
魅力
2000年に公開されたイギリス発のアニメーション映画 「Chicken Run」 は、ストップモーション・アニメーションの金字塔と呼ばれる作品です。
制作は「ウォレスとグルミット」で知られる Aardman Animations。クレイ(粘土)を使った緻密なストップモーションは、キャラクターの表情から背景の細部まで、職人技とも言える映像美を実現しています。
この作品の魅力は大きく分けて次の点にあります。
- 温かみと迫力を両立させた映像表現
ストップモーション特有の手触り感と滑らかな動きが融合し、デジタルアニメーションでは得られない独特の温もりを観客に伝えます。 - 寓話的で普遍的なテーマ
「自由を求める意志」「抑圧からの解放」「仲間との協力」といったテーマを、鶏たちの脱走劇を通して寓話的に描いています。子どもは冒険物語として楽しめ、大人は社会風刺や人間ドラマとして読み解くことができます。 - ユーモアと緊張感のバランス
コミカルなキャラクター同士の掛け合いや失敗の連続で笑いを誘いつつ、食肉加工というシリアスな脅威を背景に緊張感を保つ構成が巧みです。 - 世界的成功
公開当時、ストップモーション映画として歴代最高の興行収入を記録し、その後のアニメーション映画に大きな影響を与えました。
ストーリーライン
舞台はイングランド北部の農場。
ここで暮らす鶏たちは、卵を産むことを強いられ、卵を産めなくなった仲間は処分されてしまいます。雌鶏の ジンジャー(Ginger) は仲間を率いて何度も脱走を試みますが、いつも失敗に終わっていました。
そんなある日、アメリカからやってきた雄鶏 ロッキー(Rocky Rhodes) が偶然農場に現れます。彼が“飛べる鶏”だと信じた仲間たちは、ロッキーに空を飛ぶ方法を教えてもらおうとします。しかし、農場主のトゥイーディ夫妻は卵事業をやめ、鶏たちを「チキンパイ」に加工する恐ろしい計画を進めていました。
時間が迫る中、ジンジャーは仲間と共に大胆な計画を実行します。それは、鶏たち自身で飛行機を作り、空から農場を脱出するというもの。果たして彼らは自由を手にできるのか――。
制作背景と作者紹介
- スタジオ
制作はイギリスの Aardman Animations。クレイアニメーションのパイオニアとして知られ、「ウォレスとグルミット」や「ひつじのショーン」を生み出した名門です。 - 監督
ニック・パーク(Nick Park) と ピーター・ロード(Peter Lord) が共同で監督を務めました。特にパークは「ウォレスとグルミット」でアカデミー賞を受賞しており、アードマンの代表的存在です。 - 脚本
アメリカの脚本家 カリー・カークパトリック(Karey Kirkpatrick) が執筆を担当。イギリス的ユーモアとアメリカ的テンポの良さを両立させた物語になっています。 - 音楽
映画音楽は ジョン・パウエル(John Powell) と ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ(Harry Gregson-Williams) が担当。軽快さと緊張感を兼ね備えたサウンドで物語を彩りました。 - 声の出演(英語版)
- ジンジャー:Julia Sawalha
- ロッキー:Mel Gibson
- Mrs. Tweedy:Miranda Richardson
- Fowler:Benjamin Whitrow
- Babs:Jane Horrocks
- Bunty:Imelda Staunton
まとめ
「Chicken Run」は、子どもから大人まで楽しめる“脱走劇コメディ”でありながら、自由や協力の大切さを訴える寓話的作品です。20年以上経った今でも色あせない映像美とテーマ性を持ち、続編の制作も行われるなど、アニメーション史に残る名作といえるでしょう。
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