イギリスに“大地震”は起きるのか?

イギリスの地図とM3.3の震源を示す同心円、ひび割れた家屋が並ぶ“英国で大地震は起こりうるか?”をテーマにした横長イラスト

静かな大地の下で何が起きているのか、最新地震を手がかりに探る

12月の寒い夜、英国北西部の静かな町シルバーデールで、まるで“地下で何かが爆発したような”揺れが人々を飛び起こした。
地震規模は マグニチュード3.3
日本であればニュースにすらならない規模だが、英国では珍しく、多くの家庭で「家がきしんだ」「窓が震えた」という声が相次いだ。

「地震なんて日本の話でしょ?」
そんな空気が一般的なイギリスで、なぜこんな揺れが突然起きたのか。そして、将来さらに大きな地震が起きる可能性はあるのだろうか?


◆ イギリスは“地震がない国”ではない

イギリスでは年間 200〜300回 の地震が記録される。
その多くは小さく、人が揺れを感じるのは 20〜30回ほど
だからこそ、時折起きる“感じる地震”は、人々を強く驚かせる。

今回の地震を特別に感じさせた理由は
震源の深さがわずか数キロという浅さ
浅い地震は揺れや衝撃音が地表に強く伝わりやすいため、規模以上に「強く感じられる」ことがある。


◆ 火山? プレート境界? ― いいえ、原因は“古い大地”にある

イギリスには活動火山がなく、プレートの境界にも乗っていない。
ではなぜ地震が起きるのか?

鍵は「古い断層」だ。

● 古い断層の再活性化

イギリスは数億年にわたる地殻変動の歴史を持つため、地下には無数の古い断層が眠っている。
普段は動かないが、地殻のわずかな力の変化で“ズレ”が生じ、地震になる。

● 氷河期の名残 “地殻の持ち上がり”

最終氷期にイギリス北部は巨大な氷床に押しつぶされていた。
氷が溶けた今でも、大地はゆっくりと元の形に戻ろうとしており、その動きが断層に刺激を与える。

つまりイギリスの地震は、
「静かにひずみをため続ける大陸プレートの内部」で起きるもの
といえる。


◆ 「大地震は起きない」とは誰も言っていない

イギリスで観測された最大級の地震はマグニチュード6クラス。
歴史を振り返れば、中世から20世紀にかけて、各地で M5〜6 の地震が起きている。

  • 1931年:北海沖でM6.1(英国史上最大規模)
  • 1984年:ウェールズでM5.4(煙突崩落など軽〜中規模の被害)
  • 1580年:ドーバー海峡で推定M5.3〜5.9(ロンドンでも被害)

これらは“めったに起きない”が、“あり得ない”規模ではない。
しかもイギリスには、古いレンガ造りや石造りの建物が多く、
中規模の地震でも被害が出やすい構造 が少なくない。

ここが盲点だ。


◆ 今回の地震が教えてくれたこと

今回の M3.3 地震が問いかけたのは、

「イギリスは安全」という思い込みへの揺さぶり である。

  • 夜中に突然の「爆発音」
  • ぎしぎしと鳴る木造家屋
  • 何が起きたのか分からない不安

こうした反応は、地震への慣れがほとんどないイギリスならでは。
だが、まれに起きる中規模地震は、準備のない社会にこそ大きな影響を与えうる。


◆ 想定すべき“もしも”

科学者たちは口をそろえる。
「イギリスで大地震(M7級)は考えにくい。しかし M5〜6 は十分に起こりうる」

そしてその規模でも、

  • 古いレンガの外壁の崩落
  • 煙突の倒壊
  • 道路や橋の損傷
  • 電力・通信の遮断

といった“生活を揺るがす被害”が発生しうる。

イギリスには、日本のような地震教育も訓練も広く浸透していない。
だからこそ、まず知ることが最大の防災となる。


◆ 静かな大地の、静かではない未来

イギリスの大地は見た目こそ穏やかだが、
その地下ではいまもゆっくりと、確実に動いている。

今回の揺れは、
「地震はイギリスにも確かに存在する」
という、自然からの小さなメッセージなのかもしれない。

大地震が“起きる・起きない”を論じるよりも、
“もし起きたらどうするか”を考える時期に、私たちは来ている。

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