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序章:歴史に残る“ショッピングブーム”が到来⁉
「イギリスでは、2024年の万引き件数が過去最高を記録しました。」
こんなニュースを聞いて、あなたはどう感じるだろうか?「イギリスの治安が悪化しているのか?」「物価が高すぎて手が出なくなったのか?」「それとも、スリルを求める新しいトレンド?」
実は、これらのすべてが少なからず関係している。かつて「紳士の国」として名を馳せた英国が、いまや「万引き大国」へと変貌しつつあるのだ。2024年、イングランドとウェールズにおける万引き件数は 36万5164件 に達し、前年同期比で 25%増加 という驚異的な数字を記録した。
では、なぜ英国では万引きが爆発的に増えているのか? そして、それを阻止する手立てはあるのか? 万引き被害に苦しむ小売店の実態や、ユニークな防犯対策までを徹底的に掘り下げていこう。
「高すぎる!」生活費が人々を万引きへと追いやる
2024年の英国における万引き急増の背景には、 深刻な生活費危機(コスト・オブ・リビング・クライシス) がある。
最近のデータによると、イギリスのインフレ率は 6.7% と高水準を維持し続けている。特に食料品の価格高騰が激しく、例えば:
- 砂糖: 55.8%上昇
- オリーブオイル: 38.3%上昇
- 冷凍野菜: 24.1%上昇
この結果、庶民の財布は悲鳴を上げている。スーパーで買い物をしようにも、これまで 10ポンド(約1900円)で買えた食材が、15ポンド(約2800円) になっているのだ。
「子供に食べさせるものがないんです。もう選択肢がない。」
ロンドンの低所得者層のある母親は、そう語った。彼女は職を失い、政府の支援を受けながらも家計が厳しくなり、ある日ついにスーパーのレジを通らずにパンと牛乳を持ち出してしまった。
これは彼女だけの話ではない。生活費危機の中で、食料品や生活必需品を万引きせざるを得ない人々が増加している。
「罰金200ポンド以下ならほぼスルー?」──軽犯罪化がもたらした無法地帯
経済的困窮が人々を万引きに追い込んでいるのは事実だが、それを後押ししているのが 英国の法制度の変化 である。
2014年、英国政府は 「200ポンド(約3万6600円)以下の万引きは軽犯罪扱い」 という法律を制定した。これは警察のリソースをより深刻な犯罪に集中させるためだったが、この変更が 逆に万引き犯を増加させる原因 になった。
現在、200ポンド以下の万引きについて警察が捜査することはほぼなく、捕まったとしても軽い罰金で済むことが多い。そのため、 「どうせ捕まらない」 と考える万引き犯が激増しているのだ。
あるロンドンの小売店オーナーは憤りながらこう語る。
「万引き犯が店に入ってきても、店員たちは何もできないんだよ。もし強く対応しようものなら、暴力を振るわれるかもしれない。」
実際、万引きの被害を受けた店員が暴力を振るわれるケースも急増している。
「万引きプロ集団」が暗躍──組織犯罪としての進化
さらに問題を深刻化させているのが、 組織的な万引きグループ の台頭だ。
かつては個人が食料品や日用品を盗むケースが多かったが、いまや 計画的な窃盗団 がスーパーやデパートをターゲットにし、大量の商品を一度に盗み出すという新たな犯罪スタイルが生まれている。
彼らは数人のグループで店内に入り、1人が店員の注意を引いている間に、他のメンバーが高額商品を盗む。そして、すぐに車に乗り込み、そのまま逃走する。
「5分で数百ポンド分の商品を持ち去られたこともある。」
あるスーパーマーケットのオーナーは、監視カメラの映像を指さしながら語った。彼の店では、わずか数か月で 1万ポンド(約180万円)以上の損害 を被っている。
「もう万引きさせない!」スーパーが導入したユニークな防犯策
この万引き急増に対応するため、英国の小売業界はさまざまな ユニークな防犯対策 を打ち出している。
- アクリル板で囲まれた会計コーナー
一部のテスコ・エクスプレス(Tesco Express)では、レジカウンターを 透明なアクリル板 で完全に囲い、店員と客の直接的な接触を制限。これはタバコや高級酒の盗難防止に効果を発揮している。 - 万引き常習犯の顔写真を店内に掲示
ある地元スーパーでは、監視カメラで撮影された万引き犯の顔写真を「万引きリスト」として店内に掲示。顔を晒されることを恐れた犯罪者が店を避けるようになった。 - AI監視システムの導入
セルフレジの万引きを防ぐために AIカメラ を導入。手の動きや行動パターンを分析し、怪しい動きがあると自動的に警告が発せられるシステムを導入するスーパーも増えている。
結論:今後の英国の治安はどうなる?
2024年の万引き急増は、英国の経済危機や法制度の欠陥がもたらした 社会的な問題 であり、単なる「犯罪増加」では語り尽くせない複雑な現象だ。
政府が本気で対策を打たない限り、この問題は今後も続くだろう。果たして英国は、「万引き大国」としてのレッテルを貼られたままなのか? それとも、再び「紳士の国」としての名誉を取り戻すことができるのか?
今後の展開に注目したい。
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