イギリス国籍83%の現実:ユニバーサルクレジットは現代の「奴隷制度」か?

はじめに:移民が奪うのは「仕事」か「言い訳」か?

「移民が我々の仕事を奪っている」。
これは英国における保守的な議論の中で、何十年にもわたって繰り返されてきたセリフである。2016年のBrexit国民投票においても、この言葉は強い感情を呼び起こし、結果として英国はEUから離脱するという歴史的な選択をした。

だが、2020年代に入ってからの統計は奇妙な事実を突きつけている。

「ユニバーサルクレジット受給者の約83%がイギリス国籍者である。」

この数字をどう捉えるかで、我々の社会観・国家観は大きく問われる。イギリス人が嘆く「移民が福祉に寄生している」という通説と、現実との間には、深くて暗いギャップがあるのだ。

そしてそのギャップの先に見えてくるのは、かつてイギリスが築き上げ、誇りすら持っていた「奴隷制度」に極めて似た構造ではないか、という問いである。

ユニバーサルクレジットとは何か?

ユニバーサルクレジット(Universal Credit)は、2013年に導入されたイギリスの社会保障制度である。失業手当、住宅手当、児童税額控除など複数の給付を一本化した制度で、「働いても貧しい人々(ワーキングプア)」を支える仕組みとして設計された。

導入当初は“福祉の簡素化”と“働く意欲の向上”を目的としていたが、実際には給付の遅延、生活困窮、精神的ストレスの増加など、様々な問題が指摘されている。

興味深いのは、この制度の受給者の大多数が、いわゆる“イギリス人”だという事実である。つまり、「働かずに福祉に依存している」のは、他ならぬ英国民自身であり、それが制度の前提にもなっているということである。

「演技」だった反移民感情?

では、移民に対する憎悪の感情は、単なる誤解だったのだろうか?

否、むしろこれは“巧妙な演出”だったのではないかという疑念が浮かんでくる。

移民を敵視することで、国民の怒りを外部に向け、実はその裏側で国家は「新たな労働力供給源」として彼らを利用する。過酷な環境、低賃金、長時間労働に耐え、税金を納める移民たちは、結果としてイギリス人の福祉財源を支える“構造的な納税機械”となっている。

これはまるで、かつての大英帝国が築いた植民地制度のようではないか。

支配者が現地人に労働を課し、自らはその収益を享受する。違うのは、当時は「肌の色」と「地理的支配」が分断を生み出していたのに対し、現代では「ナショナリズム」と「制度設計」が新たな分断を創出している点だ。

搾取の構造:税金という“贈与”

イギリスの労働市場は、実のところ、移民がいなければ機能しない。

NHS(国民保健サービス)の介護職、建設現場、農業、清掃業、倉庫労働、運送業——これらの多くは、移民が主要な労働力となっている。

そして彼らは、その低賃金労働から真面目に税金を納める。その税金が福祉制度を通じて、何も生産活動に関与しない一部のイギリス人の生活を支えている。

つまり、移民が働き、イギリス人が休む。移民が納め、イギリス人が受け取る。

これは偶然だろうか?
あるいは、現代イギリス社会が無意識的に構築した“新たな搾取システム”なのだろうか?

かつての奴隷制度との相似

ここで、18〜19世紀の奴隷制度に思いを馳せてみよう。
当時の大英帝国は、アフリカから人々を奴隷としてアメリカ大陸へ送り、そこで彼らを強制労働に従事させた。イギリス本国はその成果物(砂糖、綿、タバコなど)を輸入し、経済的繁栄を築いた。

現代は、移民たちが倉庫で商品をパッキングし、デリバリードライバーとしてAmazonの商品を届ける。農場では果物を摘み、介護施設では高齢者を抱きかかえる。

確かに鎖はない。ムチもない。だが、労働環境は決して自由とは言えず、彼らの社会的な選択肢も限られている。

一方、その結果として得られた「富」は、ユニバーサルクレジットなどの形で国民の多数派へと還流していく。

この構造は、奴隷制度とどれほど違うのだろうか?

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