イギリス国籍の申請の仕方

日本人が英国市民になるまでの流れを分かりやすく解説

イギリスに長く住んでいる日本人の中には、永住権を取得した後、「このままイギリス国籍も取るべきなのか」と考える人もいます。

イギリス国籍を取得すると、英国市民としてイギリスに住み、働き、英国パスポートを申請できる立場になります。しかし、日本人にとっては非常に大きな注意点があります。日本国籍を持つ人が自分の意思で外国籍を取得した場合、日本国籍を失うと国籍法で定められているためです。法務省も、自己の志望によって外国国籍を取得した場合、日本国籍を喪失すると説明しています。

つまり、日本人がイギリス国籍を申請するということは、単なるビザ手続きではありません。日本国籍との関係も含めて、人生の大きな選択になります。

この記事では、イギリス国籍を申請する一般的な流れ、必要条件、必要書類、費用、注意点を日本人向けに分かりやすく解説します。


イギリス国籍申請は「帰化申請」

イギリス国籍を取得する方法はいくつかありますが、成人の日本人がイギリスに長く住んだ後に申請する場合、多くは naturalisation、つまり帰化申請になります。

イギリス政府は、British citizenship には複数の申請ルートがあり、自分の状況に合う方法を確認する必要があると案内しています。永住権、Settled Status、英国人配偶者の有無などによって、条件が少し変わります。

一般的には、次のような人が対象になります。

イギリスで一定期間合法的に滞在している人。
Indefinite Leave to Remain、つまり永住権を持っている人。
EU Settlement Scheme の Settled Status を持っている人。
Life in the UK Test に合格している人。
英語力を証明できる人。
重大な犯罪歴や移民法違反がなく、good character の条件を満たす人。

英国人と結婚している、または civil partnership の関係にある場合は、通常のルートとは異なる条件で申請できる場合があります。英国政府は、英国市民の配偶者・シビルパートナーとして naturalisation を申請するルートも別に案内しています。


まず確認すべきこと:永住権を持っているか

イギリス国籍を申請する前に、まず確認すべきなのは、自分が永住権を持っているかどうかです。

通常、イギリス国籍の申請には、Indefinite Leave to Remain、または Settled Status が必要です。GOV.UKでは、ILRまたはSettled Statusを持つ人向けの英国市民権申請ページが用意されています。

永住権をまだ持っていない人は、原則としていきなりイギリス国籍を申請することはできません。まずはビザのルートに沿って永住権を取得し、その後に国籍申請を検討する流れになります。

また、永住権を持っていても、申請時点で有効な在留資格を持っている必要があります。英国政府は、国籍申請中も、国籍が認められ市民権授与式を終えるまで、イギリスに滞在する許可が必要だと説明しています。


申請前に確認する主な条件

イギリス国籍の申請では、細かい条件があります。代表的なものは以下の通りです。

1. 居住期間

通常の帰化申請では、申請前の5年間イギリスに住んでいることが求められます。GOV.UKは、ILRまたはSettled Statusを持つ人が申請する場合、申請日前5年間の居住などの条件を案内しています。

また、オンライン申請の場合、Home Officeが申請を受け取る日はオンラインで申請した日になります。GOV.UKは、申請者が「申請を受け取られる日のちょうど5年前に、物理的にイギリスにいた」必要があると説明しています。

これは非常に重要です。例えば、5年前の同じ日に日本へ一時帰国していてイギリスにいなかった場合、申請日をずらす必要がある可能性があります。

2. 不在日数

申請前の数年間に、イギリス国外へ出ていた日数が多すぎると不利になる場合があります。長期出張、一時帰国、海外滞在が多い人は、パスポートの出入国記録や旅行履歴を見ながら、事前に不在日数を確認する必要があります。

3. Life in the UK Test

イギリス国籍申請では、Life in the UK Test の合格が必要です。これは、イギリスの歴史、政治、法律、文化、社会制度などに関するテストです。

公式テストはGOV.UKからオンライン予約します。受験料は£50で、少なくとも3日前までに予約する必要があります。

試験では、45分間で24問に答えます。問題は公式ハンドブックに基づいて出題されます。

4. 英語力の証明

18歳以上でイギリス国籍を申請する場合、通常は英語力を証明する必要があります。

GOV.UKによると、英語力は主に、B1、B2、C1、C2レベルの英語資格、または英語で授業・研究が行われた学位によって証明できます。

英語テストで証明する場合は、承認された Secure English Language Test、いわゆるSELTを受ける必要があります。

日本の大学を卒業している場合でも、その学位が英語で教えられたものではない場合、通常は英語力証明として使えません。英語圏の大学や、英語で授業が行われた学位を持っている場合は、利用できる可能性があります。

5. Good character

イギリス国籍申請では、good character、つまり「品行方正」の条件も審査されます。

これは単に犯罪歴がないという意味だけではありません。税金の未払い、重大な交通違反、移民法違反、虚偽申告、債務問題なども影響する可能性があります。

特に注意すべきなのは、申請書に事実と違う内容を書かないことです。過去の住所、雇用履歴、出入国歴、犯罪歴、税務情報などは、できる限り正確に記載する必要があります。


申請に必要な主な書類

申請内容によって必要書類は変わりますが、一般的には次のような書類を準備します。

現在のパスポート。
過去のパスポート。
BRP、eVisa、または永住権・Settled Statusの証明。
Life in the UK Test の合格証明。
英語力の証明書。
住所履歴。
雇用履歴。
税務関係の情報。
婚姻関係を証明する書類。
英国人配偶者がいる場合は配偶者の英国パスポートなど。
Referee、つまり推薦人2名の情報。
出入国履歴。
申請者本人の身分証明・住所証明。

書類はオンライン申請後、UKVCASの予約時にアップロードするか、予約時にスキャンしてもらう形になります。GOV.UKでも、書類はオンラインサービスへアップロードするか、UKVCASの予約でスキャンできると案内されています。


Refereeとは何か

イギリス国籍申請では、通常2名の referee が必要です。これは、申請者の身元や人物性を確認する推薦人のような存在です。

Refereeには条件があります。例えば、一定期間申請者を知っていること、親族ではないこと、申請者の代理人ではないこと、一定の職業的地位を持っていることなどが求められます。

1人は professional person、もう1人は英国市民であることが求められるケースが一般的です。医師、会計士、教師、会社役員、公務員、不動産業者などが該当する場合がありますが、誰でもよいわけではありません。

申請前に、refereeになってくれる人を早めに探しておくことが大切です。


イギリス国籍申請の流れ

ステップ1:自分の申請ルートを確認する

まずは、自分がどのルートで申請するのかを確認します。

通常の永住権保持者として申請するのか。
英国人配偶者として申請するのか。
Settled Statusを使うのか。
子どもの登録申請なのか。

成人の日本人が自分の意思で英国市民になる場合、多くは Form AN を使った naturalisation になります。英国政府のForm ANガイダンスは、帰化申請の法的要件や手続きの概要を説明しています。

ステップ2:Life in the UK Testを受ける

まだ合格していない場合は、先にLife in the UK Testを受けます。

公式サイトから予約し、指定されたテストセンターで受験します。料金は£50です。

合格証明は、国籍申請時に必要になります。何度も受け直すことはできますが、落ちるたびに費用と時間がかかるため、事前にしっかり勉強しておくべきです。

ステップ3:英語力を証明する

英語資格がない場合は、承認されたSELTを受けます。

国籍申請では、通常B1以上の英語力が必要です。既に永住権申請時に英語証明を提出していても、国籍申請時に再確認が必要になる場合があります。

GOV.UKは、英語力証明として承認された英語資格、または英語で教えられた学位を利用できると説明しています。

ステップ4:過去5年間の住所・仕事・出入国履歴を整理する

申請書では、過去の住所、雇用、出入国履歴などを記載します。

ここでよく問題になるのが、海外旅行や一時帰国の日数です。日本への帰国、ヨーロッパ旅行、出張などをすべて確認し、日付を整理しておく必要があります。

パスポートのスタンプ、航空券の記録、メールの予約確認、銀行カードの利用履歴などを見ながら、できる限り正確にまとめましょう。

ステップ5:オンライン申請フォームを作成する

準備ができたら、GOV.UKからオンライン申請を進めます。

申請フォームでは、個人情報、住所履歴、家族情報、雇用情報、犯罪歴、移民履歴、海外滞在歴、referee情報などを入力します。

ここで絶対に避けるべきなのは、急いで適当に入力することです。国籍申請はビザ申請以上に慎重さが求められます。過去のビザ申請内容と矛盾がある場合、説明を求められる可能性もあります。

ステップ6:申請費用を支払う

2026年4月8日時点のHome Office feesでは、naturalisation、つまり英国市民権の帰化申請費用は£1,709で、これに市民権授与式の£130が加算されます。GOV.UKのILR保持者向けページでは、合計£1,839と案内されています。

この費用は、申請が却下されても全額戻るとは限りません。そのため、条件を満たしているか不安がある場合は、申請前に専門家へ確認する価値があります。

ステップ7:UKVCASで書類提出と生体認証

オンライン申請後、UKVCASで予約を取り、書類提出と生体認証を行います。

生体認証では、指紋と顔写真を登録します。GOV.UKは、バイオメトリック情報の提出が必要であり、その手続き自体には追加料金はないと説明しています。

ただし、UKVCASの予約枠や追加サービスによっては、別途料金が発生する場合があります。

ステップ8:審査結果を待つ

申請後はHome Officeの審査を待ちます。

GOV.UKによると、通常は6か月以内に結果が出ます。ただし、申請内容によってはそれ以上かかる場合もあります。

審査中に追加書類を求められることもあります。その場合は、期限内に対応する必要があります。

ステップ9:承認後、市民権授与式に出席する

申請が承認されると、citizenship ceremony、つまり市民権授与式に出席します。

この式で宣誓または忠誠の誓いを行い、British citizenship certificateを受け取ります。これにより、正式に英国市民になります。

英国市民になった後、英国パスポートを申請することができます。


日本人が申請前に必ず考えるべきこと

日本国籍を失う可能性

日本人がイギリス国籍を自分の意思で取得する場合、日本国籍を失う可能性があります。

日本の国籍法第11条第1項は、日本国民が自己の志望によって外国国籍を取得したときは、日本国籍を失うと定めています。

これは、イギリス側が二重国籍を認めているかどうかとは別の問題です。イギリスが二重国籍を認めていても、日本側の法律では別の扱いになります。

そのため、日本人が英国市民権を申請する前には、必ず日本国籍への影響を理解しておく必要があります。

日本へ戻る予定がある人は慎重に

将来的に日本へ帰国する可能性がある人、日本に高齢の親がいる人、日本の不動産や相続に関わる人、日本で仕事をする可能性がある人は、特に慎重になるべきです。

英国市民になればイギリスでの安定は強くなりますが、日本国籍を失った場合、日本では外国人として扱われる可能性があります。

永住権だけで十分な場合もある

イギリスに住むだけであれば、永住権で十分な人も多いです。

永住権があれば、通常はイギリスで働き、生活し、ビザ更新なしで住み続けることができます。国籍を取得する必要があるかどうかは、自分の人生設計によって変わります。


申請前チェックリスト

申請前には、少なくとも次の点を確認しましょう。

永住権またはSettled Statusを持っているか。
申請日前5年間、必要な居住条件を満たしているか。
申請日のちょうど5年前にイギリスにいたか。
海外滞在日数が多すぎないか。
Life in the UK Testに合格しているか。
英語力を証明できるか。
税金、犯罪歴、交通違反、移民履歴に問題がないか。
Refereeを2名用意できるか。
過去の住所・仕事・出入国履歴を正確に整理できているか。
日本国籍への影響を理解しているか。
申請費用を支払う準備があるか。


よくある失敗例

申請日の5年前にイギリスにいなかった

これは見落とされやすいポイントです。申請前5年間の居住条件を満たしていても、申請日のちょうど5年前にイギリスにいなかった場合、問題になる可能性があります。

出入国履歴が不正確

日本への一時帰国や旅行の日数を適当に書くと、後で矛盾が出る可能性があります。できる限り記録を確認してから入力しましょう。

Refereeの条件を満たしていない

知人であれば誰でもよいわけではありません。refereeには条件があるため、早めに確認が必要です。

過去の交通違反や税金問題を隠す

小さな違反だから書かなくてよい、と自己判断するのは危険です。虚偽申告と見なされる方が、はるかに大きな問題になります。

日本国籍への影響を軽く考える

日本人にとって最大の問題はここです。イギリス国籍を取った後に、「日本国籍を失うとは知らなかった」となっても、非常に深刻な問題になります。


まとめ:イギリス国籍申請は、手続きよりも「決断」が重要

イギリス国籍の申請自体は、流れだけ見れば比較的はっきりしています。

永住権を確認する。
Life in the UK Testに合格する。
英語力を証明する。
書類を集める。
オンラインで申請する。
費用を支払う。
UKVCASで生体認証を行う。
審査を待つ。
承認後に市民権授与式へ出席する。
英国パスポートを申請する。

しかし、日本人にとって本当に重要なのは、申請フォームの書き方だけではありません。

イギリス国籍を取るということは、イギリスでの生活をより安定させる一方で、日本国籍を失う可能性を伴う選択です。

イギリスに一生住むつもりがある人にとっては、大きな安心と自由を得られる制度です。
一方で、日本に戻る可能性を残したい人にとっては、永住権のまま暮らす方が現実的な選択かもしれません。

イギリス国籍の申請は、単なる行政手続きではありません。
それは、自分の人生の拠点をどこに置くのかを決める、大きな決断なのです。

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