はっきり言う。
日本人はイギリスで命の危険に直結するような凶悪犯罪に遭う確率は高くない。だが携帯電話は、ほぼ盗られる。体感99%という言い方は誇張に見えて、本質を突いている。
これは偶然でも不運でもない。
日本人の国民性と、ロンドン型の都市軽犯罪の構造が、あまりにも相性が悪いからだ。
平和ボケは「性格」ではなく「前提のズレ」
日本ではスマホを手に持って歩くことは危険行為ではない。
カフェのテーブルに置いても大きな問題にはならない。
道端で立ち止まって地図を見ることも日常だ。
それが“普通”として成立している社会で長年生きてきた人間が、その感覚のままロンドンに立てばどうなるか。
答えは単純だ。
その「普通」がそのまま標的条件になる。
平和ボケとは、危機感がゼロという意味ではない。
日本の安全水準を世界の基準だと思い込む認知のズレである。
都市型ひったくりは暴力衝突を目的としない。
一瞬で奪い、消える。
相手が反応する前に終わる。
つまり「争いに発展しない」。
だから重犯罪にはなりにくい。
しかし被害は確実に出る。
人を簡単に信用しすぎる文化
日本社会は、基本的に他人を疑わない前提で設計されている。
肩が触れても謝る。
ぶつかられても怒鳴らない。
違和感があっても様子を見る。
この穏やかさは社会を円滑に回すが、窃盗犯から見れば別の意味を持つ。
- 強く掴み返さない
- 追いかけない
- 叫ばない
抵抗値が低い。
軽犯罪は道徳ではなく効率で動く。
「やりやすい相手」から選ぶだけだ。
疑う文化が薄い社会で育つと、
「誰かが急接近してくる=危険」という回路が弱い。
これは善悪ではない。
訓練されていないだけだ。
「大丈夫だろう」という空気判断
ロンドン中心部。昼間。観光客で溢れる大通り。
一見すると安全そうに見える。
しかし携帯窃盗は、まさにその環境を好む。
人が多い=目撃者が多い、ではない。
人が多い=注意が散漫、が正しい。
昼間だから安全ではない。
昼間は観光客が最もスマホを出す時間帯だ。
凶悪犯罪は希少で、ニュースになる。
軽犯罪は頻発しても、個別には大きく扱われない。
人間の脳は「ニュースになるもの=怖い」と感じ、
日常化したリスクを軽視する。
ここに「大丈夫だろう」が生まれる。
「まさか自分は」は構造を理解していない
観光客は、無意識にこう行動する。
- スマホを長時間外に出す
- 立ち止まる
- キョロキョロする
- 片手が塞がっている
これは犯人にとって非常に分かりやすい。
窃盗は無差別抽選ではない。
成功率が高い順に処理していく作業だ。
「自分は気をつけている」という感覚と、
「客観的に見て隙がある」状態は一致しない。
選ばれているという意識がないこと自体が、最大の盲点だ。
なぜ凶悪犯罪は避けやすいのか
日本人は総じてリスク回避的だ。
危なそうなエリアを避ける。
酔ってトラブルを起こしにくい。
喧嘩に発展しそうな状況から引く。
だから致命的な事件には巻き込まれにくい。
しかし携帯窃盗は、
危険エリアに行かなくても起きる。
真昼間に起きる。
観光地で起きる。
回避しても交差してしまうタイプの犯罪なのだ。
結論
日本人が特別に愚かだから盗られるのではない。
イギリスが特別に無法だからでもない。
日本モードのまま海外都市に立つこと自体が、リスクと噛み合ってしまう。
平和ボケ。
信用しすぎ。
大丈夫だろう。
まさか自分は。
これらは性格の弱さではなく、
日本という安全圏で最適化された思考の副作用だ。
その副作用が、ロンドンでは“ほぼ盗られる”という現象になる。
世界は日本基準では動いていない。
その現実を直視しない限り、
スマホはポケットから出した瞬間に、他人の獲物になり得る。










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