〜人が移動する時間を避けない理由を考える〜
イギリスを旅行したり、現地で生活したことがある人なら、平日の昼間に主要道路で工事が行われ、激しい渋滞が発生している光景を一度は見たことがあるだろう。
「なぜ通勤・通学の時間帯を避けないのか」「夜間や週末にやればいいのでは?」と疑問に思うのは自然だ。
しかし実は、この工事時間にはイギリス社会特有の合理性と価値観が深く関係している。
結論:イギリスでは「人の生活」と「労働者の安全」が最優先される
日本では「利用者への影響を最小限にすること」が重視される傾向が強い。一方、イギリスでは以下の考え方がより強い。
- 工事労働者の安全と労働条件
- 追加コストを抑えること
- 住民の生活環境(騒音・光害)
- 公共サービスとしての費用対効果
その結果、平日・日中の工事が“最も合理的”と判断されているのだ。
理由① 夜間工事は「危険」で「高コスト」
夜間工事には大きなデメリットがある。
- 視界が悪く事故リスクが高い
- 強力な照明設備が必要
- 深夜労働の割増賃金が発生
- 緊急対応(救急・警察)が難しい
イギリスでは労働安全基準が非常に厳しく、「危険な環境で無理をする」こと自体が社会的に好まれない。
結果として、昼間に普通に働くほうが安全で安いという結論になる。
理由② 週末工事は住民から強く嫌われる
週末は「静かに過ごす時間」という意識が強い。
- 住宅地での騒音に対する苦情が非常に多い
- 家族時間・地域活動を尊重する文化
- 地方自治体が週末工事を制限するケースも多い
日本のように「多少うるさくても我慢する」という感覚はあまりなく、住民の苦情=政治問題になりやすい。
理由③ 「渋滞は仕方ない」という社会的合意
イギリスでは、道路は「絶対に止めてはいけないもの」ではない。
- 渋滞は日常的に起こる
- 遅れることはある程度許容される
- 工事による不便は公共インフラ維持のコストと考えられている
つまり、
「一時的に不便でも、長期的に良くなればOK」
という価値観が共有されている。
理由④ 国の方針として「昼間工事」が前提
イギリスの道路行政は、Department for Transport(運輸省)や各自治体がガイドラインを定めており、
- 原則は平日・日中作業
- 夜間・週末は例外扱い
- 追加コストは税金負担になる
という仕組みになっている。
「利用者のために時間をずらす」ことは、追加税金を使う特別対応とみなされやすい。
日本との決定的な違い
| 観点 | 日本 | イギリス |
|---|---|---|
| 利用者への配慮 | 最優先 | 重要だが絶対ではない |
| 夜間工事 | 一般的 | 例外 |
| 労働者の安全 | 重視 | さらに重視 |
| 苦情対応 | 我慢が前提 | 強い権利意識 |
日本では「止めない努力」が評価され、
イギリスでは「無理をしない判断」が評価される。
まとめ:合理性の基準が違うだけ
イギリスの道路工事が平日9時〜17時に行われるのは、
- 怠慢でも
- 計画性不足でもなく
「安全・コスト・生活の質」を総合的に考えた結果である。
日本的な感覚で見ると不親切に映るが、
イギリス的には「これが最もフェアで現実的」というわけだ。










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