
春になると日本では「スギ花粉」の話題が欠かせませんが、実は今、イギリスでも花粉症(hay fever)が急増しています。「イギリスに花粉なんてあるの?」と驚く方もいるかもしれませんが、近年では日本以上に深刻とも言われるレベルで、花粉の飛散量が増えているのです。
本記事では、イギリスで花粉症が激増している背景と、現地で実際に行われている効果的な花粉症対策について詳しくご紹介します。
花粉症が激増しているイギリス、その背景とは?
年々悪化するイギリスの花粉状況
イギリスでは例年、5月から7月にかけての時期に花粉シーズンが訪れます。特に多く飛散するのは芝(grass)やブナ科の木(birch)、オーク(oak)などの花粉。これらはスギやヒノキと違い、都市部にも大量に植えられており、ロンドンやマンチェスターなど大都市でも被害が多発しています。
最近では気候変動の影響により、花粉の飛散時期が長期化し、強度も増加しているとされています。実際、イギリス気象庁(Met Office)によると、ここ数年の花粉飛散指数(pollen count)は過去最高レベルを記録することも珍しくなく、多くの市民が日常生活に支障をきたすレベルにまで達しています。
イギリスの花粉症事情:日本との違い
花粉の種類が違う
日本ではスギやヒノキが主な原因となりますが、イギリスでは先述の通り芝や木々、雑草(weed)が原因です。特に「grass pollen」は人口の約95%の花粉症患者が反応するとされ、深刻なアレルゲンです。
医療システムと自己管理の差
イギリスではNHS(国民保健サービス)を通じて医療が提供されるため、GP(かかりつけ医)を通じて抗ヒスタミン薬やステロイドスプレーなどを入手することが一般的ですが、受診には時間がかかることもあり、市販薬や自然療法を活用する傾向も強く見られます。
イギリスで主流の花粉症対策とは?
ここからは、実際にイギリスで使われている具体的な花粉症対策をご紹介します。
1. 抗ヒスタミン薬(Antihistamines)
最もポピュラーなのが抗ヒスタミン薬。処方薬だけでなく、スーパーや薬局(Boots、Superdrugなど)で市販薬(OTC)が豊富に取り揃えられています。
- 代表的な薬:Loratadine(ロラタジン)、Cetirizine(セチリジン)、Fexofenadine(フェキソフェナジン)
- 価格帯:1箱(7〜14錠)で£2〜£6程度
- 副作用:眠気を引き起こす場合もあるが、non-drowsy(非眠気タイプ)も選べる
2. 鼻スプレー(Nasal Sprays)
鼻の炎症や鼻づまりに効果的なステロイド系スプレーも非常に人気があります。
- 代表的な製品:Beconase(ベコネーズ)、Flixonase(フリクソネーズ)、Nasacort(ナサコート)
- 効果:花粉が鼻腔に付着するのを防ぎ、炎症を抑える
- 使用方法:1日1〜2回の使用が推奨されている
3. 目薬(Eye Drops)
目のかゆみや涙目には抗ヒスタミン点眼薬が使われます。
- 代表的な製品:Opticrom、Allergan、Murine
- 注意点:開封後の使用期限が短いので要注意(多くは28日以内)
日常生活での予防策:自然派志向も人気
イギリス人は「自然療法」や「ライフスタイル改善」による予防にも関心が高く、薬以外にも以下のような方法が取り入れられています。
1. 花粉予報をチェックする習慣
イギリスではMet Office(気象庁)やBBC Weatherで毎日「Pollen Count(花粉指数)」が発表されています。スマホアプリでも簡単に確認でき、花粉レベルが高い日はマスクや眼鏡、外出控えなどの対策が推奨されます。
2. 空気清浄機・HEPAフィルターの使用
室内での花粉対策として、空気清浄機やHEPAフィルター付き掃除機が注目されています。特に、花粉症の子どもがいる家庭では必需品とされています。
3. Vaseline(ワセリン)を使った予防テク
ユニークな方法として、鼻の穴の入口にVaseline(ワセリン)を塗ることで花粉の侵入を防ぐという手段もあります。これはイギリスのNHS公式サイトでも推奨されている方法で、自然かつ副作用のない手軽な対策として好評です。
医師による注射・免疫療法(Allergy Shots)
重度の花粉症に対しては、免疫療法(desensitisation therapy)も行われています。これは長期的にアレルゲンを少量投与して、体を慣らしていく方法で、NHSのアレルギー専門外来で相談可能です。
ただし、日本と同様に高額かつ時間がかかるため、一般的には軽度〜中度の患者は市販薬やライフスタイル調整で対応していることが多いです。
花粉症に効く?イギリスならではの自然派アイテム
ローカルハニー(地元産はちみつ)
「地元産のはちみつを毎日食べると花粉症が和らぐ」という説がイギリスにもあります。科学的な裏付けは弱いものの、実際に愛用する人は多く、スーパーのオーガニックコーナーなどでロンドン産やケント産のハチミツが販売されています。
ネトルティー(Nettle Tea)
ネトル(イラクサ)は天然の抗ヒスタミン効果があるとされ、ハーブティーとして飲まれることが多いです。カフェインレスなので就寝前でも安心して飲めるというメリットも。
まとめ:イギリスの花粉症事情と私たちにできること
イギリスでの花粉症の増加は、気候変動や都市化、植生の変化など、複合的な要因が関係しています。特に芝や木々の花粉による被害は日本とは異なるパターンであり、その対策もイギリスならではの工夫が凝らされています。
ポイントは以下の通り:
- 抗ヒスタミン薬や鼻スプレーの活用が基本
- 花粉予報を日々チェックして行動を調整
- Vaselineやハーブティーなど自然療法も取り入れられている
- 重度の場合は医師による治療や免疫療法も選択肢に
イギリスで暮らす日本人にとっても、花粉症は「他人事」ではなくなっています。日々のケアや正しい知識を持つことで、つらい症状をうまくコントロールしていきたいものですね。
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