その代わりにスタンガンを携行する理由
イギリスでは、多くの警察官が日常的に銃を携帯していません。これは世界的に見ても特徴的な警察制度であり、イギリス社会の価値観や歴史を色濃く反映しています。その一方で、近年は安全確保のためにスタンガン(テーザー銃)を携行する警察官が増えています。
1. 市民の信頼を重視する警察の理念
イギリスの警察制度は、1829年にロンドンで始まりました。当時から警察は軍隊のような武装組織ではなく、市民の同意と信頼によって治安を守る存在であるべきだと考えられてきました。
この考え方は「policing by consent(市民の合意による警察活動)」と呼ばれ、現在の警察組織、たとえば Metropolitan Police Service にも強く受け継がれています。銃を常に携行しないことで、市民との心理的距離を縮め、威圧感を与えないことが重視されているのです。
2. 銃を持たない背景には厳しい銃規制がある
イギリスでは一般市民による銃の所持が厳しく制限されています。そのため、銃犯罪自体が比較的少なく、警察官が日常的に銃を必要とする場面は多くありません。
この社会環境が、「警察官は原則として非武装」という制度を長年維持できている理由の一つです。
3. 危険な状況には武装警官が対応
もちろん、すべての警察官が完全に非武装というわけではありません。銃器を使用する可能性がある事件では、Authorised Firearms Officer(銃器使用の特別訓練を受けた警察官)が出動します。
彼らは厳格な基準と訓練をクリアした少数の警官であり、必要な場合にのみ銃を使用する体制が整えられています。
4. 銃の代わりにスタンガン(テーザー銃)を携行
近年の大きな変化として、多くの一般警察官がスタンガン(テーザー銃)を携行するようになっています。テーザー銃は電気ショックによって一時的に相手の動きを止める非致死性武器で、銃に比べて命に関わるリスクが低いとされています。
イギリス警察では、
- ナイフを持った容疑者
- 興奮状態で暴力の恐れがある人物
といった状況で、銃を使わずに事態を収束させる手段としてスタンガンが活用されています。
これは「できる限り致命的な武力行使を避ける」というイギリス警察の姿勢を反映したものです。
5. 市民との距離感を保つための選択
銃を携行しない警察官と、必要に応じて使用されるスタンガン。この組み合わせは、
- 市民に安心感を与える
- 過剰な武力行使を防ぐ
- 警察と地域社会の信頼関係を維持する
といった目的のもとで成り立っています。
テロや凶悪犯罪への懸念から警察の装備強化を求める声もありますが、それでもイギリスでは「銃に頼らない警察」という伝統が今なお重視されています。
まとめ
- イギリスの警察官は 原則として銃を持たない
- 背景には、市民の信頼を基盤とする警察理念と厳しい銃規制がある
- 銃が必要な場合は、特別訓練を受けた武装警官が対応
- その代替として、多くの警察官が スタンガン(テーザー銃) を携行している
このようにイギリスの警察は、致命的な武力に頼らず、信頼と最小限の力で治安を守るという独自のスタイルを続けています。










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