加担か、中立か?

英国の「静かなる参戦」と分断される世論

イランとイスラエルの間で緊張が高まる中、遠く離れた英国でもその火花は静かに飛び散り始めている。

表向きには「直接的な軍事介入はしていない」との立場を保つ英国政府だが、裏では空軍の中東派遣や、米国との緊密な連携、政治的なスタンスに至るまで、イスラエル寄りの姿勢がにじみ出ている。多くの市民は「なぜ我々がこの戦争に関わるのか」と疑問を投げかけ、一方で一部の政治家や活動家はイスラエル支援を正当化する。

いま英国国内で起きているのは、外交方針をめぐる「静かな内戦」とも言える。


✈️ “派兵”という言葉を使わずに兵を送る

2025年6月、英国は空軍のジェット戦闘機と空中給油機を中東地域に派遣。公式には「地域の安定と英人保護のため」と説明されたが、イスラエルがイランに対して報復攻撃を行う中、この派遣の意味は重い。空中給油機は単なる“後方支援”ではない。戦闘機の稼働時間を伸ばす生命線であり、事実上の作戦支援だ。

スターマー首相は「我々は戦争を望んでいない」と語る一方で、「必要であれば我々は防衛支援を行う」と含みを持たせている。いわば、「関与はするが、責任は取らない」構図だ。


🧑‍💼 影響力のある“沈黙しない者たち”

イスラエルと英国には深い歴史的つながりがある。過去にはバルフォア宣言(1917年)を通じ、パレスチナへのユダヤ人国家建設を支持した経緯もあり、保守派を中心にイスラエル支援は今も根強い。

政治の場では、Conservative Friends of IsraelLabour Friends of Israelといった議員グループが存在感を放ち、政策や議会での発言を通じて「イスラエルの立場」を擁護する。

さらに、エイロン・アスラン=レヴィのような人物も注目されている。イスラエル政府の元スポークスマンでありながら、英国市民としてロンドンで発言を続け、「イランに対する譲歩は暴力を生む」と声高に訴えている。彼の言葉は、議会よりも速くSNSで拡散され、世論を動かし始めている。


市民社会の反発:「これは私たちの戦争ではない」

一方、英国市民の間では、イスラエル支援に対する根強い不信と批判がある。特に若年層や大学コミュニティでは、イスラエルのガザ侵攻を「戦争犯罪」とみなし、関与すること自体が「道義的に誤っている」とする声が強い。

ロンドンやマンチェスターでは、**Stop the War Coalition(戦争反対連合)**による大規模デモが頻発。人々は「Free Palestine」のプラカードを掲げ、政府の姿勢に抗議している。

これらの抗議は、単なるパフォーマンスではない。労働党内の左派、特に若手議員の一部はこの声を受け、「中立外交」を再定義すべきだと主張し始めている。


🧭 英国はどこへ向かうのか

英国の中東政策は常に「均衡」を重んじてきたが、それはもはや成り立たないのかもしれない。

イランとイスラエルの対立がエスカレートし、米国が攻撃に加われば、英国にも選択が迫られる。関与するのか、距離を取るのか。その決断は国際社会における“道義”と“利害”の間で揺れる、非常に難しいものだ。

一つ確かなのは、「中東の炎」が燃え上がるとき、英国はいつもその炎のすぐそばにいる、ということだ。


✍️ 締めくくりに

21世紀の戦争は、もはや戦場だけで起きるものではない。ロンドンの議会、マンチェスターの大学、そしてSNS上のひとつの投稿が、ミサイルと同じほどの影響を持つ。英国がどちらの側に立つのか、それは市民一人ひとりの声によって決まるかもしれない。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA