
日本でもたびたび話題になる性産業の合法性。では、イギリスでは買春や売春は違法なのか?本記事では、イギリスにおける売春に関する法律の現状と、その背景、そして社会的な扱いについて解説します。
売春そのものは「合法」
まず最初に明確にしておきたいのは、イギリス(特にイングランドとウェールズ)では、売春行為そのものは違法ではないということです。つまり、成人同士が合意のもとで金銭を介して性的サービスを提供・受ける行為は、法律に違反していません。
ただし、これはあくまで「個人で行う売春」に限られます。問題となるのはその周辺行為です。
違法とされる行為
イギリスでは売春を「全面合法化」しているわけではありません。以下のような行為は違法とされています。
1. ピンプ行為(搾取・あっせん)
他人の売春行為から利益を得ること、いわゆる「ピンプ行為」は違法です。たとえば、他人を管理して売春をさせたり、紹介料を受け取ったりする行為は処罰の対象になります。
2. 売春宿(brothel)の運営
たとえ本人たちの合意があっても、2人以上の売春婦が同じ場所でサービスを提供することは「売春宿の運営」とみなされ、違法となります。これが、イギリスで性産業を組織化する上での大きなハードルです。
3. 公共の場での勧誘(ソリシテーション)
通りで声をかけたり、客引き行為をしたりするのも違法です。これは公共秩序や地域の治安を守るという観点から規制されています。
4. 人身売買・未成年の関与
当然ながら、人身売買や未成年を巻き込むような売春行為は重罪です。これは国際的な人権保護の観点からも非常に厳しく取り締まられています。
スコットランド・北アイルランドの違い
イングランドとウェールズでは前述のように「売春そのものは合法」ですが、スコットランドや北アイルランドではより規制が厳しい傾向にあります。特に北アイルランドでは、スウェーデンモデル(買う側を処罰する方式)を採用し、2015年から買春自体が違法になっています。
社会的・政治的な議論
イギリスでは売春合法化に関する議論が長年続いています。ある陣営は、性産業を合法かつ安全に管理することで性労働者の人権や安全を守るべきだと主張。一方で、「売春は本質的に搾取であり、撲滅すべき」というフェミニストや宗教団体の意見も根強くあります。
まとめ
- イングランドとウェールズでは売春そのものは違法ではない
- しかし、勧誘、売春宿の運営、他人を搾取する行為などは違法
- 北アイルランドでは買春自体が違法
- 社会的には賛否両論が続いている分野であり、今後の法改正も注目されている
性産業に対する法のあり方は、文化、宗教観、人権意識の影響を強く受ける分野です。イギリスのように「一部合法・一部違法」という中間的なアプローチは、国際的にも広く見られるモデルの一つと言えるでしょう。
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