
~正直者が馬鹿を見る?海外でビジネスをするリスクと現実~
はじめに
グローバル化が進み、インターネットの普及によって、国境を超えたビジネスが簡単にできるようになりました。特にオンラインビジネスは、在庫を持たずにドロップシッピングや輸出入を行えるなど、参入のハードルが低く、多くの起業家が海外市場に目を向けています。
しかしながら、「日本と同じ感覚」で海外ビジネス、特にイギリス市場に挑もうとするのは非常に危険です。なぜなら、そこには日本では想像もつかない落とし穴がいくつも存在しているからです。
今回は、実際にイギリスでオンラインビジネスを展開している経験をもとに、日本人が知らないイギリスの「商慣習」と「闇」を暴いていきます。
1. 「正直が美徳」は日本限定?
日本では、「お客様は神様」「信頼第一」「正直であること」がビジネスの基本であり、顧客との信頼関係が何よりも重要とされています。荷物が遅れれば謝罪し、商品に少しでも不備があれば返金や交換を迅速に行う。
こういった対応は、日本では「当然」とされていますが、イギリスでは事情がまったく異なります。
イギリスでは、「自己主張が強い者が得をする」という文化が根強く、特にオンラインでの買い物においては、消費者が「システムの隙を突く」ような行為が日常的に行われています。
2. 届いているのに「届いていない」と言う人たち
オンラインショップ運営者にとって、最も頭を抱えるクレームのひとつが「荷物が届いていない」というものです。
驚くべきことに、イギリスでは実際に商品が配達されていても、「届いていない」と虚偽の申告をして返金や再配送を要求する消費者が少なくありません。
とくに小型商品(例えばアクセサリーや雑貨など)や追跡番号のない配送方法を選んだ場合、証拠が残らないため「言った者勝ち」になってしまうことが多いのです。
多くのイギリス人は「とりあえず届かなかったと伝えておけば返金される」ということを知っており、罪悪感すら感じていないケースも多いです。
3. 「損傷していた」と虚偽のクレーム
もうひとつ多いのが、「商品が損傷していた」「壊れていた」というクレームです。
実際に配送途中で破損するケースももちろんありますが、実物を見ると「どこが?」と思うような軽微なキズや、明らかに使用済みで返送してくるケースなども見受けられます。
中には、使った後に「壊れてた」と言って返金を要求する者もおり、まるでレンタルのように商品を利用してくるのです。
こうした状況では、誠実に対応すればするほど損をする構造になっており、特に返品送料を販売者負担にしている場合、その負担はバカになりません。
4. 荷物が届かないのが「当たり前」になっている
日本では、配送業者の対応は非常に丁寧で、時間指定どおりに荷物が届くのが当たり前。
ところがイギリスでは、配送に関してのトラブルは日常茶飯事であり、むしろ「ちゃんと届いたらラッキー」ぐらいの感覚でいる人も多いのが実情です。
よくある例としては、
- 配達員が不在票を残さず持ち帰る
- 関係ない家に届ける
- 玄関の外に放置する(盗難リスク大)
- 受け取りサインを偽造する
など、もはや笑えないような話が後を絶ちません。
そしてさらに問題なのは、これらのトラブルが「当たり前」になってしまっているため、改善を求める声が少ないという点です。
5. 悪用される「買い手保護制度」
eBayやEtsy、Amazonなどの大手プラットフォームには、「バイヤープロテクション(購入者保護制度)」という仕組みがあります。これは本来、正当な理由で商品が届かなかった、あるいは偽商品だった場合にバイヤーを保護するための制度ですが、これを逆手に取って悪用する人が後を絶ちません。
実際には商品を受け取っているにもかかわらず、「届いていない」と虚偽の申し立てをし、プラットフォームを通じて返金を受ける。販売者が証拠を提示しても、購入者の言い分が通ってしまうケースも多く、不公平感が拭えません。
6. 詐欺まがいのレビュー戦略
オンラインでの信用はレビューに大きく依存しますが、イギリスではレビューを「取引材料」として使ってくる顧客もいます。
例えば、「悪いレビューを書かれたくなければ返金しろ」「無料で追加の商品を送れば星5をつけてやる」といった、半ば脅しのようなメッセージが届くこともあります。
日本人経営者にとっては信じがたいことかもしれませんが、これは現実に起きていることであり、真面目に対応していると心がすり減っていきます。
7. 日本人経営者ができる防衛策
では、イギリスでオンラインビジネスを展開するうえで、私たち日本人はどう身を守ればよいのでしょうか? 以下のような対策が有効です。
1. 追跡番号付きの配送を基本にする
コストが高くなっても、追跡可能な配送方法を選ぶことで、「届いていない」という虚偽の主張に対抗できます。
2. 商品の状態を記録(動画・写真)
発送前に商品と梱包状態を動画で記録しておくことで、「破損していた」クレームに対抗できます。
3. 利用規約の整備
返品・返金に関するルールを明確に提示し、納得してもらってから購入してもらうようにします。
4. レビューの対応は冷静に
ネガティブレビューに過剰反応せず、誠実かつ論理的に返信することで信頼を維持しましょう。
5. ブラックリストを作成
明らかに悪質な購入者とは再取引を避けるため、購入者の情報を記録し、リスク管理に役立てます。
8. 「誠実さ」が通じない世界で、どう戦うか
日本人として「誠実であること」は、誇るべき美徳です。ですが、イギリスのような文化では、それが「カモにされる原因」となることもあります。
だからといって、現地のやり方に染まり、ずる賢く立ち回るべきだと言うつもりはありません。ただ、「自分の常識は世界の常識ではない」と知ったうえで、対策を講じながらビジネスを展開する必要があります。
イギリス市場は確かに魅力的ですが、甘い夢だけを見て進出するのは危険です。時には図太く、時には冷静に、そして時には割り切って、戦略的に立ち回ることが求められるのです。
おわりに
海外でのオンラインビジネスは、日本では得られないチャンスと成長の場でもあります。しかしその反面、文化や商慣習の違いから生まれる「落とし穴」も数多く存在します。
イギリスは特に、「正直者が馬鹿を見る」ような側面が強く、真面目な日本人が不利益を被ることも少なくありません。
だからこそ、現地の現実を知り、冷静に、かつしたたかに、事業を展開していくことが成功への鍵になります。リスクを理解し、防衛策を講じながら、自分のビジネスを守り抜いてください。
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