イギリスに「お歳暮」や「お中元」のような文化はあるのか?

〜贈答文化から見える日英の価値観の違い〜

はじめに

日本では年末や夏になると、「お歳暮」や「お中元」といった贈答文化が根付いています。これらは単なるギフトではなく、「お世話になりました」「これからもよろしくお願いします」といった人間関係を円滑に保つための社会的な儀礼とも言えるでしょう。

では、このような季節ごとの感謝の贈り物の文化は、海の向こう・イギリスにもあるのでしょうか?本記事では、イギリスにおける贈答習慣や文化の違いを掘り下げ、日本との比較を通じてその背景や意味を探ります。


イギリスにおける「お歳暮」的文化の位置づけ

クリスマスギフトという「感謝」の文化

イギリスに「お歳暮」や「お中元」とまったく同じ形式の文化はありません。しかし、最も近いものとして挙げられるのがクリスマスギフトの習慣です。これは年末に行われる、感謝と祝福の気持ちを込めた贈り物であり、日本のお歳暮と精神的な意味合いで通じる部分があります。

例えば、以下のような相手に贈り物をするのが一般的です:

  • 家族や親しい友人
  • 同僚や上司
  • 郵便配達員やゴミ収集員など公共サービス従事者
  • 子どもの先生
  • ホームパーティーのホスト(ホストギフト)

中にはちょっとしたギフトに加えて、現金のチップを添えるケースもあり、特にサービス業の人に対する感謝として根付いています。

贈り物の例

イギリスで一般的に贈られるものには以下のようなものがあります:

  • 高級チョコレート(Hotel Chocolatなど)
  • ワインやクラフトビール
  • 紅茶のギフトセット(Fortnum & Mason, Twinings)
  • ギフトバスケット(Hamper)
  • 手書きのクリスマスカード

Hamperは特に人気で、チーズ、クラッカー、ビスケット、ジャム、紅茶などの詰め合わせで構成され、感謝の気持ちとともに「実用性」も兼ね備えた贈り物です。


「お中元」に近い文化はあるのか?

日本のお中元は夏の時期に贈るもので、これにも感謝の意味が込められていますが、イギリスにはこの「サマーギフト」に相当する文化はありません。

ただし、年間を通じて贈り物をする機会は少なくなく、たとえば以下のような場面で贈答が行われます:

  • 誕生日
  • 昇進祝い
  • 退職祝い
  • 引っ越し(新居祝い)
  • お見舞いやお礼の「ちょっとしたギフト」

このように、イギリスでは贈り物のタイミングが季節ではなく「個人の節目」や「イベント」に基づいている点が特徴です。


ビジネスにおける贈り物事情:控えめなイギリス式

日本ではビジネスの場でもお歳暮・お中元が慣習として強く根付いており、取引先や顧客、上司に対して贈答品を用意するのが一般的です。

一方、イギリスのビジネスシーンでは、贈答はごく控えめです。公務員や大企業では**「贈答の受け取り禁止規定」**を設けているところも多く、利害関係を疑われる行為は極力避けられています。

とはいえ、以下のような控えめな形での贈り物はあります:

  • 小瓶のワイン
  • チョコレート
  • メッセージカード
  • オフィス全体への差し入れ(ドーナツやお菓子など)

この「控えめさ」がイギリスらしさとも言えます。形式にとらわれず、**「気持ち」や「心配り」**を大切にするスタイルです。


メッセージ文化と「Season’s Greetings」

贈り物と同時に大切にされているのが、メッセージカードを贈る習慣です。イギリス人は、口頭での感謝以上に、手書きのカードを重視する傾向があります。

特にクリスマス時期には「Season’s Greetings」「Merry Christmas」「Warmest Wishes」といった心温まる言葉をカードに添えるのが一般的です。これは、モノよりも**「気持ちを伝える文化」**が深く根付いている証でもあります。


日本とイギリスの贈答文化の本質的な違い

比較項目日本(お歳暮・お中元)イギリス(クリスマスギフト等)
贈る時期年末・夏(季節行事)年末(クリスマス)
贈る目的礼儀・関係維持感謝・祝福
ビジネスでの利用非常に一般的制限あり・控えめ
贈るものの傾向定番商品・高級品も多い実用的・気軽なもの
メッセージ添えることもあるが形式的手書きカードが主役になることも

まとめ:形式よりも心を重んじるイギリス流

イギリスには、日本のお歳暮やお中元のように制度化された贈答文化はありませんが、「人に感謝の気持ちを伝える」ことへの重視は、むしろ日本以上に自然で日常的です。

季節行事ではなく、個人との関係性や気遣いのタイミングに重きを置くイギリス流の贈答文化は、「モノより心」「形式より実用性」を大切にする国民性の表れとも言えるでしょう。

日本からイギリスにギフトを送る場合でも、形式ばらずに、紅茶や和菓子、シンプルで美しい包装などを心を込めて贈ると、きっと喜ばれるはずです。

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