英国のインフレ率はついに3%まで低下した。統計上は確かに改善だ。しかし、数字の好転と経済の実態は別問題である。これからの3年間を展望すると、表面的なインフレ鈍化とは裏腹に、英国経済に明るい兆しは見当たらない。
インフレは下がったが「問題の核心」は残っている
2026年1月の消費者物価指数(CPI)は前年比3.0%。ピーク時と比べれば明らかに低い。しかし問題はサービス価格の粘着性だ。エネルギーや食品といった変動の大きい項目は落ち着いたが、賃金に連動しやすいサービス物価は依然として高止まりしている。
インフレ率が3%という数字は、英国の目標である2%には届いていない。しかも、この「最後の1%」が最も難しい。賃金上昇とサービス価格の連鎖が続けば、インフレは再び3%台後半へ戻る可能性もある。
つまり、インフレ低下は安定化を意味していない。
利下げはあっても「景気回復」は保証されない
イングランド銀行は現在政策金利を3.75%に据え置いているが、市場では来月の利下げ観測が強まっている。仮に0.25%引き下げられたとしても、それは景気回復の合図ではない。
むしろ逆だ。
利下げが検討される背景には、景気の弱さと雇用の悪化懸念がある。失業率は5%前後まで上昇しており、若年層の失業増加も懸念されている。雇用は景気の遅行指標であり、今後さらに悪化する可能性が高い。
金利が下がれば住宅ローン負担は軽減する。しかし、
- 実質賃金は依然として弱い
- 企業投資は低迷
- 生産性改善の兆しは限定的
という現実は変わらない。
2026〜2028年:3年間の停滞シナリオ
以下は、現状を前提にした最も現実的な推移である。
2026年
- CPI:2%台前半へ低下する可能性
- 成長率:0.8〜1.5%程度
- 失業率:5%前後で推移、悪化リスク残存
表面的には安定。しかし力強さは皆無。
2027年
- インフレは2%近辺だが、需要不足が顕在化
- 成長率は1%前後にとどまる
- 家計消費は低迷
ここで最も現実的なのは「低成長固定化」だ。回復ではなく慢性的停滞である。
2028年
- 成長率は1〜1.8%程度
- 政策金利は2.5〜3%台
- 失業率は改善せず横ばい
3年経っても「回復軌道」と呼べる状態には至らない。
上振れシナリオは理論上あるが、現実味は薄い
確かに、賃金上昇が急速に鈍化し、生産性が改善し、外部ショックも起こらなければ、ソフトランディングは可能だ。しかし英国経済は現在、
- 高税負担
- Brexit後の貿易摩擦
- 低投資体質
- 労働市場の構造問題
といった構造的制約を抱えている。
これらが短期間で改善する兆候は見られない。
むしろ警戒すべき「二つの下振れ」
① インフレ再燃型
エネルギー価格や地政学リスクが再燃すれば、CPIは再び3%台後半へ。利下げは停止し、金利は3%台で固定化。成長はほぼゼロへ。
② 景気後退型
需要が弱まり失業率が6%近くまで上昇。インフレは1%台へ低下するが、実体経済は後退。住宅市場も再び軟化。
どちらに転んでも「明るい未来」とは言い難い。
住宅市場と家計に広がる重圧
金利低下は住宅市場を下支えする可能性があるが、それは「急落回避」に過ぎない。家計は依然としてエネルギー、税、住宅費の負担を抱えている。実質可処分所得の大幅回復は期待しにくい。
英国経済の本質的な問題
今後3年を左右するのは短期金利ではない。鍵は:
- サービスインフレの粘着性
- 賃金上昇率の高止まり
- 失業率の動向
- 生産性向上の欠如
この4点が改善しない限り、英国は**「低成長・中インフレ・高不安定」状態**にとどまる。
結論:数字は改善、未来は停滞
インフレ率3%というニュースは一見好材料だ。しかし、それは高金利期の終わりを意味しても、経済復活の始まりを意味しない。
2026年から2028年にかけて最も現実的なのは、
力強い回復も崩壊もない、だが活力も希望も見えない3年間
英国経済は減速から抜け出す兆しを欠いたまま、低成長の均衡に閉じ込められる可能性が高い。
インフレは下がった。
だが、それだけでは未来は明るくならない。










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