均的プログラマー」でいる限りは厳しいですが、「AIを活用する専門家」「唯一無二の強みを持つ人材」になれば、£250/hクラスの復活も十分にあり得ます。


結論

10年前、£250/hで稼いでいたエンジニアが、今は£40–60/hが相場というのはショッキングな変化に見えるかもしれません。しかし、これは「仕事がなくなった」というよりも「基礎的な作業がコモディティ化した」結果に過ぎません。むしろ、AI時代は「人間にしかできない領域」がより価値を持つ時代です。

今からでも遅くありません。AIを恐れるのではなく、味方につける。自分の専門性を磨き、上流・新領域に進出する。そのとき、再び「高単価フリーランス」の座は手に入るでしょう。

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