
近年、イギリス社会における移民への風当たりが強まっていることを実感させられる出来事が増えている。特にSNS、とりわけ若者の利用率が高いTikTokなどでは、イギリス人が移民に対して「国から出て行け」といった暴言を吐く動画が拡散されている。
驚くべきは、その動画のコメント欄の変化だ。以前であれば、こうした差別的な発言に対しては「そんなことを言うべきではない」「移民も社会の一員だ」といった擁護や反論が多く見られた。しかし最近では、9割近くのコメントが差別的な意見に賛同し、移民排斥を支持する声で埋め尽くされている。
この変化は偶然ではなく、イギリス社会全体の空気を反映していると考えられる。ブレグジット以降、移民規制を強めることが政治の重要なテーマとなり、メディアでも移民に対する否定的な論調が目立つようになった。生活コストの上昇や住宅不足といった社会問題の責任を移民に押し付ける言説も広がり、人々の不満が「外国人排斥」という形で表出しているのだ。
日本から見れば、イギリスは多文化共生の先進国の一つというイメージが強い。しかし現実には、排他的な意識が可視化され、右傾化の傾向が強まっているように映る。SNSのコメント欄は、単なる一部の声ではなく「社会の感情の縮図」としての役割を果たすだけに、この流れは決して軽視できない。
イギリスは本当に右寄りの国へと舵を切ってしまうのか。現地に住む移民や少数派の人々にとって、今後ますます息苦しい社会になるのではないかという懸念は拭えない。
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