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イギリスで物件を借りようとすると、日本の常識を遥かに超えたカオスな状況に直面することになる。そう、内見だ。日本では、「内見=空き家でしっかり確認できるもの」という常識があるかもしれないが、イギリスではそんな幻想は一瞬で吹き飛ぶ。
なぜなら、 基本的に内見は「今住んでいる人がまだ生活している状態」で行われる のがデフォルトだからである。どういうことかというと、現入居者のプライバシーや快適な生活などという概念は、大家の利益の前では無に等しい。家主としては、できる限り空室期間を作りたくないので、退去前に次の入居者を決めてしまうのが当たり前なのだ。
修繕?何それおいしいの?
さらに驚くべきは、 修繕が「新しい入居者が入った後」にしか行われない というトンデモ運用。いやいや、普通は退去後に点検して、問題があれば修繕してから新しい人を迎え入れるのでは……?と思うかもしれないが、そんな甘っちょろい考えはイギリスの不動産業界には通用しない。
例えば、 壁に大穴が開いていようが、カーペットに謎の赤黒い染みがついていようが、ドアが絶妙な角度で外れかけていようが、そのまま引き渡される。問題があれば? 新しい入居者が文句を言った後で考えればいい という、全力で未来に投げっぱなしなスタンスである。
土足文化、ここに極まれり
さて、内見が現入居者の生活圏に侵入して行われるということは…… 当然、見学者たちは現入居者の家の中に、遠慮なく土足でずかずかと上がり込んでくる ことになる。
これはもはや、 不動産版の「押し入り強盗」では? と思わざるを得ない。
あなたがリラックスしてソファでコーヒーを飲んでいると、見知らぬ人々が次々と玄関から入ってきて、ベッドルームを覗き、バスルームのシャワーを点検し、「うーん、キッチンの収納が少ないですね」などと勝手なレビューを始める。そう、 そこはまだあなたの家なのに。
しかも、彼らは皆当然のように土足。何なら雨の日の泥だらけの靴のまま、「あら、床がちょっと汚いですね」などとコメントする始末。「お前が今汚してるんだが?」と言いたくなるが、そんなことを言っても「Oh, sorry!」と軽く笑われるだけである。
大家「オッケー、次行こうか!」
ここで、 もしあなたが「ちょっと待って、これっておかしくない?」と声を上げたとしても、大家の返答はだいたいこうである。
👉 「みんなこうしてるから。」
👉 「いや、大丈夫大丈夫、すぐ終わるから。」
👉 「次の入居者が決まるまでの辛抱だよ!」
……何一つ納得できる回答がない。
「これがイギリス流なのだから、受け入れるしかない」という、圧倒的な諦観を求められるのがこの国の賃貸事情なのである。
究極の選択:「土足で人が入ってくる生活」vs「なかなか退去させてもらえない恐怖」
では、いよいよあなたが退去しようと決意したとしよう。やっとこの土足で踏み荒らされる生活から解放される!と思うかもしれないが…… 甘い。甘すぎる。
ここで待ち構えているのは 「なかなか退去させてもらえない問題」 である。イギリスでは、 退去の1〜2ヶ月前に通知するのが普通 なのだが、これが意外とスムーズにいかない。
家主としては、「どうせなら、次の入居者が決まるまで住んでおいてほしい」と思っているので、なかなか最終確定の許可を出してくれなかったり、無駄にダラダラと手続きが進んだりすることがある。最悪の場合、「まだ次が決まってないから、もう少し住んでくれない?」という、恐るべき ズルズル引き延ばし戦略 を食らう可能性すらある。
つまり、イギリスでは「入居も地獄、退去も地獄」。
まとめ:イギリスでの内見は「日常に突如侵入してくる未知の体験」
さて、ここまでの話をまとめよう。
✅ イギリスの内見は現入居者がいるまま実施される → つまり、プライバシーなどない。
✅ 修繕は新しい入居者が入った後に行われる → つまり、問題は後回し。
✅ 内見者は土足でずかずかと入ってくる → つまり、現入居者の家は公開展示場。
✅ 退去もスムーズにいかない可能性がある → つまり、入るのも出るのも大変。
イギリスで賃貸生活をするなら、この 「カオスな現実」 にしっかりと向き合う覚悟が必要だ。
さあ、日本の賃貸事情に不満を持っているあなた。 「日本の賃貸契約、手続きが面倒くさいなあ……」と思ったことがあるなら、ぜひイギリスの物件探しを体験してみてほしい。 たちまち、日本の不動産事情が「なんて親切なんだ!」と感じられるはずだ。
さあ、イギリスでの物件探し、楽しんでね!
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