
近年、ジェンダー平等への意識が世界的に高まる中で、イギリスはしばしば「女性の社会進出が進んだ国」として挙げられる。確かに、政治、ビジネス、教育など多くの分野で女性が指導的地位に立つ姿は、日常的に見られるようになってきた。特に日本と比べれば、女性の社会的地位は格段に良いと言えるだろう。しかし、「男女平等」が完全に実現されているかと言えば、答えは否である。イギリスもまた、深層に根ざした構造的な問題を抱えている。
政治とビジネスにおける比較
日本では、女性の国会議員の割合が依然として10%台にとどまっているのに対し、イギリスでは下院の約35%が女性議員(2024年時点)となっており、見た目にはかなりの差がある。さらに、女性首相をこれまでに3人輩出している点でも、イギリスは進んでいるように見える。
ビジネスの世界でも、日本の上場企業における女性役員比率が10%未満に留まっているのに対し、イギリスではFTSE 350企業の取締役の4割近くが女性である。企業文化としても柔軟な働き方や育児支援制度が比較的整備されており、女性がキャリアを継続しやすい環境があるのは事実だ。
それでも残る「見えない壁」
とはいえ、イギリス社会が「完全な男女平等」を達成しているかというと、そうではない。まず、賃金格差の問題がある。イギリスでは男女間の賃金格差の開示が義務化されているものの、同じ職種・役職でも依然として女性のほうが低賃金であることが多い。
また、「ガラスの天井」と呼ばれる昇進の壁も健在である。女性の管理職比率は増えてはいるが、CEOや役員クラスとなると依然として男性が多数派だ。加えて、職場でのセクハラや妊娠・出産によるキャリア中断のリスクも根強く存在している。
日常に残る性別による期待と役割
文化的な面でも、性別による固定観念は完全には払拭されていない。たとえば、「育児は母親の責任」とする無意識の期待は依然として強く、共働き世帯であっても、家庭内労働の多くを女性が担っている現実がある。イギリスでは制度として「男性の育児休暇」も用意されているが、実際に取得する男性は少数にとどまっている。
結論:進んでいるが、完成された平等ではない
イギリスは確かに日本よりも女性の社会的地位において先行している。制度面や表層的なデータを見る限りでは、見習うべき点も多い。しかし、その奥には根強いジェンダーバイアスや構造的な不均衡が依然として残っており、まだ「真の男女平等」とは言い難い状況である。日本がイギリスから学ぶべき点が多いのは間違いないが、イギリス自身もまた、変革を必要としているのだ。
コメント