5月1日まで大家が強気になれる“構造的理由”
今ロンドンで賃貸契約の更新や新規契約をするのは、
借り手にとって極めて不利なタイミングです。
その理由は明確です。
2026年5月1日から、イングランドでは
Renters’ Rights Act(借家人権利法)が施行され、
賃貸市場のルールが大きく変わるからです。
しかし――
重要なのはここです。
5月1日までは、まだその新ルールは適用されません。
まず冷静に押さえるべき事実
現行制度のもとでは:
- 契約更新時の家賃は基本的に自由に設定可能
- 固定契約の満了時には市場価格に近い水準へ引き上げ可能
- Section 21(理由なし退去通知)もまだ使える
つまり、
「嫌なら出ていけばいい」
という圧力は、今はまだ機能します。
ここを誤解して強気に出ると、本当に退去という結果になりかねません。
ではなぜ今、異常な値上げが起きているのか?
理由はシンプルです。
5月1日以降、大家の自由度が大幅に下がるからです。
5月1日から何が変わるのか?
① 固定契約(AST)が廃止
現在主流の
Assured Shorthold Tenancy(固定契約)は廃止され、
原則「定期契約」に移行します。
これにより:
- 契約満了時の一括値上げという概念が消える
- 契約終了をテコにした圧力が弱まる
② 家賃値上げは年1回のみ
新制度では:
- 値上げは年1回まで
- 正式なSection 13通知が必要
- 値上げ額は市場相場と照合され得る
- テナントはFirst-tier Tribunalで争える
つまり、
今のような“契約更新で一気に上げる”戦術が使いにくくなります。
③ Section 21(理由なし退去)の廃止
大家が最大の交渉カードとして持っていた
「理由なし退去通知」が消えます。
これは市場構造を根本から変えます。
では、5月1日前に交渉は無理なのか?
ここが本題です。
確かに、
5月1日までは家賃は自由に上げられる
これは事実です。
しかし、だからと言って
「借り手は完全に無力」ではありません。
重要なのは、
“強気に戦う”のではなく、“合理的に落としどころを作る”こと。
補填すべき現実的な交渉戦略
① 大家もリスクを抱えている
空室リスクは常に存在します。
- 新規募集にかかる時間
- 仲介手数料
- 空室期間の損失
- 新制度下での運営不確実性
今は貸し手市場とはいえ、
空室はゼロリスクではありません。
「現テナントの安定」は一定の価値があります。
② 5月1日以降は“追い出しにくくなる”のは事実
新法施行後は:
- 理由なし退去が不可
- 値上げは年1回
- Tribunalで争われる可能性あり
大家もこれを理解しています。
だからこそ今、
「今後数年分を先に確保したい」
と動いているわけです。
この心理を理解していれば、
「極端な値上げで退去されるより、適度な増額で安定運用」
という選択肢も合理的だと示せます。
③ 強気ではなく“冷静な現実提示”
危険なのは、
「5月からあなたは上げられませんよ」と挑発的に言うこと。
それは逆効果になり得ます。
代わりに、
- 現在の市場相場データを提示
- 長期入居の意思を示す
- 退去コストの現実を示唆
- 合理的な増額案を提示
つまり、
“戦う”のではなく
“数字で冷静に着地させる”交渉です。
結論:今は不利だが、完全に詰みではない
確かに今は:
✔ 契約更新で自由に上げられる
✔ Section 21も使える
✔ 強く出れば退去の可能性もある
これは変えられない現実です。
しかし同時に、
✔ 大家も5月以降の不確実性を抱えている
✔ 空室リスクは現実にある
✔ 安定入居は価値がある
つまり、
「新法を盾に強気に出る」のではなく、
「新法後の市場構造を踏まえた合理交渉」なら現実的に機能する。
今は“駆け込み値上げ期間”
多くの家主が今、最大値まで吊り上げようとしているのは事実です。
しかし、
知識がある借り手は、
- 感情的に反発せず
- 法律を誤解せず
- 退去リスクを理解し
- 冷静に数値交渉する
ことで、値上げ幅を最小限に抑える余地はあります。










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