
イギリスの夏は、長く厳しい冬を超えた喜びを分かち合う季節。6月から8月にかけての数少ない晴れの日を最大限に楽しむために、多くの人が屋外に繰り出し、家族や友人とともにさまざまなアクティビティを楽しみます。そのなかでも「バーベキュー」は、イギリス人にとって夏の代名詞とも言える重要なイベントです。庭先で炭をおこし、ジュウジュウと音を立てるグリルの上で焼かれるソーセージやハンバーガーの香りは、イギリスの夏の象徴ともいえるでしょう。
この記事では、イギリスにおけるバーベキューの一般的な様子、法律やマナー、定番メニューについて詳しくご紹介します。
なぜイギリス人は夏にバーベキューをするのか?
イギリスの気候は年間を通して変わりやすく、曇天や雨の日が多いため、晴れた日はとても貴重です。そのため、人々は天気予報をチェックして「この日しかない」となると、即座にバーベキューの準備を始めます。スーパーには使い捨ての簡易グリル(ディスポーザブルBBQ)が山積みにされ、肉類やバンズ、ビールがまとめ買いされていく光景は、まさに夏の風物詩。
バーベキューは、単なる食事というよりも「社交の場」としての役割が大きく、家族や友人と時間を過ごすためのきっかけとなっています。また、長期の休暇(サマーホリデー)や週末のピクニックとも相性がよく、手軽でありながら特別感が味わえるアクティビティとして定着しています。
イギリスではどこでもバーベキューをしていいのか?
基本的なルールと規制
イギリスではバーベキューは非常にポピュラーな行為ですが、どこでも自由にできるというわけではありません。特に公共の場でのバーベキューには、いくつかの規制やマナーが存在します。
自宅の庭(Private Garden)
最も一般的なのが、自宅の庭でバーベキューを行うスタイルです。これは完全に合法で、イギリス中の住宅街で夏になるとあちこちからバーベキューの香りが漂ってきます。ただし、煙や匂いが隣人に迷惑をかける場合もあるため、近所付き合いを大切にしているイギリス人は、事前に「今夜バーベキューする予定だよ」と声をかけておくことも珍しくありません。
公園(Public Parks)
多くの公園ではバーベキューが許可されていますが、公園によっては明確に禁止されていることもあります。ロンドン市内のいくつかの公園(例:ハイド・パーク、リージェンツ・パーク)では、火の使用を制限している区域があるため、バーベキューをする前には各自治体や公園管理局のウェブサイトで規定を確認することが推奨されます。
また、使い捨てグリルの使用は禁止されている場合もあります。地面を焦がしたり、火事のリスクを伴うため、安全な設置方法や後始末も重要なマナーの一部です。
ビーチや自然保護区
一部のビーチではバーベキューが許可されていますが、国立公園や自然保護区では原則禁止されている場所が多いです。特に、乾燥した夏場には山火事のリスクが高まるため、焚火やバーベキューは禁止されていることが一般的です。
イギリスのバーベキューにおけるマナー
イギリスでは、公共の場でのバーベキューに際して以下のようなマナーが重視されます:
- 煙の向きに注意
周囲にピクニックをしている人がいれば、煙がそちらに流れないよう風向きを確認する。 - 大音量の音楽を避ける
公園などではスピーカーを使った大音量の音楽は禁止されていることもあります。 - ゴミはすべて持ち帰る
特に炭や使い捨てグリルの残りなどは、しっかりと処分することが求められます。 - 野生動物への配慮
食べ物のカスを放置しないこと。キツネやカモメが近寄る原因になります。
イギリスのバーベキュー定番メニュー
イギリスのバーベキューでは、アメリカやオーストラリアとは少し違った、独自のスタイルと食文化が根付いています。以下は、イギリスでよく見かける定番のメニューです。
1. ソーセージ(Sausages)
「バンガーズ」と呼ばれるほど、ソーセージはイギリスの定番。スモーキーなカンバーランド・ソーセージや、レバー入りのブラックプディング風のソーセージなど種類も豊富。バンズに挟んでケチャップやマスタードをかけるのが一般的です。
2. ハンバーガー(Burgers)
パティは手作りする家庭も多く、牛肉100%のものが好まれます。チェダーチーズ、レタス、トマト、ピクルスをトッピングし、好みによってはスモーキーバーベキューソースも人気。
3. マリネしたチキン(Marinated Chicken)
レモン&ハーブ、ハニー&マスタード、スパイシーパプリカなど、スーパーマーケットで味付きのチキンが売られており、炭火でじっくり焼くとジューシーで香ばしく仕上がります。
4. コーン・オン・ザ・コブ(Corn on the Cob)
皮付きのまま焼いて、バターと塩をかけて食べるのがイギリス流。肉だけでなく野菜もバランスよく摂るのが最近のトレンドです。
5. ホールマッシュルームのグリル
大きめのマッシュルームにチーズやガーリックバターを詰めて焼くというレシピも人気で、ベジタリアンにも対応できます。
6. サイドメニュー
ポテトサラダ、コールスロー、グリーンサラダなどの冷菜は、肉との相性も抜群。クラシックな「ピクルドオニオン」や「ブレッドロール」なども登場します。
デザートとドリンク
バーベキューの締めくくりには、イギリスならではの甘いデザートや冷たい飲み物が欠かせません。
- イートン・メス(Eton Mess)
メレンゲ、イチゴ、生クリームを混ぜ合わせた定番スイーツ。 - パブビールやサイダー
軽めのラガーやフルーティーなサイダー(特にアップルやペア)が夏のバーベキューにぴったり。 - ピムス(Pimm’s)
イギリスの夏を象徴するカクテルで、レモネードやミント、キュウリ、イチゴを混ぜた爽やかな飲み物。
まとめ:イギリスの夏は、バーベキューとともに
イギリス人にとってバーベキューは、ただの食事イベントではなく、「短い夏をどう楽しむか」という生活の知恵と喜びが詰まった文化です。法律やマナーを守りながら、家族や仲間とともに笑顔で過ごすバーベキュータイムは、イギリスの夏を満喫するための最高の手段の一つと言えるでしょう。
これからイギリスに住む予定の方や、現地での生活をより深く知りたい方にとって、この記事がバーベキュー文化を楽しむきっかけになれば幸いです。
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