イギリスの夫婦は一つのベッドで眠るのが普通?―英国流「夫婦の寝室」事情に迫る

結婚して夫婦となったら、同じベッドで眠る――これは日本でも「夫婦なら当然」と思われがちな光景です。では、イギリスではどうなのでしょうか?

「イギリスの夫婦は皆、一つのベッドで仲良く寝ているの?」「もし夫がいびきや寝言がうるさかったらどうするの?」そんな素朴な疑問に答えるべく、今回はイギリスの夫婦間の寝室スタイルについて掘り下げてみたいと思います。

◆「一つのベッド」は基本。でも…

イギリスにおいても、基本的には夫婦は同じベッドで寝ることが一般的とされています。結婚生活における“共有”の象徴として、またパートナーシップの一形態として、同じベッドで眠ることが文化的にも根付いています。

イギリスの住宅事情を見ると、典型的なマスターベッドルーム(主寝室)には、キングサイズやダブルサイズのベッドが置かれており、夫婦が一緒に使う設計となっていることが多いです。

ただし、「一つのベッドで寝るのが普通」とは言っても、それが「絶対」ではありません。実際には夫婦ごとのライフスタイルや価値観、健康状態などによって、大きく変わることがわかります。

◆いびき、寝言、寝相…「現実問題」が分かれ道?

理想と現実は違う――これはどこの国の夫婦にも共通するテーマです。

とくに、「いびきがうるさい」「寝言で起こされる」「布団の取り合いになる」「寝相が悪い」など、パートナーの睡眠習慣に悩まされる人はイギリスにも少なくありません

そのため、睡眠の質を重視して「別々に寝る」という選択をするカップルも珍しくなく、年齢を重ねるほどその傾向は強まるようです。実際に、2021年にイギリスの寝具ブランド「Silentnight」が行った調査によれば、約25%のイギリスの夫婦が「別々の部屋で寝ている」という結果が出ています。

このような選択は、決して「仲が悪いから」「愛情が冷めたから」ではなく、むしろ互いの健康と関係性を大切にするための「合理的な判断」として受け入れられています。

◆「スリープ・ディボース(Sleep Divorce)」という考え方

ここ数年、イギリスやアメリカを中心に広まりつつあるのが、「スリープ・ディボース(Sleep Divorce)」という概念です。

これは直訳すれば「睡眠離婚」ですが、離婚とは違い、あくまでも「夜だけ別居」することで、よりよい日中の関係を築こうとするライフスタイルを意味します。

・パートナーのいびきがひどい
・勤務時間が違い、就寝・起床時間がずれている
・眠りが浅くてすぐに目が覚めてしまう

こうした理由から、「別々の寝室で寝ることで、より深く愛し合えるようになった」という声も多く聞かれます。実際、イギリスのSNSやオンラインフォーラムでは「#SleepDivorce」のハッシュタグで、「夫婦円満の秘訣」として肯定的に語られることもしばしば。

◆個人差はどこまである?夫婦ごとのスタイルを尊重する文化

もちろん、イギリスにも「毎晩同じベッドでぴったり寄り添って寝たい!」というカップルもいれば、「週末だけ一緒に寝る」など、柔軟なスタイルをとる人もいます

特筆すべきなのは、イギリスではこのような個々の選択に対して、干渉やジャッジが少ないという点です。

「別々に寝ている」と言っても、「何か問題でもあるの?」と詮索されることはあまりなく、「なるほど、その方が快適ならいいね」と受け止められることが多いのです。“個人の快適さ”が重視される文化の一端がここにも表れています。

◆住宅事情も関係している?

イギリスでは、多くの家庭が独立した寝室を複数持つことが可能な住宅設計になっています。典型的な一軒家(セミ・デタッチドやテラスハウス)では、2~3ベッドルームが標準で、子ども部屋と別にもう一部屋が確保されている場合が多いです。

つまり、「別室で寝る」という選択が物理的に可能であることも、この文化が広まりやすい理由の一つです。

◆一緒に寝る=愛情のバロメーター?

興味深いのは、イギリスでは「一緒に寝るかどうか」が愛情の度合いとは必ずしも直結しないという点です。

もちろん、ロマンチックな夜を共に過ごすことは大切にされますが、「夜ぐっすり眠るために別々に寝る」という選択が、むしろ成熟した関係性の証と見なされることすらあるのです。

特に中年以降の夫婦においては、「もう無理して一緒に寝なくてもいいよね」と、穏やかに笑いながら話すカップルも増えてきているようです。

◆まとめ:大切なのは“どこで寝るか”より“どう関わるか”

イギリスにおける夫婦の寝室文化は、「こうあるべき」という固定観念から自由で、非常に柔軟です。

  • 一緒に寝る夫婦もいれば、別々に寝る夫婦もいる
  • 別室でも心はつながっているカップルも多い
  • それぞれの睡眠スタイルを尊重することが、むしろ関係性をよくする

というように、「愛があれば同じベッド」という単純な構図には当てはまらないのが、イギリス的ともいえるでしょう。

あなたがもし、「夫のいびきがつらいけど、別々に寝たら愛が冷めるのでは…?」と不安を感じているなら、イギリスの事例は一つのヒントになるかもしれません。

最終的には、「眠り方」より「起きている時間の関わり方」が、夫婦の絆を育てるのですから。

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