1. イギリスの飲酒運転とは
イギリス(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドを含む連合王国)では、運転中または運転を試みる段階で、血液・呼気・尿中のアルコール濃度が法定限界を超えると「飲酒運転」として処罰されます。
また、実際に運転していなくても、車のキーを持ち、車を管理していた状態(“being in charge”) であれば罪に問われることがあります。
2. 飲酒運転で捕まった場合の処罰
イギリスでは飲酒運転の取り締まりが非常に厳しく、処罰の内容は以下の通りです。
- 法定限界を超えて運転または運転を試みた場合
- 最長6か月の禁錮刑
 - 上限のない罰金(収入に応じて高額になることも)
 - 運転免許停止12か月以上(再犯では最長3年)
 
 - 飲酒状態で車を管理していた場合(運転していなくても)
- 最長3か月の禁錮刑
 - 罰金最大2,500ポンド程度
 - 運転免許停止
 
 - 検査拒否をした場合
- 飲酒運転と同等、もしくはそれ以上の罰則
 - 運転免許停止12〜36か月
 
 
3. 死亡事故を起こした場合
飲酒または薬物の影響下で他人を死亡させた場合、
罪名は「飲酒・薬物影響下での不注意運転致死(Causing death by careless driving when under the influence of drink or drugs)」となり、
- 最高刑は終身刑(life imprisonment)
 - 無制限の罰金
 - 運転免許停止5年以上
 - 再取得の際に「拡張運転試験(extended driving test)」を受ける義務
 
という非常に重い処罰が下されます。
実際には懲役10〜14年程度の判決が出るケースもあり、再犯者や悪質な場合は社会復帰が極めて難しくなります。
4. 有名人の飲酒運転事件
● アン・マクパートリン(Ant McPartlin)
人気テレビ司会者。2018年にロンドンで交通事故を起こし、呼気検査で法定限界を超えていたことが発覚。
裁判では罰金 86,000ポンド(約1,600万円) と免許停止20か月の処分を受けました。
英国史上でもトップクラスの罰金額として話題になりました。
● サイド・ベラヒノ(Saido Berahino)
サッカー選手。2014年と2019年に2度飲酒運転で逮捕。
初回は罰金約3,400ポンド、2回目は罰金 75,000ポンド(約1,400万円) と免許停止30か月の処罰。
再犯によりキャリアと評判を大きく損ないました。
● ポール・インス(Paul Ince)
元イングランド代表の名選手で監督経験もある人物。2025年、飲酒運転で中央分離帯に衝突し逮捕。
裁判で有罪となり、免許停止12か月、罰金約5,000ポンドの判決を受けました。
● オイシン・マーフィー(Oisin Murphy)
英国トップジョッキー。2024年に深夜の交通事故で飲酒運転が発覚。
免許停止と懲役猶予付きの有罪判決を受け、競馬界でも大きな波紋を呼びました。
5. なぜここまで厳しいのか
イギリスでは、飲酒運転が「殺人につながる犯罪」として社会的に強く非難されています。
理由は以下の通りです。
- 飲酒が判断力・反応速度を著しく低下させる
 - 被害者の多くが無関係な歩行者や他のドライバーである
 - 再犯率が高く、公共の安全を脅かす行為とみなされる
 
そのため警察は定期的に検問(drink driving checkpoint)を実施し、
年末年始やスポーツイベント後には特に取り締まりを強化しています。
6. 飲酒運転がもたらす社会的損失
飲酒運転で逮捕されると、単に罰金を払えば済む問題ではありません。
- 犯罪記録が残り、就職や海外渡航に影響
 - 保険料が数倍に跳ね上がる
 - 社会的信用の失墜
 - 場合によっては家族や職を失う
 
英国では「飲酒運転=人生を台無しにする行為」として、
学校教育やメディアを通じて強く啓発されています。
7. まとめ
イギリスでの飲酒運転は、わずかな量のアルコールでも重大な犯罪です。
単なる過ちでは済まされず、金銭的・社会的・法的に大きな代償を伴います。
もしそれが死亡事故につながれば、一生を刑務所で過ごすことにもなりかねません。
「飲んだら絶対に運転しない」――この原則を破った瞬間に、人生は一変します。
英国の厳しい法律は、そのことを誰もが忘れないために存在しているのです。










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