11月に雪が降ったロンドン──温暖化で冬はどう変わったのか?

11月のロンドンで雪が降り、ビッグベンと赤い2階建てバスが雪景色に包まれているイラスト

11月に雪が降ったロンドン──これは温暖化の影響なのか?

11月のロンドンに雪が降ると、「最近の気候変動の影響では?」と気になる人も多いでしょう。ロンドンはイギリスの中では比較的温暖で、雪が多いのは通常1〜2月。しかし、11月の雪がまったく前例のない現象かというと、そうではありません。

そもそも11月は秋から冬への移行期で、寒気が流れ込みやすいタイミングには雪が降ることがあります。20世紀前半〜中盤には、ロンドン周辺で11月に雪やみぞれの日が多かった年も記録されています。珍しいとはいえ、歴史的に見ても起こり得る範囲の出来事です。


過去にもあった11月の雪──ただし頻度は減ってきている

ロンドン近郊の長期観測を振り返ると、1940〜60年代には「雪の多い冬」が繰り返しあり、11月から積雪が見られる年も存在していました。例えば1962–63年の冬は、イギリス全体が現在では考えられないほどの大寒波に見舞われ、何十日も雪が残りました。

一方で近年の観測データを比べると、雪の日そのものは減少傾向にあります。気温が全体的に上がっているため、昔なら雪になっていた気候条件でも、今では雨で終わるケースが多くなってきています。ロンドンで気温が0℃を下回る日も減っており、結果として「雪が積もるチャンス」は確実に少なくなっています。


温暖化と“レアな雪”──矛盾して見える現象の背景

地球温暖化が進んでいるのに、なぜ11月に雪が降るのでしょうか。これは一見矛盾しているように見えますが、実際には矛盾ではありません。

温暖化は平均気温を押し上げますが、短期的・局所的には寒気の流れ込みが強まることもあり、むしろ「極端な寒暖差」が起こりやすくなるという指摘があります。つまり、普段より暖かい冬が続く一方で、突然強い寒波が発生するという“振れ幅の大きさ”が問題になっているのです。

今回の11月の雪も、そのような寒気が一時的に強まった結果と考えられます。


30年前と比べると、ロンドンの冬はどう変わった?

約30年前、1990年代のロンドンの冬と比べると、いくつかの傾向がはっきりしています。

  • 雪の量・積雪日数は減少
    1990年代にはたびたびあった「街が白くなる冬」は、今では相当に珍しくなっています。
  • “寒い冬”の頻度が低下
    気温が氷点下になる日が少なく、厳冬という言葉があまり使われなくなりました。
  • それでも寒波は突然やってくる
    平均気温が上がっている一方、2009–10年のように強烈な寒波が来る年もあり、気候の振れ幅が大きくなっています。

総合すると、ロンドンの冬は「全体として温暖化で穏やかになりつつあるが、突発的な寒波はむしろ起こりやすい」という特徴が強まってきています。


まとめ

11月のロンドンの雪は珍しいものの、歴史的に見ても前例はあります。ただし、気候変動の影響でロンドンの冬は長期的に暖かくなっており、雪の可能性は確実に減っています。その一方で、気流の乱れによって突発的な寒波が訪れることも増えているため、今回のような“早い雪”が目立ってニュースになるのです。

気温が上がり続ける中、「雪が降った=寒くなった」ではなく、「平均は暖かくなっても、極端な現象が起きやすくなっている」という理解が、これからの気候を読み解く上で大切になってきます。

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