「なぜ笑ってしまうのか」Mr.ビーンをもう一度見つめる。

プールの高い飛び込み台でためらいながら立つミスタービーン。

ミスタービーンは、ほとんどしゃべらない。
それなのに気づけば笑っている。
思考ではなく、反射で笑ってしまうあの感じ。

表情、動き、時間の取り方。
人間が無意識に抱えている不器用さを、そのまま形にしているようなキャラクターだ。

演じているのは、イギリス出身の俳優 ローワン・アトキンソン
工学の大学院まで進んだ理詰めの頭脳派なのに、笑わせる手段として選んだのは「言葉」ではなく、身体だった。

ビーンは、

  • 少しズレていて
  • ときどき図々しく
  • でもすごく無邪気で
  • 憎めない

見ていると、自分にもこういうところがある気がしてくる。


どの作品でも「ビーンはビーンのまま」動いている

始まりは テレビシリーズ(1990–1995)
日常の小さなズレが、じわじわ膨らんで笑いになる。

そこから 映画 になり、

  • 『Bean(ビーン)』(1997)
  • 『Mr. Bean’s Holiday(ミスター・ビーン カンヌへ行く)』(2007)

特に「カンヌへ行く」は、旅の風景がやたら美しい。
笑うというより、ただ観ているのが気持ちいい ビーンがいる。

さらに アニメシリーズ(2002–)
言葉に頼らず、表情と動きだけで成立するキャラクターであることが、そこで証明された。

ローワン・アトキンソンはビーンだけの人ではなくて、
皮肉が効いた歴史劇 『Blackadder』
不器用なスパイが走り回る 『ジョニー・イングリッシュ』 も演じている。
ただ、どれにも共通しているのはひとつ。

「人間の不器用さは、どこか愛おしい」 という視点。


いくつか思い出してみる

試験中の静かなパニック

焦り、見栄、ズルしたい気持ち。
全部わかってしまう。
言葉はいらない。


七面鳥が頭にハマるという、理屈のない笑い

「そうはならないだろ」
と思いながら、笑うしかない。


プールでの見栄と小さな勇気

格好つけたい気持ちを、隠さずに見せる人。
だからこそ、笑ったあとにちょっと優しくなる。


なぜ笑ってしまうのか

ビーンは「変な人」ではない。
人間のふだん隠している部分を、そのまま出しているだけだ。

  • 見栄を張る
  • うまくいかない
  • 必死になる
  • 時々めちゃくちゃなことをする
  • でも生きていく

誰でもそうだ。
だから、笑う。
そして少しだけ救われる。


終わり方はただ静かに

難しいことを考えなくていい。
気分に余白があるときに、一本だけ再生すればいい。
言葉より早く、笑いは反射する。

観ているだけで気持ちが柔らかくなるコメディは、そんなに多くない。

ミスタービーンは、そのうちのひとつだと思う。

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