
ロンドンでは、経済停滞と生活費高騰の影響を受け、ギャングが 10代の子どもを薬物流通や運搬に巻き込む事例が増えています。 都市から地方へ販路を伸ばす「カウンティ・ラインズ(County Lines)」は、 未成年が使われやすい構造を内包しています。本稿では、その背景・実態・兆候・対策を 親・学校・地域の視点でわかりやすく整理します。
問題の概要
カウンティ・ラインズは、都市ギャングが携帯電話やSNSを使って地方へ薬物を供給する仕組みです。 運び屋・売人として未成年が活用され、報酬や物品で囲い込まれ、拒否すれば脅迫・暴力が伴うこともあります。

未成年が巻き込まれる主な理由
- 刑罰の軽さ:成人より処分が軽く、ギャングに「リスクが低い」と見なされる。
- 発見回避:制服姿や公共交通機関での移動が不自然に見えにくい。
- 経済的脆弱性:家計の苦しさが小遣い・現金収入への誘惑を高める。
- 心理的な取り込み:「兄貴分」的接近、ブランド品・少額現金で信用を形成し依存化。
不況・格差と犯罪の関係
ブレグジット、パンデミック、エネルギー高騰による長期停滞で、 都市部の貧困は深刻化。低賃金・不安定雇用が続く家庭では ケアの空洞化が起きやすく、子どもが「代替コミュニティ」として ギャングに接近します。将来展望が乏しい若者にとって、 短期的な現金収入が歪んだキャリア選択に見えてしまう現実があります。
英国と日本の「大麻観」の違い
英国は完全合法ではないものの、学校現場では停学やカウンセリングで対応されるケースも多く、 刑事的に重く扱われないことが少なくありません。結果として、 強い抑止が働きにくい環境が一部で生まれています。 一方、日本は法規制が厳格で、社会的制裁も相対的に強い傾向があります。
学校現場のジレンマ
- 薬物事案の公表=評判低下の懸念。
- 厳罰=排除がさらなる孤立・非行化を招く恐れ。
- 放置すれば「当たり前化」が進むリスク。
多くの学校は「一時停学→カウンセリング→段階的復帰」といった 回復志向の対応を模索していますが、根本解決には 家庭・地域・政策の連携が不可欠です。
関与のサイン(早期発見チェック)
- 不自然な現金・高価な持ち物が増えた
- スマホの新しい連絡先・非公開アカウントが急増
- 見知らぬ大人・年長の若者との接触が増加
- 帰宅時間の乱れ、遠方への短時間移動(鉄道・長距離バスなど)
- 恐怖心・過度な秘密主義、脅されている兆候
家庭・地域ができる対策
家庭での実践
- 金銭・スマホのルール(急な現金増・不明な荷物は共有ルールに)
- 移動の可視化(帰宅時間・移動手段を話し合いで合意)
- 信頼の会話(罪悪感をあおらず、助けを求められる雰囲気を)
学校・地域での実践
- 放課後の「セーフ・スペース」拡充(学習支援・スポーツ・アート)
- 地域NPO・教会との連携で居場所と相談窓口を増やす
- 実践的な薬物教育(SNS勧誘・輸送役のリスクを具体例で学ぶ)
政策課題と論点
- 警察リソース・更生支援の両立:取り締まりと出口支援のバランス設計
- 貧困対策と若年就労支援:低賃金・不安定雇用の改善、職業訓練の拡充
- 薬物政策の整合性:刑罰・教育・公衆衛生の視点を統合
よくある質問
- Q. 子どもが関与しているかもしれません。まず何をすべき?
- 安全確保が最優先。子どもを責めず、学校のセーフガード担当や地域の支援団体にすぐ相談を。
- Q. 証拠がありません。それでも相談できますか?
- 可能です。兆候の共有だけでも支援につながるため、早めの相談が有効です。
- Q. 報酬目的で関わっている場合、どう説得すべき?
- 短期的利益と暴力・搾取・前科のリスクを具体例で比較。安全な代替活動・収入機会を提示しましょう。
相談先・リソース
- 学校(セーフガード担当 / スクールカウンセラー)
- 地域NPO・教会・ユースクラブ
- 地方自治体の家庭支援・青少年支援窓口
- 警察の非緊急相談窓口(緊急時は999 / 非緊急は101)
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