
近年、イギリス国内で「見覚えのない違反金の催促状」が届くという被害が急増しています。これらの通知は、実際には違反していない交通違反や路上駐車違反に関して、罰金の支払いを求めるものです。中には本物の行政機関を装った巧妙な詐欺も含まれており、無視するわけにもいかず、多くの人が困惑しています。
この記事では、そうした催促状が届いた場合にどのように対応すべきか、そして本物と偽物の見分け方、万が一詐欺であった場合の対処法など、実践的な情報を詳しく解説します。
■ なぜ今、イギリスで見覚えのない違反金通知が増えているのか?
◎ コロナ後の社会変化と行政システムの自動化
パンデミック後、イギリスでは多くの公共サービスがオンライン化・自動化され、駐車違反や交通違反の通知もほとんどが郵送または電子メールで届くようになりました。この仕組みの隙を突いて、詐欺集団が本物そっくりの違反通知を作成し、無差別に人々へ送り付けるようになったのです。
また、都市部ではナンバープレート読み取りカメラ(ANPR)の導入により、実際に車がその場にいなくても、誤認で違反通知が送られるケースも報告されています。
■ よくある偽の違反金通知の特徴
以下のような特徴がある場合、詐欺の可能性が高いと考えられます。
- 文面に不自然な英語やスペルミスがある
- 差出人が曖昧(例:”UK Enforcement Agency”など存在しない機関名)
- 罰金額が不自然に高額(£150〜£500など)
- 急かすような言葉づかい(例:”IMMEDIATE ACTION REQUIRED”)
- 支払い先が個人口座または暗号通貨
- 連絡先がGmailやHotmailなどフリーメール
■ 実際に届いた場合の正しい対処法
① 冷静に通知内容を確認する
まず、通知に記載されている以下の情報をチェックしてください:
- 事件番号(Penalty Charge Notice No.やReference No.)
- 違反日・時間・場所の詳細
- 写真などの証拠があるか
- 発行元の機関名(例:TfL、Local Council、DVLAなど)
信頼できる行政機関からであれば、通常は公式ロゴや公式ウェブサイトのURLが記載されています。
② 発行元の公式サイトにアクセスし、正当性を確認
通知に記載されている違反番号を用いて、発行元(たとえばTfLやローカルカウンシル)の公式サイトから照会することができます。正規のケースであれば、オンラインで罰金の詳細や証拠写真を確認できるはずです。
③ 身に覚えがなければ、公式に異議申し立てを行う
「その場所に行っていない」「自分の車ではない」「ナンバーが間違っている」など、誤送付が疑われる場合は、速やかに異議申し立て(appeal)を行ってください。通常、罰金通知には以下のような申立方法が記載されています。
- オンライン異議申立てフォーム
- 郵送による文書申請
- 指定されたカウンシルへの電話連絡
記録として残すためにも、できるだけ文書でのやり取りをおすすめします。
■ 詐欺と判明した場合はどこに連絡すればいいのか?
◎ 詐欺の疑いがある場合の連絡先一覧
連絡先 | 内容 |
---|---|
Action Fraud(https://www.actionfraud.police.uk) | イギリス全国の詐欺通報窓口。オンライン・電話両方可。 |
Citizens Advice Bureau(https://www.citizensadvice.org.uk) | 法的アドバイス、対応手順、文書作成支援などを無料提供。 |
Local Trading Standards Office | 地域ごとの消費者保護担当部署。通知の真偽確認に協力。 |
警察(非緊急番号:101) | 詐欺として立件する必要がある場合に通報。 |
詐欺の通知を受け取った場合は、写真を撮るかスキャンし、証拠として保管した上で通報するようにしましょう。
■ 絶対にやってはいけないこと
- すぐに支払ってしまう
- 怪しい連絡先に電話をかける
- メールのリンクをクリックして個人情報を入力する
- 他人に相談せず独断で対応する
詐欺グループは、個人情報を抜き取って銀行詐欺やなりすまし犯罪に利用するケースがあります。慎重に、そして冷静に対応することが重要です。
■ 本物だった場合でも焦らないで
通知が本物だった場合でも、いきなり罰金を取られるわけではありません。ほとんどのケースでは、14〜28日以内に早期支払いをすれば割引されるシステム(例:£130 → £65)があります。また、初回の異議申し立てで取り消される可能性も少なくありません。
■ 実例:偽通知を受け取った日本人居住者の体験談
ロンドン在住のYさん(40代・会社員)は、2024年秋に「未払いの駐車違反金 £180 の請求書」を受け取りました。
「通知には“London Enforcement Unit”と書かれていましたが、そんな組織聞いたこともなくて。住所も合っていたし車も持っていたので最初は信じかけましたが、ナンバーも違ったので不審に思って警察に通報しました。」
最終的にこれは偽造通知と判明し、Action Fraud によって記録されました。Yさんの冷静な対応が被害を防いだ好例です。
■ まとめ:届いても慌てず、まずは確認から
- 通知の内容と出所を確認
- オンラインで正式な照会をする
- 身に覚えがなければ異議申し立て
- 詐欺の可能性があれば通報
- 絶対にその場で支払わない
イギリスで生活する中で、見知らぬ罰金通知が届くと戸惑うのは当然です。しかし、落ち着いて情報を精査し、適切な対応を取れば、詐欺や誤認通知に巻き込まれるリスクを大きく減らすことができます。
コメント