イギリスで詐欺に遭ったらどうする?日本との違い、相談先、法的手段、弁護士費用まで徹底解説

イギリス滞在中、あるいは在住中に思いがけず詐欺被害に遭ってしまった場合、日本とは異なる法制度や対応窓口に戸惑う方も多いでしょう。本記事では、イギリスにおける詐欺対策の基本知識、通報先や相談窓口、弁護士費用の目安などを、日本との違いに触れつつ詳しくご紹介します。

1. イギリスにおける「詐欺」の定義と分類

イギリスでは「Fraud(フロード)」という言葉で詐欺全般を指し、刑事犯罪として扱われます。2006年に施行されたFraud Act 2006が詐欺に関する主な法律で、以下のような行為が詐欺として定義されています:

  • 虚偽の陳述による詐欺(Fraud by false representation)
  • 情報の不開示による詐欺(Fraud by failing to disclose information)
  • 他人を欺いて利益を得ようとする詐欺(Fraud by abuse of position)

たとえば、ネット通販で商品を購入したが商品が届かない、偽の投資話で金銭をだまし取られた、偽の不動産契約で前金を奪われたなど、多くのケースが該当します。

2. 詐欺に遭ったらまずすべきこと

証拠を保存する

被害に気づいた時点で、関係するメール、チャットの履歴、送金記録、契約書などの証拠をすべて保存しましょう。英語の文書が多い場合でも、翻訳せず原本を確保することが重要です。

加害者に直接連絡しない

冷静に対応し、加害者と直接連絡を取ることは避けましょう。感情的に対応すると、さらなるトラブルに巻き込まれるリスクがあります。

金融機関へ連絡

クレジットカードや銀行振込などを通じて被害に遭った場合は、すぐに銀行やカード会社に連絡して支払いを止める、チャージバックを申請するなどの対応を依頼します。

3. 通報・相談窓口

イギリスでは詐欺の被害にあった場合、以下の機関に通報・相談が可能です。

3.1 Action Fraud(アクション・フロード)

詐欺被害を全国的に受け付けている警察の専門窓口です。

オンラインフォームでの通報も可能です。

Action Fraudに通報すると、National Fraud Intelligence Bureau(国家詐欺情報局)に情報が送られ、犯罪捜査が行われることがあります。

3.2 Citizens Advice(市民アドバイス)

非営利の法律相談機関で、無料で詐欺の相談や対応方法について助言を受けられます。

3.3 地元の警察(Local Police Station)

緊急を要する場合や明確な加害者が特定できている場合には、最寄りの警察署に直接通報しましょう。

  • 緊急時:999
  • 緊急でない通報:101

4. 日本との違い:警察の対応や訴訟手続き

4.1 日本よりも通報・立件のハードルが高い

イギリスでは警察が「公益性」「被害額の大きさ」「捜査リソース」を総合的に判断して対応を決定します。少額詐欺の場合は立件に至らないケースもあり、民事での損害回復を求めることが現実的です。

4.2 民事訴訟が重視される傾向

詐欺による金銭被害は、民事裁判を通じて返金を求めるのが一般的です。弁護士を雇い、County CourtやHigh Courtで訴訟を行うことになります。

5. 弁護士への相談と費用の目安

5.1 弁護士の探し方

以下のような方法で英国内の弁護士を探すことができます:

  • The Law Society(法律協会)の公式検索サイト(https://solicitors.lawsociety.org.uk)
  • Citizens Advice経由の紹介
  • 日本大使館や領事館が紹介してくれる弁護士リスト

5.2 費用の目安

イギリスでは日本以上に弁護士費用が高額になる傾向があります。料金体系には主に以下のものがあります:

  • アワリーレート(hourly rate): £200〜£600/時間
  • 固定報酬制(fixed fee): 一定の手続きに対して£500〜£2000程度
  • 成功報酬制(no win, no fee): 勝訴・和解時に報酬発生(主に損害賠償請求で使用)

初回の相談(30〜60分)は無料または低額(£50〜£150)で提供する事務所もあります。

5.3 法的援助(Legal Aid)

低所得者向けに、政府による法的援助制度(Legal Aid)が存在します。ただし、詐欺など民事事件では適用外の場合も多いため、事前の確認が必要です。

6. 被害回復のための民事訴訟の流れ

  1. Pre-Action Protocols(事前通知): 相手に正式な損害賠償請求の意向を通知
  2. Claim Form提出: County Courtに訴状を提出
  3. Defence(被告の反論): 相手側からの反論が提出される
  4. 調停・和解交渉(Mediation): 裁判前に和解の可能性を探る
  5. 審理(Hearing): 判事による裁定

訴訟費用は、請求金額や弁護士の関与度によって異なりますが、総額で£1000〜£10000以上になることもあります。

7. 在英日本人としてできる予防策

  • 安易に個人情報をSNSや掲示板で公開しない
  • 英語で書かれた契約や広告は第三者に確認してもらう
  • 高額取引は対面や信頼できる第三者を通して行う
  • 怪しい投資話や副業勧誘には警戒する

まとめ

イギリスで詐欺被害に遭った場合、日本とは異なる制度や手続きのもとで冷静に対処することが求められます。まずはAction FraudやCitizens Adviceなどの公的機関に相談し、必要に応じて弁護士に相談しましょう。費用面の負担はあるものの、早期の法的対応によって損害回復の可能性を高めることができます。海外生活でのトラブルを未然に防ぐためにも、常に慎重な行動と情報収集を心がけましょう。

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