「普通の白人家族が見えない」と語った英国議員発言に揺れる英国社会――在英日本人が感じた“居場所”の揺らぎ

ロンドンの街角でアジア系、黒人、白人など多様な人々が歩く様子を描いたイラスト。背景にはビッグ・ベンとユニオンジャックが見える。

(英国在住・日本人移民/ロンドン郊外在住の編集者として、現地で暮らす実感をもとに書いています)

発言の内容 ― 「広告に黒人・アジア人ばかり見える」と語った議員

2025年10月、英国の野党「Reform UK」所属議員、Sarah Pochin 氏がテレビの電話参加型コーナーで次のように発言したと報じられました。

“It drives me mad when I see adverts full of black people, full of Asian people… It doesn’t reflect our society and I feel that your average white person, average white family is … not represented any more.”

同氏は、広告業界が多様性・公平性・包摂(DEI)に偏りすぎており、「国全体の姿を反映していない」といった趣旨も述べたとされています。

反応の概要

この発言に対し、政府与党・野党双方から「人種差別的だ」との批判が相次ぎました。一方で、党内からは「言葉遣いは不適切だが、意図的な差別ではない」と擁護する声も上がり、議論は「意図」か「影響」かという点に及びました。

英国在住日本人の証言:「自分たちは“そこに含まれていない”という感覚」

以下は、英国在住の日本人数名から聞いた日常感覚です(仮名・要旨)。

証言A(ロンドン観光業・30代男性)
「最近、テレビやバス広告でアジア系や黒人のモデルをよく見ますが、『広告に出る=社会に含まれている』とまでは感じられていません。今回の発言を聞き、白人優位の基準が前提になっているのでは、と戸惑いました。」

証言B(バーミンガム郊外・40代女性・教育関連)
「子どもの学校は多様ですが、保護者の議論では“白人がどう感じるか”が基準になりがちです。『白人の普通の家族が代表されていない』という言い回しを耳にして、『ではアジア人や黒人は代表されているのか?』と疑問に思いました。」

なぜこの発言が日本人移民にとって響くのか

  • 表象と帰属感: 広告やメディアで自分たちが描かれるかどうかは、「この社会に含まれている」という実感に直結します。「黒人・アジア人が多すぎる」という語りは、当事者に“白人の普通が基準”というメッセージとして届きかねません。
  • “普通”の再提示: “average white person / family” という表現は、無意識の基準設定を再び可視化します。これは「白人でない人が見えているのは不自然」という含意を帯びうるため、敏感に受け止められます。
  • 現在形の課題: 差別撤廃の制度は存在しても、日常のマイクロアグレッションや排除は残ります。公共空間での言説が強化学習のように日常へ波及することが問題です。

企業・広告の現実と対比して考える

近年、英国の広告は多様な人々を登場させる傾向が強まりました。これは、人種やバックグラウンドにかかわらず顧客層を可視化しようとする市場側の動きでもあります。したがって、「多すぎる」の一言で切ってしまうと、実態や背景の検証を欠きやすくなります。

日本人移民としてできること ― 日常からの働きかけ

  1. 体験の言語化と共有: 広告・メディアでの“見え方”や学校・職場での出来事を記録し、コミュニティで共有する。
  2. 地域・学校・職場で視点を添える: 多様性の議題が出たとき、「誰が普通とされ、誰の声が抜け落ちているか」を具体例で提示する。
  3. メディア・広告へのフィードバック: 良い表現には肯定的な声を、問題があれば丁寧な指摘を。沈黙は同意と受け取られがちです。
  4. 制度・相談窓口の活用: 苦情申立や相談ルート(放送局、規制当局、学校・職場のポリシーなど)を把握し、必要時に使う。

まとめ ― 誰が「普通」を決めるのか

Sarah Pochin 氏の発言は、単なる失言以上に、「見える/見えない」を巡る基準の争いを映し出しました。私たち日本人移民にとっては、日常の安心と尊厳に直結するテーマです。英国が掲げてきた「差別を許さない」という原則が実際に機能しているかを見直しつつ、多様な“普通”が共存する社会に向け、静かで確かな声を重ねていきたいと思います。

Reform UKが政権を握った場合に起こりえること

個人的な意見を言わせてもらうと、もし Sarah Pochin のような党員が所属する Reform UK が政権を取ることになれば、イギリスは人種差別が公認された国となり、レストランやパブの入口に「アジア人・黒人お断り」といったサインが掲げられたり、単にアジア人や黒人であるという理由だけで職を解雇されたり、学校ではアジア人や黒人の子どもが確実にいじめられる――そのような世界になることは避けられないと思います。
誤解してほしくないのは、これは「イギリスという国だから」という意味ではないという点です。
人間は動物と同じように自分たちのテリトリーを守る本能が備わっており、「肌の色が違えば考え方も違う」という前提が根底にあります。だからこそ、「プレデター(他の人種)」を排除しようとする人たちは、どの国にも存在します。
つまり、ひとつの国だけが変わっても、世界全体が変わらなければ意味がないのです。

スターマー政権には、少なくとも 2029 年まで確実に継続してもらい、その間に日本へ戻るのか、あるいは別の国へ移住するのかをじっくり考え、準備を進めていきたいと考えています。


注記: 本稿は一般情報の提供を目的とし、特定の政党・候補・投票行動を支持・勧奨するものではありません。個別の案件は状況により異なります。必要に応じて専門機関にご相談ください。

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