イギリスで大型訴訟 TUI手配のカーボベルデ旅行で1700人超が体調不良、集団訴訟の詳細と今後

イギリスで大型訴訟に発展 TUI手配のカーボベルデ旅行で1700人超が体調不良、少なくとも8人死亡 何が起きたのか、訴えの中身と今後の行方

イギリスで、大手旅行会社TUIを相手取る大規模訴訟が大きな注目を集めている。発端は、西アフリカ沖の人気リゾート地カーボベルデへのパッケージ旅行に参加した英国人旅行者の間で、深刻な胃腸系の体調不良が相次いだことだ。

一部では「1700人が体調不良、2人死亡」として伝えられてきたが、2026年4月時点では、1700人超が法的手続きに参加し、死亡例は少なくとも8人にのぼると報じられている。訴訟を主導する法律事務所は、子どもを含む多くの旅行者が現地滞在中、あるいは帰国後に重い症状を発症したと主張している。

何が起きたのか

問題の中心となっているのは、TUIが販売したカーボベルデ向けパッケージ旅行だ。訴えによると、2022年以降、とくにサル島やボア・ヴィスタ島のリゾートホテルに滞在した英国人旅行者の間で、激しい下痢、嘔吐、脱水、発熱などの重い胃腸症状が相次いだ。報告された感染症には、シゲラ、サルモネラ、E.coli(大腸菌)、クリプトスポリジウムなどが含まれている。

この件では、英国保健安全保障庁(UKHSA)も2026年2月に注意喚起を実施した。UKHSAによれば、2025年10月1日以降、イングランド・スコットランド・ウェールズで確認されたシゲラ感染158件のうち112件、さらにサルモネラ感染43件のうち32件がカーボベルデ旅行歴と関連していた。英国政府の海外渡航情報でも、カーボベルデへの渡航者に対し、シゲラおよびサルモネラ感染の増加について明記している。

さらに欧州疾病予防管理センター(ECDC)は2026年3月、2022年9月以降、旅行者から同一系統のシゲラ菌が検出されており、持続的な感染源または継続的な伝播の可能性があると指摘した。つまり、単発の食中毒ではなく、長期間にわたって同地域で何らかの衛生上の問題が続いていた可能性があるということだ。

被害の規模

当初は数百人規模だった法的請求参加者は、2026年4月には1700人超まで拡大した。原告側を支援するIrwin Mitchellによると、訴訟対象として高等法院で扱われているホテルには、Riu Palace Santa Maria、Riu Funana、Riu Cabo Verde、Riu Palace Boavista、Melia Dunas、TUI Suneo Dunas、TUI Blue Cabo Verdeなどが含まれる。ホテル別の請求人数も公表されており、特定施設への集中が見られる。

報道では、被害者の中には生後6か月の乳児も含まれるとされる。訴訟を支える弁護士は、今もなお後遺症のような消化器症状に悩まされている人がいるとしている。

死亡例はどう報じられているのか

この問題が大きく注目されている最大の理由は、単なる「旅行先での腹痛」では済まされない深刻な結果が出ていることだ。2026年4月時点で、報道ベースでは少なくとも8人の英国人が、カーボベルデ滞在中または帰国直後に重い胃腸疾患に関連して死亡したとされている

報じられている個別事例では、2025年にサル島のRiu Funanaに滞在したKaren Pooleyさんが重篤化し、テネリフェへ搬送後に死亡したとされる。また、Riu Palace Santa Mariaに滞在していたMark Ashleyさんも、深刻な胃腸症状を発症し、帰国後に死亡したと報じられている。ほかにも、休暇後のフライト中に心停止を起こしたケースなどが伝えられている。

ただし、死亡と旅行中の感染症との法的因果関係は、個別に医学的・法的検証が必要であり、今後の裁判で争点になる可能性が高い。

原告側はTUIに何を訴えているのか

今回の訴訟で原告側が問題視しているのは、単に「旅行先で病気になった」という事実だけではない。主張の核心は、TUIがパッケージ旅行を販売・手配する事業者として、提携ホテルや現地環境の安全・衛生に十分配慮する義務を果たしていたのかという点にある。

原告側の主張を整理すると、主に次のような内容になる。

まず、ホテルや関連施設で衛生管理が不十分だった可能性。食事の温度管理、食品の再利用、飲料水の管理、清掃・消毒体制などに問題があったのではないかという点だ。報道では、一部遺族が「食べ物がぬるい」「衛生状態が悪く見えた」「飲料水の保管状態がよくなかった」と感じていたと証言している。

次に、安全配慮義務違反の主張だ。パッケージ旅行事業者であるTUIには、提携先を含む旅行全体の安全性を一定程度確保する責任があるとされ、原告側は「病気を引き起こすような状況のホテルに顧客を送り込んだ」と主張している。

さらに、被害が単発ではなく長期間続いていたことから、異常の兆候を把握しながら十分な是正措置や警告がなかったのではないかも争点になりうる。ECDCが2022年からの継続的な感染の可能性を指摘していることは、この点で原告側にとって重要な補強材料になる可能性がある。

TUI側やホテル側の立場

TUIは、顧客の健康と安全を最優先するとしつつ、個別案件についてはコメントを控える姿勢を示している。報道によれば、TUIはカーボベルデへ2022年以降100万人超を送客しているとしており、問題の全体像について慎重な姿勢を取っている。

また、Riu Hotels側は、自社施設が国際的な衛生基準に従って運営されていると説明している。つまり、現時点では原告側の主張と、事業者側の「基準順守」主張が正面からぶつかっている構図だ。

裁判は今どの段階にあるのか

報道によると、イギリスの高等法院での手続きが始まっている。これは単なる苦情レベルではなく、すでに大規模な法的争いとして本格化していることを意味する。

現段階では、裁判そのものがすぐに結審するというより、まずは以下のようなプロセスが進むとみられる。

第一に、各原告の症状、発症時期、宿泊先、検査結果、既往症、死亡との因果関係などの医学的・事実関係の立証

第二に、感染源がホテル内の食品、水、衛生設備、あるいは地域全体の公衆衛生問題に由来するのかという原因特定

第三に、TUIが旅行事業者として、危険をどの程度把握できたか、把握後にどんな措置を取るべきだったかという法的責任の範囲の審理。

第四に、損害賠償額の算定だ。症状が短期で終わった人と、長期後遺症や死亡事案では賠償の性質が大きく異なるため、案件ごとの評価が必要になる。業界関係者のコメントでは、最初の一部請求だけでも損害額に幅があり、訴訟費用全体は高額化する可能性があるとみられている。

今後の経緯はどうなるのか

今後は、さらに原告が増える可能性がある。すでにIrwin Mitchellは、同様の症状を訴える人々から今も連絡が続いているとしている。つまり、この訴訟はまだ「入口」にすぎず、被害者数や対象ホテルがさらに広がる可能性がある。

一方で、裁判では当然ながらTUI側の反論も強まるだろう。大規模な集団請求では、個々の症状と旅行先との因果関係、感染源の特定、虚偽または過大な請求の有無が厳しく争われるのが通常だ。すでに英メディアでは、旅行傷害請求をめぐる不正請求問題も議論されており、TUI側が案件ごとの精査を求める展開は十分あり得る。

それでも今回の件は、公的機関もカーボベルデ渡航者の感染増加を公式に確認しているため、単なる噂話では終わらない。政府の渡航情報、UKHSAの注意喚起、ECDCの疫学報告という複数の公的ソースが、地域的な感染リスクの存在を裏づけているからだ。

まとめ

今回のTUI集団訴訟は、旅行会社を相手取る案件としては極めて大規模であり、イギリスの旅行業界全体にも影響を及ぼす可能性がある。争点は、単に「旅行中に具合が悪くなったか」ではなく、旅行会社が安全な旅行環境を提供する責任をどこまで負うのかという、パッケージツアーの根幹に関わる問題だ。

現時点で確認されているのは、1700人超が法的手続きに参加し、少なくとも8人の死亡が関連事案として報じられていること。そして、英国や欧州の公衆衛生当局も、カーボベルデ旅行者におけるシゲラやサルモネラ感染の増加を認めていることだ。今後は高等法院で、感染源、因果関係、TUIの安全配慮義務、損害賠償の範囲が本格的に争われていくことになる。

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