世界各国で日本人が殺害されたというニュースは毎年のように耳にする。旅行者や留学生、ビジネスマンなどが不幸にも犯罪に巻き込まれて命を落とす事件は、南米やアジア、欧米諸国でも時折報道される。しかし不思議なことに、「イギリスで日本人が殺された」というニュースはほとんど聞かない。これは単なる偶然なのだろうか。それとも日本人特有の行動様式や文化的背景が大きく関わっているのだろうか。 英語力の低さが「衝突」を避ける 一つの理由として、日本人の英語力の問題がある。多くの日本人は英語を長年学んでいるにもかかわらず、会話には苦手意識を抱いている。そのため、留学や観光でイギリスを訪れても現地の人と積極的に深く関わろうとしない傾向がある。結果として、現地の人との衝突や口論に発展する場面が少ないのだ。 韓国人や中国人は日本人よりも英語力が高いとされるが、その分現地社会に踏み込み、摩擦を経験することもある。日本人は「英語が分からない」という壁と、シャイで控えめな性格によって、トラブルの火種から自然と距離を置いている。英語力の不足が皮肉にも「安全弁」として働いているとも言える。 危険な場所を避ける日本人の行動パターン 日本人は基本的に危険な地域や時間帯を避けて行動する。観光客であれば有名な観光地や文化的なスポットを中心に動き、治安の悪いエリアや深夜の繁華街にわざわざ足を運ぶことは少ない。留学生や駐在員も、比較的安全とされるエリアに住むことが多い。 小さい頃から「夜道は気をつけなさい」「知らない人について行ってはいけない」と教育される文化も影響しており、危険を直感的に避ける能力が他国の人よりも高いのかもしれない。たとえ言葉が分からなくても、雰囲気や表情から危険を察して近づかない、そうした無意識の自己防衛が働いていると考えられる。 非暴力的な国民性がもたらす安心感 日本人の「非暴力的な国民性」も無視できない。日本人は争いを避け、自己主張を控える傾向が強い。酒に酔って騒ぐことはあっても、殴り合いや暴力に発展することは少ない。そのためイギリス社会においても「害のない存在」として認識されやすい。他の外国人に対して偏見や敵意を抱く人がいたとしても、暴力的でもなく目立ちもしない日本人にわざわざ攻撃の矛先を向けることは稀だろう。 「殺されない」けれど「盗まれやすい」日本人 もっとも、イギリスに住む日本人が全く被害に遭わないわけではない。むしろ殺人事件は少ないが、スリや置き引き、強盗の被害は相当数ある。最大の理由は「平和ボケ」だ。 日本ではカフェやファストフード店で席を確保する際、バッグやスマートフォンを机の上に置いたまま離れても盗まれる心配は少ない。しかしイギリスを含むヨーロッパでは、それは「どうぞお取りください」と言っているに等しい。つい日本での感覚を持ち込んでしまい、被害に遭う日本人が後を絶たない。実際に留学生や観光客の体験談を聞くと「財布をすられた」「スマホを取られた」という話は珍しくない。 命の危険は低いが、金品を狙われやすい存在として見られているのは間違いない。つまり、イギリスは日本人にとって「殺されにくいが、盗まれやすい国」と言えるだろう。 安全に過ごすための心得 イギリスで日本人が安全に暮らす、あるいは旅行を楽しむために大切なことは、日常的な警戒心を忘れないことだ。具体的には、以下のような点に注意すべきである。 結論 イギリスで日本人が殺害される事件が少ないのは、偶然ではなく、英語力の低さや控えめな性格、危険回避の行動様式、非暴力的な国民性といった複数の要因が作用している結果だと考えられる。ただし、それに安心しきるのは危険である。命の危険は少なくても、財産を狙われるリスクは高い。 イギリスは「殺されないが盗まれやすい国」である。この二面性を理解し、日常的に警戒心を持って行動することこそが、本当の意味での安全につながるのだ。
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「イギリスで相次ぐストーカー殺人事件の実態と教訓|日本人女性が身を守るための注意点」
はじめに イギリスで起こるストーカー関連の殺人事件の背後には、個人的な動機だけではなく、インターネット時代に育った若い世代特有の対人スキルの欠如や、警察・司法機関の対応の甘さといった複合的な闇があります。ネット上でしか誰かとつながらなくなった現代の男性は、初対面の女性からのちょっとした優しさや笑顔を、過剰に「好意」と受け取ってしまう傾向にあると言われます。その結果、急激に妄想や執着を抱き、過剰な接触行動に出てしまい、やがて悲劇を招いてしまうことがあるのです。 また、ポップカルチャーとは異なり、イギリスでは女性がむやみに笑顔を振りまかない文化的背景があり、時に「フレンドリー=好意」と誤解されることがあります。そのため、見ず知らずの女性が優しくしてくれると、男性側が無意識にそれを「自分に惚れている」と勘違いし、ストーカー化のきっかけになりかねません。 このような背景から生じた代表的な3つの事件を具体的に紹介したうえで、日本人女性が身を守るためにできる対応について深く考えてみましょう。 事件例1:グレイシー・スピンクス事件 ダービーシャー出身の23歳の女性、グレイシー・スピンクスは、馬の世話をする場で元同僚によって刺殺されました。加害者は彼女が以前に仕事上で関わりを持った男性で、彼女はすでにストーカー行為を警察に報告していました。しかし「低リスク」と判断され、しかるべき対応がとられませんでした。その後、職場の近くで見つかったバッグには斧やハンマー、ナイフなどが入っていたにもかかわらず、警察は十分な対応を行わず、致命的な結果を招いたのです。 この事件は、警察のリスク評価の甘さや、地域ごとの対応力の差が大きな問題として浮き彫りになりました。ストーキング専門支援者が全国的に均一に配置されていないことが「地域格差」として批判されました。 事件例2:ヤスミン・チカイフィ事件 ロンドンのマイダ・ヴェール地区で、43歳のヤスミン・チカイフィさんが元パートナーに刺殺されました。事件当日、彼女は路上で襲われ、通りすがりの車が加害者をはねて制止し、結果的に加害者も死亡しました。 彼女はすでに裁判所から「ストーカー防止命令」を得ており、加害者は違反して出廷しなかったにもかかわらず、警察は逮捕令状を実行せず、危険を放置しました。この対応の遅れが命を奪う結果となり、後に警察の責任が強く追及されることとなりました。 事件例3:アリス・ラグルズ事件 24歳のアリス・ラグルズさんは、交際相手だった男性による執拗なストーカー行為を受け続け、自宅で刺殺されました。彼女は事件前に警察へ相談していましたが、具体的な行動を取ってもらえず、命を落とす結果になりました。 加害者は裁判で有罪となり、長期刑を言い渡されました。その後、彼女の両親は「アリス・ラグルズ・トラスト」を設立し、ストーカー被害者支援や啓発活動を続けています。事件はイギリス国内で「ストーカー殺人の典型例」とされ、被害者保護の在り方に大きな影響を与えました。 さらに見る:シェナ・グライス事件 10代のシェナ・グライスさんもまた、元交際相手からのストーカー行為を訴えていました。しかし警察は「大げさ」として取り合わず、逆に彼女が警告を受けたこともありました。その後、彼女は殺害され、警察の不適切な対応が社会問題となりました。 背後にある共通の闇 日本人女性への示唆 こうした背景を踏まえると、日本人女性も初対面の場やオンラインでのやり取りで「過剰に親しげに見せない」ことが、自衛につながります。以下は具体的なポイントです。 まとめ 終わりに イギリスで起きた数々の事件は、ストーカー行為が単なる迷惑行為ではなく「殺人の前兆」であることを示しています。ネット社会の中で他者との距離感を見失いがちな今だからこそ、女性自身も「自分を守るための演技や対応」を身につけることが必要です。それは冷たい態度ではなく、生存のための知恵であり、未来を守るための防衛策なのです。
イギリスで犯罪者にならないためには――社会環境と個人ができる対策
イギリスの犯罪統計や研究から見えてくるのは、犯罪は個人の性格だけでなく「環境や機会」に大きく影響されるという事実です。では、犯罪に巻き込まれたり、加害者にならないためには何が大切なのでしょうか。 1. 安定した家庭環境を築く 家庭は最初のセーフティネットです。虐待や家庭内暴力、親の依存症などがある環境では、子どもが非行や犯罪に関わるリスクが高まります。 2. 教育と学びを続ける 学歴や資格の有無は、将来の選択肢を大きく左右します。学校中退や読み書き能力の不足は、犯罪関与のリスク要因とされています。 教育は「犯罪に代わる選択肢」を与えてくれます。 3. 健全な人間関係を持つ ギャングや非行グループは、孤立した若者にとって「居場所」になりやすい存在です。しかし、そのつながりは犯罪を常態化させる危険をはらんでいます。 4. 経済的な困難への支援を活用する 失業や貧困は、犯罪の大きな背景要因です。生活に困っても「犯罪しかない」と思い込まないことが大切です。 5. 薬物・アルコール依存を避ける 薬物やアルコール依存は、窃盗や暴力といった犯罪に直結するリスクがあります。 6. 自己制御力を育てる 研究では「衝動を抑える力」や「先を見通す力」が、犯罪に走るかどうかを大きく分けるとされています。 まとめ イギリスで犯罪に関与するリスクを減らすには、 「犯罪者になるかどうか」は、個人の意志だけでなく環境や社会制度によって大きく左右されます。だからこそ、一人ひとりが支援を受けやすく、正しい選択肢を持てる社会を整えることが最も有効な犯罪予防策だといえるでしょう。
イギリスで性被害にあったときの対応ガイド~日本人の方へ、安全と支援のために~
近年、イギリスでは性犯罪の報告が増加しており、日本人を含む留学生や駐在員、そのご家族が被害に遭うケースもあります。文化や習慣の違いから、「大ごとにはしたくない」「言葉に自信がないから」と我慢してしまう方も少なくありません。しかし、あなたの安全と心の回復が最優先です。ここでは、万が一性被害に遭った場合にとるべき行動と、利用できる支援先をまとめました。 1. まずは身の安全を確保する 👉 自分を守ることが最優先です。「迷惑をかけてしまうのでは…」と思わず、ためらわず通報してください。 2. 医療機関・専門センターを受診する ※ 警察へ届け出をするかどうかは本人の自由です。証拠だけ保全しておき、後で決めることも可能です。 3. 証拠を残すために 4. 警察への通報 5. 利用できるサポート窓口 👉 一人で抱え込まず、必ず誰かに助けを求めてください。 6. 在英日本大使館・領事館への相談 最後に 性犯罪の被害は決して被害者の責任ではありません。泣き寝入りせず、勇気を出して行動することで、自分を守るだけでなく、同じように苦しむかもしれない未来の日本人を救うことにもつながります。 どうか一人で抱え込まず、周囲の支援を活用してください。
イギリスの脱税は重犯罪|HMRCによる摘発の流れ・罰則・過去事例を徹底解説
Ⅰ. イギリスにおける脱税の位置づけ 1.1 脱税とは何か 脱税(Tax Evasion)とは、納税義務を故意に免れようとする行為を指します。ここで重要なのは「故意」という点であり、単純な申告ミスや計算間違いは脱税とは見なされません。税法上は「税務詐欺(Tax Fraud)」として扱われ、悪質性が認定されると刑事責任を問われる可能性があります。 1.2 重罪としての扱い イギリスでは、脱税は刑事犯罪に分類されます。金額が大きい、手口が組織的である、繰り返し行われている、または社会的影響が大きい場合は「重罪(serious offence)」として起訴され、罰金や追徴課税だけでなく懲役刑も科されます。刑期は最長で7年に及ぶこともあり、極端な場合はそれ以上の刑期となる可能性もあります。 Ⅱ. HMRCに摘発された場合の流れと処分 2.1 調査の開始 HMRC(英国歳入関税庁)は、申告内容の不一致や海外口座の未申告、不自然な取引パターンなどを検知すると調査を開始します。調査は文書による質問や、帳簿・領収書の提出要求から始まり、必要に応じて現場査察も行われます。 2.2 自主申告の機会 故意ではない申告漏れや、過去の未申告所得が判明した場合、納税者には自主的に修正申告(Disclosure)を行う機会が与えられます。早期の自主申告はペナルティ率を大幅に減らす効果があり、場合によっては刑事訴追を免れることもあります。 2.3 罰金と追徴 脱税が認定されると、本来の納税額に加えて高額の罰金と利息が科されます。罰金率はケースによって異なりますが、最大で課税額の200%に達することがあります。海外資産の未申告や租税回避地(タックスヘイブン)を利用した場合は特に重くなります。 2.4 民事手続きと刑事手続き 多くの場合、HMRCはまず民事的に問題を解決しようとしますが、悪質・大規模な脱税では刑事訴追に踏み切ります。刑事訴追になると、裁判所での有罪判決により懲役刑や社会奉仕命令が科される可能性があります。 2.5 財産の差し押さえ 税金未納額が回収できない場合、HMRCは銀行口座の差し押さえ、車や不動産など資産の押収・競売を行う権限を持ちます。また、破産手続きや事業停止命令を出すことも可能です。 2.6 公表による社会的制裁 故意に脱税を行った個人や企業は、「故意の納税違反者(Deliberate Tax Defaulters)」としてHMRCのウェブサイトなどで公表されます。これは事業や個人の信用に大きなダメージを与え、事業継続が困難になることも珍しくありません。 Ⅲ. 実際の摘発事例 3.1 著名人の摘発例 3.2 企業の事例 スコットランドでは複数の企業が脱税で摘発され、税逃れ額と罰金額が公表されています。例として、ある日用品販売会社は約13万ポンドの脱税で約8万ポンドの罰金を科され、別の飲食業者は約30万ポンドの脱税で17万ポンド超の罰金を受けています。大規模な事例では約80万ポンドの脱税に対し69万ポンド以上の罰金が課されたケースもあります。 3.3 初の「防止義務違反」訴追 2017年の刑事財務法(Criminal Finances Act 2017)では、従業員や代理人が脱税を手助けした場合、その防止策を講じなかった企業も刑事責任を問われることになりました。ストックポートの会計事務所がこの法律下で初めて訴追され、裁判は2027年に予定されています。 Ⅳ. 最新動向 4.1 AIとビッグデータの活用 HMRCは「Connect」と呼ばれる高度なデータ分析システムを用いて、銀行取引、海外資産、ソーシャルメディア上の生活状況などを照合し、不自然な動きを検知しています。 4.2 高額所得者への監視強化 年収20万ポンド以上の高所得者に対する税務調査が増加傾向にあります。国際的な金融情報交換制度(CRS)を通じて、海外資産の把握も容易になっています。 4.3 …
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海外生活で気をつけたい:日本人女性が巻き込まれやすいストーカー被害とその背景 〜特にイギリス在住者への注意喚起〜
はじめに 海外生活は自由で刺激的です。新しい文化、言語、人との出会いは、人生を豊かにしてくれる貴重な体験になります。しかし、異なる文化背景に潜む危険にも目を向けることは、自分を守るために欠かせません。本記事では、特にイギリスに在住または留学を検討している若い日本人女性を対象に、「ストーカー的な行動を示す中年の独身男性との関わり」について注意喚起を行います。すべての人がそうだというわけではありませんが、一定数報告されている事例に基づいて構成しています。 なぜアジア人女性が狙われやすいのか? 1. ステレオタイプの影響 欧米社会において、アジア人女性はしばしば「おとなしく従順」「家庭的で尽くす」「性的に魅力的」などの固定観念を持たれることがあります。これは長年にわたるメディアやポルノの影響によるもので、現実の日本人女性とはかけ離れたイメージです。 こうした「幻想」が、孤独な中年男性のターゲットになりやすい背景の一つです。 2. 言語的・法的な弱さ 渡英したばかりの若い女性は、英語が堪能でなかったり、現地の法律や支援機関に対する知識が乏しかったりします。ストーカー行為を受けても、どこに相談すればよいのか分からず、泣き寝入りしてしまうケースも報告されています。 実際にあった事例 事例1:語学学校で出会った年上男性からの執拗な接触 ロンドンに留学していたAさん(20代前半)は、語学学校で出会った40代後半のイギリス人男性から、連絡先をしつこく聞かれました。断っても学校の外で待ち伏せされるなどエスカレート。SNSも特定され、毎日のようにメッセージが届くようになりました。最終的に学校側に相談し、警告してもらうことで距離を取ることができました。 事例2:アジア人女性への「フェティシズム」 アジア人女性に異常なほどの関心を示す「アジアン・フェティッシュ」と呼ばれる現象もあります。Bさん(大学院生)は、マッチングアプリで知り合った男性と何度か会った後、交際を断ると態度が豹変。無断で家の前に現れたり、職場にまで連絡されたりする事態に。警察に相談してようやく接近禁止令が出されました。 特に気をつけるべき人物の特徴 以下のような男性には注意が必要です(あくまで傾向であり、すべての人に当てはまるわけではありません): ストーカー行為の初期兆候 以下のような行動が見られたら、関係を断ち切るべきサインです。 被害に遭わないための対策 1. 自分の情報を簡単に教えない SNSでの公開範囲、タグ付け、居場所の共有には最新の注意を。特にイギリスの一部地域では、日本人女性の名前を検索して居場所を探し当てるケースもあります。 2. はっきり「No」と言う勇気を持つ 日本ではやんわり断る文化がありますが、イギリスでは明確に拒否しないと通じないことがあります。「NO」ははっきり言いましょう。 3. 相談先を把握しておく イギリスでは以下のような団体があります: また、警察(非緊急時は101)にも相談できます。 被害に遭ってしまったら 「こんなことで…」「自意識過剰かも」などと感じる必要は一切ありません。身の危険を感じたら、それは十分な理由です。 日本人女性としての心構え 異国の地では、「日本人だから」というだけで興味を持たれることも多いです。これはポジティブな出会いにもつながりますが、時にはその「興味」が歪んだ形であなたに向けられることもあります。 自己防衛のために以下の心構えを持ちましょう: おわりに 海外での生活は、自分を成長させてくれる貴重な時間です。その自由を奪われないためにも、相手を見抜く力と自己防衛の知識を持つことはとても大切です。一人でも多くの日本人女性が、安心して留学・就労・生活できるよう、ぜひこの情報を周りにも共有してください。
日本で学歴詐称が後を絶たない理由 —— イギリスでは「あり得ない」その違いとは
序章:なぜ日本では学歴詐称が繰り返されるのか? 近年、日本では政治家による「学歴詐称」や「経歴詐称」といったスキャンダルが度々報道されている。市議会議員から国会議員に至るまで、肩書や学歴を実際より誇張したり、存在しない学位を記載したりする事例が後を絶たない。市民からの信用が失墜し、結果的に辞職や落選に追い込まれるケースもある。 だが、このような事態は本当に「防げない」ものなのだろうか? 実は、同じ民主主義国家であるイギリスでは、こうした経歴詐称事件はほとんど見られない。なぜイギリスでは「あり得ない」のか? そこには、政治家に求められる透明性と、公的な候補者審査の仕組みの違いがある。 本稿では、イギリスにおける政治家の候補者選定や身辺調査の実態を紹介しつつ、日本の制度上の欠陥、そして今後どのような改善が求められるのかを考察する。 第1章:イギリスでは「まず身辺調査」が常識 候補者選定のプロセス イギリスでは、地方議会や国政選挙に立候補する際、政党の公認を得るには厳格な候補者審査を受けることが当たり前となっている。特に主要政党(保守党、労働党、自由民主党など)においては、立候補を希望する段階でまず「身辺調査(vetting)」が行われる。 この身辺調査は単なる形式的なものではなく、徹底している。以下のような内容が網羅的にチェックされる: この調査には、独立した調査機関や弁護士を用いるケースも多く、単なる「自己申告」ではなく裏付け資料の提出が求められる。 公認後も定期的な監査 イギリスの政党は、候補者を「一度通せば終わり」にはしない。議員として活動している間も、倫理コードや行動規範に基づいて行動しているかどうかが常に監視されている。定期的な倫理監査を実施し、問題があれば即時に党員資格停止や除名措置がとられる。 第2章:日本では「調べない」ことが前提? 自己申告のまま通ってしまう実態 日本の場合、地方議員や国政選挙に立候補する際、選挙管理委員会に提出する書類には経歴や学歴の記載項目があるが、その正確性を確認する仕組みはほとんど存在しない。基本的に「自己申告」であり、たとえ虚偽が含まれていたとしても、届け出自体が形式を満たしていれば通ってしまう。 さらに政党による公認も、あまり厳格ではないことが多い。特に地方レベルでは候補者が不足していることもあり、「人柄」や「地縁・血縁」を重視して候補者を立てるケースも多く、身辺調査は「一応確認しました」レベルで終わってしまうのが現実だ。 発覚するのは「週刊誌」から 学歴詐称や犯罪歴が発覚するのは、多くの場合、報道機関や週刊誌などによる調査報道からである。つまり、正式な審査機関ではなく「民間のメディア」が事実を暴くという構造が常態化している。これは逆に言えば、公的なチェック機能が制度として機能していないことを意味する。 第3章:なぜイギリスでは厳しく、日本では甘いのか? 背景にある「公人」という概念の違い イギリスでは、政治家は「public servant(公僕)」であり、私人とは明確に区別される存在だ。倫理的な規律や説明責任は当然のものとされ、身辺に不備がある者が公職に就くことは社会的に許されない。 一方、日本では「政治家=権力者」という旧来的なイメージが未だに根強い。選挙は「人気投票」として機能する面もあり、立候補のハードルを下げすぎた結果、「本人の意思が第一」で、検証は二の次になってしまっている。 政党内のガバナンス意識の差 イギリスの政党は、党としてのブランドや信頼性を非常に重視している。そのため、不適切な候補者が出れば政党全体の評価が下がるという危機感がある。一方、日本では、政党公認を得た候補が問題を起こしても、党自体の責任があいまいになりやすい構造がある。 第4章:日本に必要な制度改革とは? ① 公的な候補者審査機関の設置 まず、日本でも立候補者に対して基本的な身辺調査を行うための公的機関、または選挙管理委員会内に調査部門を設けるべきだ。候補者が提出する学歴や職歴について、証明書類の提出を義務化し、虚偽があった場合は立候補を取り消す仕組みが必要である。 ② 犯罪歴・税務歴の提出義務化 一定の重大な犯罪歴がある場合、立候補を制限する、あるいは有権者に明示する制度も検討すべきである。また、過去の税務申告や滞納状況についても、候補者としての倫理性を判断する指標になりうる。 ③ 政党に対する審査責任の義務化 政党が候補者を公認する際、身辺調査の実施を法的に義務づけ、その結果を公開するよう求めるルール作りが求められる。責任の所在を明確にし、調査を怠った政党にもペナルティが及ぶようにすることが重要だ。 第5章:透明性が政治不信を減らす 日本では近年、政治家による不祥事や汚職、説明責任の不履行などが続き、有権者の政治不信が高まっている。政治家の資質を選ぶ段階で、きちんとした情報と審査の仕組みが整っていなければ、有権者の判断も曖昧なものにならざるを得ない。 透明性と公正さが担保されて初めて、民主主義は健全に機能する。候補者の学歴詐称が「後から発覚する」のではなく、「最初から起こり得ない」社会をつくることが求められている。 結語:民主主義の「入口」を整えることの重要性 政治家になるということは、単なる職業選択ではない。公的資源を動かす権限を持つという意味で、極めて高い倫理性と信頼性が求められる存在だ。 イギリスではそれを「制度」として確保している。日本でもようやく、そうした「仕組みの不備」に向き合うときが来ているのではないか。 学歴詐称や犯罪歴隠蔽を「またか」と受け流すのではなく、それを制度の欠陥として捉え、再発防止のための仕組みづくりに社会全体が取り組むべきである。
イギリスにおける性犯罪者監視体制の現状
はじめに イギリスは性犯罪者に対する監視・管理体制を法制度として整備し、社会の安全確保を目的に長年取り組んできました。性犯罪者の再犯リスクをいかに低減させるかは、多くの国で課題ですが、イギリスは特に「Sex Offenders’ Register(性犯罪者登録制度)」を中心とした包括的な制度を有しています。 この記事では、イギリスにおける性犯罪者監視の現状、制度の仕組み、課題、そして今後の展望までを詳しく解説します。 性犯罪者登録制度(Sex Offenders’ Register) イギリスでは、一定の性犯罪で有罪判決を受けた者は、自動的に「性犯罪者登録制度」の対象となります。対象となるのは、児童への性的虐待、性暴力、児童ポルノ関連犯罪、公然わいせつなど幅広い犯罪行為です。 登録されると、次のような義務が課せられます。 登録期間は判決内容に応じて異なり、例えば30か月以上の実刑の場合は無期限登録、それ未満であれば5年から10年程度の登録義務が課せられます。 違反した場合、5年以下の懲役を科せられる可能性があり、この登録制度は非常に厳格に運用されています。 ViSOR と MAPPA:監視のインフラ 性犯罪者監視の基盤として、イギリスには「ViSOR」と「MAPPA」という2つの重要な枠組みがあります。 ViSOR(Violent and Sex Offender Register) ViSORは警察、保護観察所、刑務所など関係機関が性犯罪者と暴力犯罪者に関する情報を共有するためのデータベースです。イギリス国内での居住地移動、名前の変更などがあっても、このデータベースによって追跡可能です。 これにより、関係機関はどこに住んでいる性犯罪者なのか、どの程度の再犯リスクがあるのかなどを迅速に把握でき、監視・指導を効果的に行うことが可能です。 MAPPA(Multi-Agency Public Protection Arrangements) MAPPAは複数機関による公的保護措置を意味し、特に高リスクの性犯罪者や重大犯罪者に対して適用されます。警察、保護観察所、刑務所、地方自治体、社会福祉、医療機関などが共同で情報共有し、管理プランを策定します。 MAPPAは性犯罪者をリスクレベルに応じて3段階に分類します。 特にレベル3では、ケースカンファレンスが定期的に開催され、監視・保護措置の内容が厳格に議論されます。 SHPO や SRO などの特別命令 性犯罪者が出所後、特定の行動を取ることを制限する法的措置として「Sexual Harm Prevention Order(SHPO)」や「Sexual Risk Order(SRO)」があります。 これらは犯罪歴に基づき裁判所が発令する命令であり、以下のような内容が含まれます。 命令に違反した場合、刑事罰の対象になります。これにより性犯罪者の再犯を未然に防ぐ狙いがあります。 保護観察(Probation)による監視 刑務所を出所した性犯罪者の多くは、保護観察下に置かれます。イギリスの保護観察サービス(HMPPS)は全国に支部を置き、犯罪者の再社会化と再犯防止を目的に活動しています。 保護観察中の性犯罪者は、担当保護観察官による定期的な監視を受けます。監視の内容は次の通りです。 近年は「危険性の低い性犯罪者」への監視を緩和する方針も議論されていますが、依然として高リスク者への監視は厳格です。 最近の法改正と監視強化の動き 近年、イギリス政府は性犯罪者の監視体制を強化するため、いくつかの法改正を進めています。 特に重要な改正点は以下の通りです。 これにより、名前や住所を変更して監視網を逃れようとする試みを封じ、児童への接触機会を減らす仕組みが導入されました。 また、長期海外渡航についても、渡航予定の事前届け出が厳格化されています。これにより、国際的な監視連携の中で監視精度を高める狙いがあります。 イギリス社会の課題と批判 一方で、このような監視制度にはいくつかの課題や批判もあります。 まず、地域間の運用水準にばらつきがあること。MAPPAの運用は地方警察の予算や人員体制に依存するため、都市部と地方で「監視の精度」が異なる現状があります。 また、保護観察官の業務負担の増加が問題視されています。性犯罪者への監視強化により、担当者一人あたりの業務量が増し、十分な監視が行き届かないケースも発生しています。 …
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子どもを犯罪者にしないために──イギリス式プロファイリングが示す「承認欲求」と育児のバランス
はじめに:犯罪者に共通する「強すぎる承認欲求」 犯罪心理学の分野、とりわけイギリスで発展してきた「プロファイリング」は、犯罪者の行動や心理的特徴を分析し、捜査に役立てる手法として知られています。この手法によって得られた知見の中でも、非常に興味深い指摘があります。それは、凶悪な犯罪に手を染める人間の多くに共通する心理的特徴として、「強すぎる承認欲求」があるという点です。 「自分を認めてほしい」「注目されたい」「自分には価値があると証明したい」といった欲求が過剰になると、他人の境界を踏み越える行動にまで及ぶ可能性があります。これが、時として犯罪へとつながってしまうのです。 一見すると、この「承認欲求」はネガティブなものであるかのように聞こえます。しかし、すべての人間が持っている自然な感情でもあります。問題は、「どのようにその承認欲求が育まれたのか」、そして「その欲求がどう扱われてきたのか」にあります。 このテーマを子育ての視点から見てみると、非常に複雑でありながらも重要なメッセージが浮かび上がってきます。子どもの承認欲求をどう育てるか──それが、将来の犯罪傾向すら左右しかねないという現実です。 「甘やかす」と「放置」──どちらも危険な育児の落とし穴 子どもの承認欲求が異常に肥大化する原因には、しばしば極端な育児スタイルが関係しています。 甘やかし育児の危険性 まず一つ目が、「過保護」や「過干渉」と呼ばれる甘やかしのスタイルです。子どもの欲求や感情をすべて受け入れ、常に肯定し、失敗を避けるように先回りして行動する親のもとでは、子どもは「自分は特別な存在だ」「自分が中心であるべきだ」という認識を持ちやすくなります。 このような育てられ方をすると、子どもは現実の社会における“承認の壁”に直面したとき、強いストレスや怒りを感じるようになります。なぜなら、自分の思い通りに物事が進まないことに慣れていないからです。そして、「なぜ自分を評価しないのか」「なぜ注目されないのか」といった怒りや劣等感が内在化し、自己肯定感の不安定さへとつながっていきます。 プロファイリングの世界では、こうした背景を持つ人間が「目立ちたい」「自分を証明したい」という思いから、承認を得る手段として過激な行動──時には犯罪──に走るケースが指摘されています。 放置型育児の落とし穴 もう一つの極端なスタイルが「放任」や「ネグレクト」です。子どもの存在を無視したり、関心を持たなかったり、必要な愛情や承認を与えなかった場合、子どもは「自分には価値がない」と感じるようになります。 しかし、ここで重要なのは、放置された子どももまた、非常に強い承認欲求を持つようになるという点です。なぜなら、彼らは「誰かに認められたい」という飢えのような気持ちを常に抱えて生きていくからです。そしてその欠乏感は、常に満たされないまま大人になり、ある種の“承認への渇望”として人格に染みついてしまうのです。 このような育ち方をした人間もまた、他者からの評価や注目を手に入れるために、不健全な手段を選びがちです。それが虚言癖であったり、過度な自己演出であったり、最悪の場合は目立つための違法行為であることも少なくありません。 バランスこそが鍵──「適切な距離感」と「健全な承認の与え方」 では、どうすれば子どもを将来犯罪者にしないような育て方ができるのでしょうか。答えはシンプルでありながら、実践するのが難しい概念にあります。それが、**「バランス」**です。 過干渉でもなく、無関心でもない 親として大切なのは、子どもの存在や努力をきちんと認めつつも、必要なルールや現実の厳しさを教えることです。つまり、「あなたは大切な存在だ」と伝えると同時に、「すべてが思い通りにいくわけではない」という事実も教えることです。 たとえば、 といった接し方が、健全な承認欲求の育成につながります。 「条件付きの愛」と「無条件の愛」のバランス 心理学の世界では、子どもが最も健全に育つのは「条件付きの愛」と「無条件の愛」のバランスが取れているときだと言われています。 「条件付きの愛」は、行動に対する評価。「頑張ったから偉い」「ルールを守ったから褒める」といった、社会性の育成に不可欠なフィードバックです。一方「無条件の愛」は、存在そのものを認めるもの。「あなたがいてくれて嬉しい」「何があっても味方だよ」といった安心感を与える言葉です。 この二つが極端にどちらかに偏ると、承認欲求は不安定になり、極端な方向へ肥大化することがあります。 最後に:未来をつくるのは家庭の中の“微細な対話” イギリス式プロファイリングが示すように、犯罪者の心理に共通する要素には、家庭環境での承認の与えられ方が大きく関わっていることが多いのです。 子どもの承認欲求は、本来とても自然な感情です。それが暴走し、社会と軋轢を生むものへと変わってしまうかどうかは、親の関わり方次第で大きく左右されます。 現代は育児に対して多くの価値観が存在し、何が正しいのか分からなくなることもあるでしょう。ですが、絶対に忘れてはいけないのは、子どもは「見てくれている」「認めてくれている」と感じたときに、自信と自制心を同時に育てるということです。 「甘やかす」でも「突き放す」でもない。“見守る”という姿勢の中にこそ、真に健全な承認が育つ土壌があります。 それは、特別な言葉でもなく、高価なおもちゃでもなく、日々の「小さな声かけ」や「表情」「リアクション」の中に宿るもの。犯罪を未然に防ぐ最も根本的な方法は、実はそんな家庭の“微細な対話”の中にあるのかもしれません。
【特集】ルーシー・レットビー事件とは何だったのか?
英国を震撼させた看護師による連続乳児殺害の全貌 ■ はじめに 2015年から2016年にかけて、イギリス中部チェスターにある病院で不審な乳児死亡が相次ぎました。その中心にいたのが、新生児集中治療室に勤務していた看護師、ルーシー・レットビー。本記事では、事件の発覚から裁判、再審請求に至るまでの経緯をわかりやすくまとめます。 ■ 第1章:事件の発端 ~不審な死の連鎖~ ルーシー・レットビーは2012年からチェスター伯爵夫人病院で勤務を開始。特に重症の新生児をケアする集中治療ユニットで働いていました。 2015年以降、彼女が勤務するユニットで乳児の死亡率が異常に高まる現象が発生。通常の2倍以上の頻度で乳児が急死したり、深刻な容態悪化を起こしたりしていました。 当初は「医療事故」や「偶発的な病状悪化」とされていましたが、ある医師が複数の事例に共通してレットビーが関与していたことに気づき、病院上層部に警告を提出。しかしこの警告は黙殺され、逆に医師が配置換えになるという逆転現象すら起きていたのです。 ■ 第2章:捜査と逮捕 ~ついに明らかになる異常性~ 2018年、警察が動き出します。レットビーの勤務記録や病院のモニターデータ、投薬履歴などを精査した結果、彼女が担当していたケースに不自然なインスリン投与や空気注入による死亡が多数確認されました。 2018年と2019年に2度逮捕され、最終的に2020年に7件の殺人罪と10件以上の殺人未遂罪で起訴されました。彼女の自宅からは、「私はやった。私は悪い人間。私は地獄に行く」と書かれたメモも発見されています。 ■ 第3章:裁判と有罪判決 ~揺れる医療と司法の境界~ 裁判は2022年から始まり、約10か月にわたる審理の末、2023年8月に評決が下されます。 陪審はルーシー・レットビーを、7人の新生児を殺害、6人に対する殺人未遂の罪で有罪と判断しました。 裁判官は「これは英国史上もっとも悪質な医療従事者による犯罪」とし、仮釈放のない終身刑、いわゆる“whole-life order”(生涯服役)を言い渡しました。これは極めて稀な量刑で、重大凶悪犯罪者のみに適用されるものです。 ■ 第4章:再審請求と医学的疑義 ~新たな波紋~ 2024年に入ってから、海外を含む14名の医療専門家チームが独自に調査を実施。彼らは「死因の中には自然死や医療処置ミスと明確に区別できないものが複数含まれている」と報告しました。 これにより、レットビーの弁護団は「重大な誤審の可能性がある」として、刑事事件再審査委員会(CCRC)に再審請求を提出しました。2025年現在、再審開始の可否についての審議が進行中です。 ■ 第5章:病院の責任 ~組織の沈黙が招いた惨劇~ 本件では、レットビー個人の責任だけでなく、病院側の対応の遅れや内部告発の無視も問題視されています。 2023年から2025年にかけて、病院の元幹部3人が逮捕され、病院組織自体が「重過失致死」で刑事責任を問われる可能性が出ています。 また、英国政府主導で「医療事故や内部告発の対応体制の見直し」「医療従事者の精神的健康へのサポート」など、制度改革の議論が始まっています。 ■ 第6章:何が問われているのか? この事件は単なる“連続殺人事件”ではなく、次のような問題を社会に突きつけています: ■ 結語:再発を防ぐために ルーシー・レットビー事件は、英国医療史において最大級の信頼失墜をもたらしました。そして今も、「彼女は本当に犯人だったのか?」「病院はなぜ止められなかったのか?」という疑問は尾を引き続けています。 裁判は一応の決着を見ましたが、真相のすべてが明らかになったとは限りません。この事件を風化させず、医療と司法、組織運営のあり方を根本から見直す契機にしていく必要があるでしょう。 ルーシー・レットビー事件と報道の“笑顔”:メディアに潜む人種バイアスを考える