上流階級に守られた政治家たち
イギリスの政治家は裏金を受け取っていても、階級に守られており、世間にばれることはほとんどありません。
イギリスにはいまだに階級制度が存在しますが、それは政治の世界でも例外ではありません。
イギリスの政治家は上流階級出身が多く、彼らは子どものころからプライベートスクールに通い、公立学校に通う生徒とは一切関わらないような人間関係の形成を徹底的に教え込まれます。
こうして築かれた人間関係は非常に強靭で、公立学校で築かれるものよりもはるかに強固です。
お金が尽きることのない上流階級の世界では、「落ちぶれる」という概念そのものが存在しないため、彼らの間で裏切り合う必要はありません。
資産の不均衡が生む人間関係の脆さ
一方で、私たちのような上流階級以外の人間は、限られた資産をやりくりしながら人間関係を保たなければなりません。
資産形成のバランスが崩れると、それが人間関係にも波及します。
やがて保身のために友人を裏切るという行為に走ってしまい、気づいたときにはすべてを失ってしまう――そんな悲しい現実があります。
「お金がすべてではない」とは言いますが、資産がゆるぎない土台を形成しているのは紛れもない事実です。
資産がない状態での人間関係は、とても不安定なのです。
なぜ政治家の汚職はばれないのか
政治家が企業からお金をもらっても、なぜそれがばれないのでしょうか。
その理由のひとつに、企業の経営者もまた上流階級出身であることが挙げられます。
彼らの間では裏切りが滅多に起こりません。
イギリスでは上流階級出身の人々が社会のあらゆる分野を牛耳っているのです。
彼らは一般人が決して入ることのできない「守られた世界」に住んでいます。
そのため、上流階級以外の出身者で構成されるメディア関係者が政治家の闇を暴こうとしても、世の中から抹消されるだけです。
結果として、あえてリスクを負う人間は自然といなくなります。
もちろん、まったく汚職が明るみに出ないわけではありませんが、その数は非常に少ないのが現実です。
イギリスで実際に発覚した政治家の汚職・不正事件
1️⃣ 議員経費スキャンダル(MPs’ Expenses Scandal, 2009年)
概要:
・多くの下院議員が経費制度を悪用し、私的な出費を請求していたことが英紙《The Daily Telegraph》の調査報道で明らかになった。
・経費で請求されていた内容:
- 豪邸の修繕費
- 別荘のローン返済
- アヒル小屋の建設費(!)
- 不正確な住宅手当(二重請求)
など、極めて不適切なものが多数存在。
結果:
・20人以上の議員が辞任・政界引退。
・数名が刑事起訴・有罪判決(実刑もあり)。
・経費制度が全面的に改革され、議員経費の透明化が進む。
→ 🧨 イギリス近代政治史上最大級のスキャンダル。
2️⃣ キャッシュ・フォー・クエスチョンズ事件(Cash for Questions, 1994年)
概要:
・保守党の下院議員ニール・ハミルトンらが、企業(エジプト人実業家モハメド・アルファイド)から金銭を受け取り、議会でその企業に有利な質問をしたとされる事件。
・英紙《The Guardian》が報道。
結果:
・ハミルトン議員は辞任。
・企業ロビー活動と政治家の癒着が問題化。
・のちに「公職倫理基準委員会(Committee on Standards in Public Life)」が設立され、倫理ルールが厳格化された。
3️⃣ キャッシュ・フォー・オナーズ事件(Cash for Honours, 2006年)
概要:
・労働党政権(トニー・ブレア首相時代)下で、大口献金者に爵位(ナイトや貴族称号)を授与していたのではないかという疑惑。
・労働党・保守党双方の政治献金者リストが問題視された。
結果:
・警察が首相官邸を捜査(ブレア首相本人も事情聴取)。
・起訴には至らなかったが、「政治献金と栄誉職授与の関係」が国民的議論に。
・栄誉制度の透明性強化へつながった。
4️⃣ オーウェン・パターソン事件(Owen Paterson Lobbying Scandal, 2021年)
概要:
・元閣僚オーウェン・パターソン議員(保守党)が、自身が顧問を務める企業2社(食品安全関連)を政府に不正ロビーした疑い。
・議会の倫理委員会が「明白な利益相反」と結論。
結果:
・パターソン議員は辞職。
・ジョンソン政権が彼を庇おうとしたため国民の強い反発を受け、最終的に撤回。
・保守党政府への信頼を大きく損なった。
5️⃣ グリーンスルー事件(Greensill Scandal, 2021年)
概要:
・元首相デーヴィッド・キャメロンが金融会社Greensill Capitalの顧問として、コロナ禍の政府支援制度に同社を優遇するよう現職閣僚にロビー活動していたことが発覚。
結果:
・キャメロン本人は刑事罰を免れたが、
→ 「元首相が私企業の利益のために政府に影響力を行使した」として社会的批判が殺到。
・政府はロビー活動規制の強化を余儀なくされた。
6️⃣ ナディム・ザハウィ税務問題(Nadhim Zahawi Tax Scandal, 2023年)
概要:
・ナディム・ザハウィ財務大臣(当時)が、自身の会社の税金支払いをめぐりHMRC(税務当局)と和解金を支払っていたことが判明。
・税務調査の事実を首相に報告していなかった。
結果:
・リシ・スナク首相が彼を閣僚から解任。
・「エリートの税制特権」への批判が高まった。
上流階級は決して落ちない
上記で挙げた人物がすべて上流階級出身とは限りません。
しかし、確実に言えるのは――たとえ汚職で捕まったとしても、上流階級出身であればいくらでも天下り先があり、何もせずとも高給を得て、死ぬまで悠々自適な生活を送ることができるという現実です。










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