イギリスでも少子化が進行、出産センターの閉鎖・休止が相次ぐ

少子化によって、地域で赤ちゃんを産める場所が減っていく。日本でも聞かれるこの問題が、イギリスでも現実になっている。

イングランドでは、出産センターでの分娩を休止したり、病院の産科機能をほかの施設へ集約したりする動きが続いている。背景には、出生数の減少、助産師などの人員確保、複雑な妊娠・出産への対応という複数の課題がある。westandnorthlondon.icb.nhs.uk

英国国家統計局(ONS)が2026年9月に公表した確定値によると、2025年のイングランド・ウェールズの出生数は58万5,396人。2024年の59万4,677人から1.6%減少し、1977年以来の低水準となった。合計特殊出生率も、2024年の1.41から2025年には1.39へ低下している。これは英国全体ではなく、イングランドとウェールズの統計だ。Office for National Statistics

2012年の出生数は72万9,674人だった。これと比較すると、2025年は約14万4,000人、約20%少ない。年ごとの変動はあっても、長い目で見た出産件数の減少は大きい。Office for National Statistics

こうした変化は、出産施設の配置にも影響している。北中部ロンドンのNHSは、出生数の減少と妊婦・新生児の医療ニーズの変化を踏まえ、出産サービスの再編を進めている。westandnorthlondon.icb.nhs.uk

英国で「Birth Centre」と呼ばれる施設は、主に助産師が中心となって出産を支える場所だ。病院に併設された施設もあれば、産科病棟から離れた独立型の施設もある。医師が対応する病院の産科病棟とは役割が異なり、出産場所の選択肢は妊娠の状態や医療上の必要性によって変わる。NHS

実際の事例を見ると、「分娩をすでに休止した施設」と「将来の閉鎖が決まった施設」がある。

施設・地域確認できる動き
セント・メアリーズ出産センター/メルトン・モーブレー2025年7月から分娩などを休止。2026年3月、分娩機能をレスター総合病院の助産師主導ユニットへ移す方針が承認された。Healthwatch Rutland
バーキング・コミュニティ出産センター/東ロンドン2025年6月30日から分娩を一時休止。妊婦健診や産後ケアなどは継続している。Barts Health NHS Trust
エッジウェア出産センター/北ロンドン2025年3月、将来的に分娩室を閉鎖する方針が承認された。現地の産前・産後ケアは拡充する計画だ。westandnorthlondon.icb.nhs.uk
ロイヤル・フリー病院/北ロンドン2025年3月、産科・新生児医療を将来的にほかの病院へ集約する方針が承認された。NHSは、実施まで数年を要すると説明している。westandnorthlondon.icb.nhs.uk

このうち、エッジウェア出産センターで2023/24年度に生まれた赤ちゃんは、年間28人だった。NHSによると、同施設での出産は説明資料が対象とした4年間、いずれも年間50人未満にとどまっていた。利用の減少には、出生数の減少に加え、妊婦の選択や出産時に必要となる医療の変化も関わっているという。westandnorthlondon.icb.nhs.uk

セント・メアリーズでも、2024/25年度の出産は年間92件だった。2026年4月の自治体の委員会記録では、少ない分娩件数と人員面の圧力によって、安全な勤務体制や臨床技能の維持に課題が生じていたことが説明されている。cabinet.leicester.gov.uk

出産件数が少なくても、分娩を受け入れる施設には、昼夜を問わず対応できる体制が求められる。セント・メアリーズについてNHSは、利用の少なさと不安定な人員体制によって、24時間の安全な助産師配置を維持できなくなったと説明した。LLR ICB

こうした説明からは、利用が減るなかで限られたスタッフを複数の施設に配置し続ける難しさが読み取れる。スタッフと設備を集めて安全な診療体制を維持しようとすることが、サービス集約の理由になっている。

一方で、施設の利用者が減る理由には、出産時に必要となる医療の変化も関わっている。

バーキングの運営主体であるBarts Health NHS Trustは、より複雑な妊娠や追加の医療支援が必要なケースが増え、独立型の出産センターで出産できる条件を満たすことが難しくなっていると説明している。分娩休止後も、センターでの産前・産後の診療は継続する。Barts Health NHS Trust

出生数の減少と、手厚い医療を必要とする妊婦への対応が同時に進めば、地域の小規模施設と病院に求められる役割も変わる。赤ちゃんの人数だけを見て、必要な医療体制まで同じ割合で小さくできるとは考えにくい。

サービスの集約を利用する家族の立場から見ると、別の課題が浮かぶ。近くの施設で産めなくなれば、病院までの移動時間や交通費、付き添いの負担が増える可能性がある。

セント・メアリーズを巡る意見聴取でも、移動時間の増加、駐車場の問題、地方部の妊婦が選べる出産場所の減少が懸念として挙がった。同時に、利用者からは、センターの落ち着いた環境や産後の支援、地域に根ざした雰囲気が高く評価されていた。cabinet.leicester.gov.uk

医療側が示す安全性と、家族が求める通いやすさの両方を満たすには、受け入れ先の病床やスタッフの確保、移動への支援、地域で継続できる産前・産後ケアまで含めた計画が必要だ。施設を集約する際には、こうした点も評価されるべきだろう。

出生数が減る時代にも、妊娠や出産を控える一人ひとりに必要な支援はある。住居費や保育費、仕事との両立といった子育て環境を考える際には、安心して出産できる場所へのアクセスも含める必要がある。

近くの出産センターを失う家族に対し、どこで、どのようなケアを受けられるのかを具体的に示すこと。それが、少子化のなかで出産医療を再編するNHSに求められている。

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