
ロンドンの都会に野生動物が生息する理由とは?
ロンドンはイギリスの首都であり、世界有数の大都市です。高層ビルや歴史的建造物が立ち並び、多くの観光客やビジネスマンが行き交うこの都市には、意外な一面があります。それは、野生動物が多く生息しているという点です。ロンドンの公園を散策すると、リスやキツネ、さらには鹿などの動物と出会うことができます。日本の都市部ではこうした光景は珍しいため、ロンドンを訪れた日本人観光客には驚きの光景に映るかもしれません。
では、なぜロンドンのような大都市にこれほど多くの野生動物が存在するのでしょうか?その背景について詳しく解説していきます。
1. 豊富な緑地と公園の存在
ロンドンは都市でありながらも、驚くほど多くの緑地や公園が存在します。市内には大小合わせて3000以上の公園があり、総面積は約35,000エーカー(約140平方キロメートル)に及びます。これらの公園は野生動物の生息地として重要な役割を果たしています。
代表的な公園と生息する動物
ハイド・パーク(Hyde Park) ロンドン中心部に位置するハイド・パークは、市民の憩いの場として有名ですが、リスやカモ、ハクチョウ、カラスなどの野生動物も数多く見られます。特にハイイロリス(Gray Squirrel)は、観光客が餌を与えることもあり、人に慣れた個体が多いです。
リージェンツ・パーク(Regent’s Park) リージェンツ・パークには、野鳥の観察スポットが多数あり、カナダガンやコブハクチョウ、さまざまな種類のカモが生息しています。また、ロンドン動物園(ZSL London Zoo)も公園内にあり、都市と自然が共存する象徴的な場所となっています。
リッチモンド・パーク(Richmond Park) ロンドン南西部に位置するリッチモンド・パークは、約955ヘクタールの広大な自然公園です。ここにはアカシカやダマジカが生息しており、訪れれば高確率で鹿を目にすることができます。公園の管理者によって個体数が調整されているため、都市環境の中でも野生動物が安定して生息できるようになっています。
これらの公園は、ロンドンの都市部に住む動物たちにとって、重要な生息地や避難場所となっているのです。
2. 都市環境への適応力が高い動物の存在
ロンドンに生息する野生動物は、都市環境に適応する能力を持っています。特に以下の動物は、都会でも生存できる強い適応力を示しています。
ハイイロリス(Gray Squirrel)
ロンドンの公園で最もよく見かける動物のひとつがハイイロリスです。もともと北アメリカ原産で、19世紀にイギリスに持ち込まれました。イギリス固有のアカリス(Red Squirrel)は、このハイイロリスの侵略によって生息数が減少し、現在ではイングランドの都市部ではほとんど見られなくなっています。
アカギツネ(Red Fox)
ロンドンの夜になると、アカギツネが街中を歩き回る姿を見かけることができます。特に住宅街や公園周辺でよく目撃されます。キツネは雑食性で、人間が捨てた食べ物を漁ることも多く、都市環境に適応した生活を送っています。興味深いことに、ロンドンのキツネは人をあまり恐れず、庭やゴミ捨て場で悠々と食事をする姿も珍しくありません。
ドブネズミ(Brown Rat)
ロンドンの地下鉄やレストランの裏手では、ドブネズミを見かけることがよくあります。都市部におけるネズミの存在は、廃棄された食べ物やゴミの管理状況と密接に関係しており、ロンドンのように飲食店や人の多い都市では、ネズミにとって快適な環境が整っています。
3. 気候の影響
ロンドンは温帯海洋性気候に属し、比較的温暖な気候が特徴です。冬の平均気温は5℃前後で、日本の東京や大阪に比べて寒さが和らぎます。気温が極端に下がることが少ないため、野生動物が都市部で生存しやすい条件が整っているのです。
また、ロンドンでは年間を通じて降水量が安定しているため、水場が確保されやすく、動物たちが暮らしやすい環境が維持されています。
4. 人間による餌付けや間接的な支援
ロンドンでは、公園に訪れる人々がリスや鳥にエサを与える習慣があります。特にハイイロリスは観光客からの餌付けによって人に慣れ、ますます都市生活に適応しています。
また、家庭のゴミ管理が不完全な場合、キツネやネズミがそれを食料源として利用することもあります。ロンドンでは家庭ゴミを専用のゴミ箱に入れるルールがありますが、ゴミ袋をそのまま地面に置いてしまうこともあり、野生動物が容易に食料を確保できる状態になっています。
5. 歴史的・文化的な背景
イギリスでは、野生動物に対する意識が日本とは異なります。日本では都市部に野生動物が現れると「害獣」として扱われがちですが、イギリスでは多くの動物が共生の対象として捉えられています。
例えば、ロンドン市民はキツネを「都市の住人の一部」として受け入れており、駆除の対象にはなりません。このような文化の違いも、ロンドンの都市に野生動物が多く存在する要因の一つとなっています。
まとめ
ロンドンの都市部に野生動物が多く生息している理由は、以下の5つの要因が関係しています。
- 緑地や公園が多く、動物が生息しやすい環境がある
- 都市環境に適応できる動物が多い(リス、キツネ、ネズミなど)
- 温暖な気候が動物の生存に適している
- 人間の行動(餌付けやゴミの管理不足)が動物を支えている
- 野生動物と共生する文化的な背景がある
ロンドンは単なるコンクリートジャングルではなく、野生動物との共存が自然に成り立つ都市なのです。
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