イギリスでは、毎年多くの「行方不明者」や誘拐関連事件が警察に報告されています。ただし、その大半は一時的な失踪や家出であり、重大犯罪に発展するケースは比較的少数です。本記事では、統計の概要とともに、警察がどの程度協力的に対応しているのかについても解説します。
1. 行方不明者の年間件数
■ 総数
イギリスでは、年間およそ 17万件以上 の行方不明者報告が警察に提出されています。
これは「人数」ではなく「通報件数」であり、同じ人物が複数回届け出られるケースも含みます。
1日あたりに換算すると約450〜500件の通報があり、行方不明事案は日常的に発生しているといえます。
■ 子どもの行方不明
- 年間で 7万人以上の子ども が一度は行方不明として記録されています。
- その多くは家出や施設からの一時的離脱です。
- 約80〜98%は短期間(24〜48時間以内)に発見されています。
- 一方で、数千人規模が長期行方不明扱いとなる年もあります。
特に児童養護施設や保護施設からの失踪が社会問題となっており、弱い立場の子どもが犯罪被害に遭うリスクが指摘されています。
■ 成人の行方不明
成人の場合は以下の要因が多く見られます。
- 家庭問題や経済問題による自主的失踪(いわゆる「蒸発」)
- 精神疾患や認知症による徘徊
- 自殺リスクを伴う失踪
- 犯罪被害
成人の多くも数日以内に発見されますが、年間を通じて未解決のまま残るケースも一定数あります。
2. 誘拐事件の実態
誘拐(Kidnapping)は「対人暴力犯罪(Violence Against the Person)」に分類されます。
■ 発生件数
年間で数百〜1,000件規模の誘拐関連犯罪が記録される年がありますが、ここには以下も含まれます。
- 親による子の連れ去り(親権争い)
- 金銭目的の監禁
- 若者同士のトラブル
映画のような組織的誘拐は統計上は比較的少数です。
ロンドン地域を管轄する
Metropolitan Police
などの大規模警察機関は、子ども関連事案を「ハイリスク案件」として即時対応する体制を取っています。
3. 「蒸発」と呼ばれるケース
日本で言う「蒸発」に近いのは、自発的失踪(Voluntary Missing)です。
特徴:
- 借金や家庭問題からの逃避
- DV被害からの避難
- 新生活を始めるための連絡遮断
これらは犯罪ではない場合も多く、本人の意思が確認されれば事件性なしと判断されることもあります。
4. イギリス警察の協力度と対応体制
ここが重要なポイントです。
■ 基本姿勢
イギリス警察は、行方不明通報を「時間との闘い」として扱います。
特に以下の場合は即時対応します:
- 子ども
- 高齢者(認知症)
- 自殺リスクがある人物
- 暴力被害の可能性があるケース
通報を受けると、警察は事案を以下の3段階で分類します。
- 低リスク
- 中リスク
- 高リスク
高リスクと判断された場合、即座に捜索チームが組織され、監視カメラ確認・携帯位置情報照会などが行われます。
■ 実際の協力体制
イギリスでは警察だけでなく、慈善団体や自治体とも連携しています。
代表的な支援団体が
Missing People
です。
この団体は:
- 24時間ホットライン運営
- 家族への心理支援
- 行方不明者への匿名連絡窓口提供
- 警察との情報共有
といった役割を担っています。
■ 警察の課題
ただし、以下の問題も指摘されています:
- 慢性的な人員不足
- 施設児童の繰り返し失踪への対応負担
- 移民・人身取引関連事案の複雑化
- 地域による対応力の差
一部の自治体では、児童保護施設から何度も失踪するケースに十分な追跡体制を取れないという批判もあります。
5. 統計まとめ
| 分類 | 概算年間件数 | 備考 |
|---|---|---|
| 行方不明届出総数 | 約170,000件 | 重複含む |
| 子どもの行方不明 | 約70,000人以上 | 多くは短期解決 |
| 長期未解決ケース | 数千人規模 | 年によって変動 |
| 誘拐関連犯罪 | 数百〜1,000件規模 | 親の連れ去り含む |
結論
- イギリスでは行方不明届は非常に多いが、大半は短期間で解決している。
- 誘拐は深刻犯罪だが発生数は限定的。
- 警察はリスク評価制度を導入し、特に子どもや高齢者には迅速対応。
- 一方で、施設児童や移民関連の失踪問題には制度的課題も残る。
イギリスの対応は比較的体系化されていますが、社会的弱者を守る体制の強化は現在も重要課題となっています。










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