イギリスのEU離脱後の移民と人口構成の変化

イギリスは2016年の国民投票でEU離脱(Brexit)を決定し、2020年に正式にEUを離脱しました。この決定はイギリス国内の政治、経済、貿易、そして移民政策に大きな影響を与えました。特に移民の流れや人口構成には顕著な変化が見られます。本記事では、Brexit後の移民の変化、ロンドンの人口構成、そして今後の展望について詳しく解説します。

1. Brexit後の移民の変化

Brexit前は、EU加盟国の国民は自由にイギリスへ移住し、働くことができました。しかし、Brexit後、EU市民に対する自由移動の権利が制限され、新しいポイントベースの移民制度が導入されました。この制度は、技術労働者に焦点を当て、特定の基準を満たした外国人労働者のみがビザを取得できるようになりました。その結果、EUからの移民は大幅に減少し、それを補う形で非EU圏からの移民が増加しました。

増加した移民の国籍

Brexit後、特に以下の国からの移民が急増しました。

  • インド
  • パキスタン
  • ナイジェリア
  • フィリピン
  • 中国

この増加は、イギリス政府が労働ビザの要件を変更し、非EU圏の技能労働者にも広く門戸を開いたことに起因しています。特に、医療やIT、エンジニアリングなどの分野での需要が高まり、インドやナイジェリアなどの国々からの専門職労働者が増えました。また、介護職などの低賃金労働に従事するフィリピン人の移民も増加しています。

減少した移民の国籍

一方で、以下の国々からの移民は減少しました。

  • ポーランド
  • ルーマニア
  • リトアニア
  • スペイン
  • イタリア

EU加盟国の市民は、かつてはビザなしでイギリスに移住できましたが、Brexit後は他の国々と同様に移民規制の対象となりました。特にポーランド人の帰国が顕著で、多くの人々がEU圏内の他の国々へ移住するか、母国へ戻りました。

2. ロンドンの人口構成の変化

ロンドンは長年にわたりイギリス国内でも特に多様な民族構成を持つ都市でしたが、Brexit後の移民の変化によってさらに人口構成が変わりつつあります。

  • ロンドンの総人口:約900万人
  • 移民(外国生まれ)の割合:約40%
  • イギリス生まれの白人イギリス人の割合:約37%(2001年は約60%)

このデータからも分かるように、ロンドンのイギリス生まれの白人イギリス人の割合は減少し続けており、代わりにインド系、アフリカ系、南アジア系の人口が増加しています。

また、BrexitによるEU移民の減少の影響はあるものの、それを上回る非EU圏からの移民の流入があり、ロンドンの多文化性は引き続き維持されています。

3. 産業別の移民労働者の動向

Brexit後の移民政策の変化により、特定の産業において移民労働者の構成が変化しました。

医療・介護分野

イギリスの医療(NHS)および介護分野では、EUからの労働者の減少が特に深刻でした。これにより、インドやフィリピン、ナイジェリアからの医療従事者が増加しています。例えば、NHSの看護師や医師の多くがインドやフィリピン出身者で占められるようになりました。

IT・技術分野

イギリスはIT技術者の確保にも力を入れており、特にインドや中国からの技術者が増加しました。Brexit後のポイントベースの移民制度では、ソフトウェアエンジニアやデータサイエンティストなどの職種が優遇されるため、高度なスキルを持つ外国人労働者がイギリスに流入しています。

物流・建設分野

一方、物流や建設業ではEUからの労働者の減少による人手不足が深刻化しています。これまでポーランドやルーマニア出身の労働者が支えていた分野ですが、Brexit後の規制により減少。これに伴い、イギリス政府は短期的な労働ビザの発給を検討するなど、対応に追われています。

4. 今後の展望

イギリスの移民政策は今後も変化する可能性があります。現在のポイントベース制度が機能するかどうかは、経済状況や社会的要請によって左右されるでしょう。特に以下の要因が、今後の移民政策に影響を与える可能性があります。

  • 経済状況の変動:景気低迷時には移民規制が強化される可能性がある。
  • 労働市場の需要:特定の分野での人手不足が続く場合、新たなビザ制度が導入される可能性がある。
  • 政治的圧力:移民問題は政治的にも重要な争点となるため、政権によって政策が変更される可能性がある。

5. まとめ

  • Brexit後、EUからの移民は減少し、代わりにインド、ナイジェリア、パキスタンなど非EU圏からの移民が増加。
  • ロンドンのイギリス生まれの白人イギリス人の割合は減少し、多民族化が進行。
  • 医療、IT、物流などの分野で非EU圏からの労働者が増加。
  • イギリスの移民政策は今後も変化する可能性が高く、経済や政治情勢によって調整される可能性あり。

Brexitによる影響はまだ完全には見えていませんが、今後の政策次第で移民の流れやイギリス社会の構成はさらに変わる可能性があります。

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