トランプ大統領と「戦争ビジネス」──イギリスから見た失望の視線

アメリカ大統領が「戦争を終わらせる」と言いながら、実際には武器供与を続ける姿は、世界の多くの人々に深い失望を与えている。その中でもイギリス国民の反応は特に複雑だ。歴史的に米英関係は「特別な関係」と呼ばれ、外交・安全保障において緊密な連携を取ってきた。しかし今回のガザ戦争をめぐるトランプ大統領の対応は、イギリス人の期待を裏切り、彼に対する評価を大きく変えてしまった。


「戦争を止める」と語ったトランプの言葉

トランプ大統領は再登場後、度々「ガザの戦争をすぐに終わらせる」と宣言してきた。2025年8月には「3週間以内に戦争を終わらせる」と強調し、国際社会の注目を集めた。しかし、その言葉には実効性が伴わなかった。攻撃は続き、死者数は増え、人道危機は悪化し続けている。

イギリスのメディアは、こうした発言を「外交的なポーズ」に過ぎないと冷ややかに報じた。彼の「停戦の仲介者」としての姿勢は、現実の行動と矛盾していたからである。


武器供与の継続という現実

トランプ政権は口では戦争終結を訴えながらも、政策面では逆方向に進んでいた。2025年2月、バイデン前政権が停止していた2,000ポンド爆弾の対イスラエル供与を再開。理由は「既に代金が支払われているから」というものだった。また、同時期には2.5億ドルを超える規模の武器販売を承認し、米国の軍需産業を潤わせた。

この動きは、単なる「契約履行」以上の意味を持つ。すなわち、アメリカの指導者が「人道的責任」よりも「経済的利益」を優先していることを世界に示す結果となったのである。


イギリスに広がる失望感

イギリス人にとって、この矛盾は受け入れがたいものだった。トランプ大統領の言葉に一定の期待を寄せていた人々も多かったからだ。特に、アメリカが本気で武器供与を止めれば、イスラエルの軍事行動を短期間で抑制できるだろうと考える専門家は少なくない。実際、過去にもアメリカが供与を一時停止しただけでイスラエルの作戦が早期に終結した例がある。

だが、今回トランプはそのカードを切らなかった。むしろ「支払済みだから仕方ない」という経済論理を優先させ、武器の流れを止めるどころか拡大すらした。これにより「トランプは他の大統領と同じだ」という失望感がイギリス国内で強まっている。


「普通の男」に過ぎなかったという認識

イギリスの論調でよく見られるのは、トランプが「結局は普通の政治家であり、戦争を利用して利益を得ようとする男だった」という評価だ。彼は就任当初から「反エスタブリッシュメント」「既存政治からの脱却」を強調してきた。しかし今回の姿勢は、そのイメージを大きく損なった。

イギリスでは「アメリカ大統領は誰がなっても結局は軍需産業の利益を優先する」という冷めた見方が広がりつつある。トランプも例外ではなく、国際社会に対して「戦争を止める」と語りながら、その裏で国内経済と政治的利益を守るために武器供与を続けているに過ぎないというのだ。


パレスチナ・アクションと英国政府の二面性

この失望感は、イギリス国内の抗議運動とも結びついている。たとえば「Palestine Action」は、イスラエル軍需産業と関わる企業を標的にした直接行動を展開している。彼らは「イギリスがイスラエルの戦争に加担している」と批判しており、トランプ政権の武器供与継続はその主張を補強する格好となった。

一方で、英国政府はパレスチナへの人道援助を増額している。2025年にはガザへの緊急支援として数千万ポンドを拠出した。しかし同時にイスラエルへの武器輸出ライセンスも継続しており、その矛盾はイギリス国民の間でも批判を呼んでいる。

つまり、アメリカもイギリスも「人道支援」と「軍需協力」を並行して行っており、その二面性がますます浮き彫りになっているのだ。


米英関係と国際的信用の低下

トランプ政権の武器供与継続は、イギリスにとっても間接的な影響を及ぼしている。米英は長年、軍需・諜報・外交面で密接なパートナーシップを築いてきた。そのためアメリカが「戦争を終わらせる」と言いながら武器を送り続ける姿勢は、イギリスの国際的信用にも影響を与えかねない。

イギリス人にとって、これは「自分たちが巻き込まれている」という感覚を強める。自国政府がいくら人道支援を強調しても、アメリカとの連携によって「戦争を助長している側」と見なされるリスクが高まるからである。


結論:トランプへの幻想の崩壊

結局のところ、トランプ大統領は「戦争を止める」と豪語したが、実際には米軍需産業の利益を守り、既存の構造を温存したに過ぎなかった。イギリスから見れば、それは「普通の政治家」以上でも以下でもない。特別なリーダーシップを期待した人々にとって、その現実は冷徹で失望を伴うものだった。

イギリス国民が今回学んだのは、アメリカ大統領が誰であれ「戦争を理由に自国へ利益をもたらす」という構図は変わらないということだ。トランプも、オバマも、バイデンも、結局は同じ回路で動いている。ガザの惨状を前に、イギリス人はその事実を痛感し、よりシニカルな視線でアメリカの言動を見つめるようになっている。

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