
「結婚すると人生が変わる」とはよく言いますが、それが国際結婚、特にイギリス人との結婚となると、その変化はさらに色濃くなります。パスポートを超えて入り込んでくるのは、紅茶、皮肉、そして“Britishness”としか表現できないあの絶妙な距離感とユーモア。この記事では、イギリス人のパートナーと結婚したときに訪れる日常生活の“変化”について、実体験や観察を交えながらご紹介します。
1. シャワーのタイミングが「朝」になる
日本では夜にお風呂に入って一日の疲れを洗い流すのが一般的ですが、イギリス人の多くは朝シャワー派。「目覚めにスッキリしたい」「夜は早く寝たい」「汗? かかないし大丈夫でしょ?」といった価値観が根底にあるようです。結果、あなたも知らず知らずのうちに、寝ぼけ眼でシャワーを浴び、バスタオルを巻いたまま紅茶を淹れる朝を送るようになります。
2. 朝ごはんが「シリアル or トースト」になる
「ご飯と味噌汁」「納豆と焼き魚」といった和朝食から、「コーンフレークと冷たいミルク」「トーストにマーマイト(!)」といったシンプルかつ衝撃的な朝食へと移行します。初めて見ると物足りなく感じるかもしれませんが、慣れると「準備の楽さ」に魅了されます。休日には豪華な「フル・イングリッシュ・ブレックファスト」(ベーコン、卵、焼きトマト、ビーンズなど)を楽しむこともあります。
3. 紅茶が水のように提供される
紅茶はもはや「飲み物」というより「習慣」、いや「礼儀」。ちょっとした用事の後でも、「とりあえずお茶でも?」の一言と共に、ミルクティーが提供されます。キッチンの棚には10種類以上の紅茶が並び、どの家庭にも「お気に入りのマグカップ」が存在。気がつけば、自分もスーパーで「PG Tips」を手に取っているようになります。
4. パブ文化が日常に浸透する
平日の夜、「今日は料理したくないね」となると自然に「じゃあパブ行く?」となります。パブはただの飲み屋ではなく、社交の場であり、家族連れも多く、子どもメニューもあるほど。魚のフライにたっぷりのチップス、グレイビーのかかったソーセージ、そしてビール。週に1回は必ず訪れるようになります。パブの名前も『The Red Lion』や『The King’s Arms』など、もはや暗記するレベルです。
5. ホームパーティとその「会話術」
イギリスでは「友達の家でディナー」が一般的な社交の場。ホームパーティでは、決して豪華ではないが工夫された料理、控えめなキャンドルライト、そして終わらない会話が待っています。重要なのは、「会話力」と「間の取り方」。イギリス人のユーモアと皮肉に満ちた会話に慣れるには時間がかかりますが、慣れると「この沈黙も会話の一部」だと理解できるようになります。
6. 別れ際が長い、立ち話が増える
パーティの終わり、または友達の家を出るとき、「そろそろ帰るね」と言ってから玄関を出るまでに20分、さらに玄関の外で10分の立ち話が追加されることもしばしば。なぜこんなに別れが名残惜しいのか。これは「言葉で距離を詰める文化」の表れであり、「去り際の余韻」を大切にしているのです。スーパーのレジでも、見知らぬおばあちゃんと世間話を始めるなんてことも珍しくありません。
7. 洗濯物を干すときの「シワ伸ばし」はしない
日本では洗濯物を干す前に「ぱんぱん」とシワを伸ばすのが一般的ですが、イギリスではそれが省略されることが多いです。乾燥機文化の影響もあり、「干す」=「しわのケア」ではなく「とりあえず乾けばOK」。アイロンがけもあまりしません。シャツが少々シワっぽくても「気にしない」のが美徳なのです。
8. 麺をすする文化が消える
うどん、そば、ラーメン…。音を立ててすするのが日本の美学ですが、イギリスではNG。音を立てる=マナー違反とされているため、麺類を食べる際は慎重に。すすらずにラーメンを食べる技術を身につけたとき、あなたは一歩「国際人」に近づいたことになるかもしれません。
9. 出汁文化から離れる
イギリスの家庭で「かつお節」「昆布出汁」などはほぼ見かけません。料理は基本的に「塩・胡椒・ハーブ」、もしくは「ストックキューブ(固形スープ)」で味をつけるスタイル。最初は物足りなさを感じるかもしれませんが、素材の味を生かした料理に目覚める人も少なくありません。結果、自分の味覚が変わったことに気づくでしょう。
10. 寿司の概念が変わる
「寿司」という言葉に期待して出てくるのは、スーパーで売っている冷たい巻き寿司、しかも具は「チキンカツ」や「クリームチーズ+サーモン」だったりします。最初は戸惑いますが、これもまた「進化」と捉えると楽しくなります。家で握り寿司を作ってあげたら感動されるので、寿司スキルを磨いておくのもおすすめです。
11. ご飯が「毎日」でなくなる
日本人にとって「白ご飯」は生活の中心。でもイギリス人と生活すると、ご飯は「たまに登場する炭水化物」に降格します。代わりに主食の座に躍り出るのは「パン」「ポテト」「パスタ」。ご飯の登場頻度が週1~2回程度になることも。米びつが必要なくなります。
12. パンの消費量が激増
朝はトースト、昼はサンドイッチ、夜はスープとバゲット…。とにかくパンの出番が多い。冷凍庫には常に2種類以上のパンがストックされ、スーパーでは「どのパンを買うか」が一大選択になります。「パンなんて全部同じでしょ」と思っていた昔の自分が懐かしくなります。
13. 旅行前の買い物リストが膨らむ
「海外旅行前に薬局・スーパーで爆買いする」のはイギリス人あるある。理由は「海外では自分の愛用ブランドが手に入らないかもしれないから」。ティーバッグ、洗剤、チョコレート、胃薬など、スーツケースの半分が生活用品で埋まることもあります。この感覚は、暮らしてみて初めて実感する「イギリスの島国感」です。
おわりに 〜変化は意外と心地よい〜
イギリス人との結婚を通じて、日本とは違う価値観や習慣がじわじわと日常に溶け込みます。最初は戸惑い、反発し、笑い、そしていつしかそれが「当たり前」になっていきます。文化が違えば摩擦もありますが、その分、相手の世界に歩み寄ることで、思いがけない発見や楽しさが待っています。
紅茶を淹れながら「今日も平和だね」とつぶやく自分にふと気づいたとき、あなたはすでに「イギリス的生活」の中にどっぷりと浸かっていることでしょう。
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