
はじめに
「イギリスの銀行では日本より高金利の定期預金がある」と耳にしたことはありませんか?
実際、イギリスでは複数の銀行や金融機関が 年利3〜4.5%台 の定期預金(Fixed Rate Bond / Fixed Saver)を提供しています。
日本居住者がこれらの商品を利用する場合、税制面のルールを理解しないと損をする可能性があるため注意が必要です。
本記事では、
- 日本の税制ルール
- イギリスの代表的な金融商品
- 節税に使える具体的な方法
- 資産運用戦略の組み立て方
をわかりやすく整理します。
1. 日本居住者は「全世界所得課税」の対象
- 日本に住んでいる限り、世界中で得た利益はすべて日本で課税対象。
- イギリスでの利子や配当、株式の売却益も例外ではありません。
課税の仕組み:
- 利子所得 → 20.315% の分離課税
- 配当所得 → 申告分離課税(20.315%)または総合課税
- 株式等の売却益 → 申告分離課税(20.315%)
2. イギリス金融商品の代表例
(1)定期預金(Fixed Rate Bonds / Fixed Saver)
- 銀行に資金を一定期間預けることで、3〜4.5%台の金利が得られる商品。
- 預入期間中は原則解約不可、途中解約にはペナルティあり。
- イギリスは非居住者の利子に源泉税を課さないため、利子はイギリス側では非課税。
(2)株式・投資信託
- イギリス株やイギリス籍の投資信託を購入可能。
- 配当は現地で課税される場合があるが、日本で外国税額控除を利用できる。
(3)ISA・SIPP
- イギリス居住者専用の非課税制度。日本居住者は利用不可。
3. 節税の実務ポイント
(1)必要経費として認められるもの
- 売買手数料
- 為替両替手数料・スプレッド
- 口座管理料(取引に直接関係する場合)
(2)損益通算・繰越控除
- 株式や投資信託の損益は相殺可能。
- 損失は最大3年間繰り越して将来の利益と相殺できる。
(3)外国税額控除
- イギリス株の配当で源泉徴収された場合、日本の確定申告で控除が可能。
- これにより二重課税を避けられる。
4. 資産運用における組み合わせ例
A. イギリス定期預金を活用
- 一部資金をイギリスの定期預金に分散し、安定した利子収入を狙う。
- 為替リスクを考慮し、複数年に分散して預けるのが現実的。
B. イギリス株式・投資信託でインカムゲイン
- 高配当株を組み合わせることで、利子+配当の二重のインカム収入を確保。
- 外国税額控除を活用して課税を軽減。
C. 日本制度との併用
- NISA・iDeCoで国内投資を非課税にし、海外資産は課税口座で運用。
- 「国内は非課税、海外は外国税額控除」でバランスを取る。
5. モデルケース(簡易シミュレーション)
- イギリス定期預金(年利4%)に100万円相当を預けた場合:
- 年間利子:約40,000円
- 日本での課税:約8,126円
- 手取り:約31,874円 → 実質利回り3.18%
※為替変動によって円換算リターンが変動する点に注意。
まとめ
- 日本居住者は世界中の所得が課税対象。イギリス金融商品も例外ではない。
- 節税の基本は 必要経費計上・損益通算・外国税額控除。
- イギリス定期預金(3〜4.5%台)や株式を資産分散に組み込み、日本のNISA・iDeCoと併用するのが合理的。
- 為替リスクと口座開設条件を踏まえ、国内外でバランスの取れたポートフォリオを構築することが、長期的な資産形成につながります。
- 何より、日本の銀行口座に資金を眠らせておくだけでは利息はほとんど増えませんし、近年では特殊詐欺などによる資金流出リスクすら無視できません。「動かさないことのリスク」も意識しながら、賢く国際的に資産を配置することが重要です。
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