
イギリスでは、時に犯罪者が「反体制の象徴」や「民衆のヒーロー」として語られてきました。 ガイ・フォークスやディック・ターピン、クレイ兄弟など、彼らはなぜ称賛されるようになったのでしょうか? 本記事では、歴史的背景・メディアの影響・現代のSNS現象までを詳しく解説します。
なぜ犯罪者が英雄視されるのか
犯罪者が英雄化される背景には、いくつかの共通点があります。
- 社会への不満の代弁者:権力への抵抗者として共感を呼ぶ
- ロマン主義の影響:悪を魅力的に描く文学・演劇の伝統
- メディア報道の誇張:センセーショナルな語り口で拡散
- SNSによる拡張:共感や憧れが「いいね」で増幅
代表的な英国の「英雄化」事件
ガイ・フォークス(1605年)
王を爆殺しようとした「火薬陰謀事件」の首謀者。 処刑後も「権力への反逆の象徴」として毎年11月5日に ガイ・フォークス・ナイト が行われています。 映画『Vフォー・ヴェンデッタ』で再び脚光を浴び、世界的に“反体制の仮面”として定着しました。
ディック・ターピン(18世紀)
実際には殺人犯でしたが、後世の小説や舞台で「紳士的な義賊」として描かれました。 これがアウトロー神話の原型となりました。
グレート・トレイン・ロバーズ(1963年)
列車強盗団が260万ポンドを奪った事件。 主犯格ロニー・ビッグズは脱獄後にブラジルへ逃亡し、“自由人”としてメディアスター化。 大衆の一部から「時代のアウトロー」として支持されました。
クレイ兄弟(1960年代)
ロンドンの裏社会を支配した双子のギャング。 映画『レジェンド』などで描かれ、ファッションアイコンやカリスマ像として消費されました。 犯罪美化の危険性を象徴する存在でもあります。
ラウル・モート(2010年)
元服役囚が射殺事件を起こし、逃走劇を展開。 Facebook上で彼を称えるページが数千人の支持を集め、SNSによる“英雄化”が社会問題化しました。
メディアとSNSの影響
現代では、SNSによる拡散スピードと共感の増幅が、過去の新聞・テレビ以上に強い影響を与えています。 「反体制」「自由」「正義」といった価値をシンボル化し、背景の犯罪性を曖昧にしてしまうケースも少なくありません。
まとめ
- ガイ・フォークスから現代まで、反体制の象徴として犯罪者が持ち上げられる構造は続いている。
- メディアやSNSは、その過程を加速させる重要な要因。
- 報道・表現の自由と倫理のバランスが今後も問われる。
この記事は、教育的・社会学的な観点から「犯罪者の英雄化」現象を検証したものです。
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