なぜロンドン株式市場は地味に見えるのか?|ニューヨーク・東京が活況の中で遅れを取る理由【2025年最新版】

ロンドン証券取引所の外観を背景に、株価チャートが穏やかに動く様子を描いたフラットスタイルのデジタルイラスト。青とグレーの落ち着いた色調。

2025年に入っても、米国ニューヨーク市場(NYSE・Nasdaq)と東京市場はAI・半導体・新NISAマネーといった追い風で出来高・値動きともに活況が続いています。 一方で、同じ先進国市場であるはずのロンドン株式市場(ロンドン証券取引所、LSE)は 「最高値は更新しているのに盛り上がりに欠ける」「値動きが重い」「海外マネーが戻ってこない」といった見方をされがちです。 本記事では、その背景にある構造的な理由と、2025年時点の最新の材料を整理して解説します。

1. 銘柄の“顔ぶれ”がそもそも違う

ニューヨーク市場の上昇をけん引しているのは、生成AI・クラウド・半導体・プラットフォームといった超成長セクターです。 東京市場でも、海外投資家の買い戻しや自社株買い、製造業の利益回復で「成長ストーリー」が語りやすい銘柄が多くなっています。

これに対してロンドンの代表指数であるFTSE 100は、 銀行・保険・資源・エネルギー・日用品・たばこ・医薬品といった成熟産業の比率が高いのが特徴です。 つまり「1年で株価が2倍・3倍になるような成長ストーリー」がそもそも組み込みにくい指数構成になっています。 そのため、市場全体が上がっていても“派手さ”に欠けて見えるのです。

2. 英国経済の成長期待が弱い

2025年時点の英国経済は、インフレの鈍化こそ見られるものの、成長率そのものは0〜1%台と低空飛行が続いています。 財政余力も大きくなく、企業減税や思い切った成長投資に踏み込みづらい環境です。

投資家の視点からすると「どうせ成長に賭けるなら米国やアジアへ」という発想になりやすく、 ロンドン市場は“配当は魅力的だが成長は控えめ”という位置付けにとどまります。

3. 海外からの資金が戻りきっていない

英国株式ファンドは、ブレグジット以降ずっと資金流出が続いてきました。 2025年に入っても「戻ってきた」というよりは「流出がやや落ち着いた」程度の見方が多く、 大型のグローバルマネーは依然として米国・日本・一部のアジアに向かいやすい状況です。

つまり、買いの“主役”が少ないため、指数が上がっても出来高や話題性の面でニューヨーク・東京に見劣りしてしまいます。

4. バリュー株・高配当株が多く、値動きがゆっくり

ロンドン市場には、世界的に見ても配当利回りの高い企業が多く上場しています。 これは長期投資家にとっては魅力ですが、短期で値上がり益を狙う投資家からすると「動きが遅い」「テーマ株になりにくい」と感じられます。

また、資源・エネルギー・金融といったセクターは、景気や資源価格、金利の影響を強く受けるため、 AIや電気自動車のように「一方向に期待が膨らむ」相場になりにくいのも特徴です。

5. ポンド・金利・英国特有の政策リスク

英国企業は海外売上比率が高い一方で、投資家の収益はポンド建てで評価されます。 ポンド高になれば企業業績が目減りする方向に働き、ポンド安なら外国人投資家には魅力が落ちます。 さらに、英国中銀(BoE)が高金利を長めに維持するという見通しが出ると、株価の現在価値は抑え込まれやすくなります。

加えて、英国は近年「ロンドンに上場している企業が米国へ移転したがる」問題や、 「IPOがロンドンでなくニューヨークに流れる」問題が繰り返し取り沙汰されています。 こうした“マーケットとしての魅力”に疑問符が付く材料も、投資家の熱量を下げる要因になっています。

6. それでもロンドン市場にある強み

とはいえ、ロンドン市場がまったく魅力がないわけではありません。 むしろ以下のような投資家にとっては、2025年のロンドン市場は「静かで狙いやすい」フェーズにあります。

  • 配当を重視したい人: 高配当で、市場が加熱していないぶん妙味がある
  • コモディティ・エネルギーに寄せたい人: FTSEは資源株の比率が高く、資源高が来たときに効きやすい
  • 割安株を拾いたい人: 米国株と比べたときにバリュエーションが低めで入りやすい

また、2025年秋以降は英国政府・ロンドン証券取引所ともに「上場市場としての魅力を高める」施策を連続して打ち出しており、 IPO誘致・規制の緩和・税の見直しが進めば、中長期的には再び注目を集める余地があります。

まとめ:ロンドンは“悪い”のではなく“静かなだけ”

ニューヨークや東京が華やかなテーマ株・成長株で賑わう一方で、ロンドン市場は 「成熟産業中心」「海外マネーが戻らない」「成長率が低い」「通貨や金利の重しがある」という事情から、 見た目としてどうしても地味に映ります。

しかし、地味な市場は往々にしてバリューが残りやすく、急な資金流入があったときの上昇余地もあります。 今後ロンドン市場を見るときは、「なぜ上がっていないのか」をマイナスに捉えるよりも、 「なぜ割安のまま残っているのか」「どのセクターなら再評価されるのか」という視点で見ていくと、 ニューヨーク・東京とは違う投資アイデアを拾いやすくなります。

英国生活サイト編集部から

ロンドン株式市場には「安定的」「成熟産業」に属する企業が多く上場しているため、株価の値動きは比較的穏やかです。一方で、投機目的ではなく、その企業の将来性や理念に共感して長期的に投資を行う人も多く見られます。

全体としては low risk, low return の傾向がありますが、配当金の水準が高い企業が多いため、配当金目的で株を保有している投資家も少なくありません。

大きな損失を被るリスクが低いという点では、安心感のある市場と言えるでしょう。

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