 
		ロンドンや他の英国都市で伝統的に用いられてきたタクシー、いわゆる“ブラックキャブ”と呼ばれる車両が、その利便性や特色にもかかわらず、近年では利用を控えるべきという声が出ています。本稿では、英国の交通事情、代替手段の台頭、そしてブラックキャブ利用時に知っておきたい注意点を整理しました。
なぜ「ブラックキャブを使わない」という議論が出てきたのか
まず第一に、料金の高止まりがあります。伝統的な車両・運転体系を維持してきたため、走行距離・待機時間・運転手の資格・車両の規格等が料金に反映されがちです。加えて、都市部では渋滞や道路制限が増えており、結果として予想以上に時間・費用がかかるケースが出ています。
第二に、配車アプリやライドシェアの拡大です。アプリを通じて事前に料金確認や車両の種類・運転手の評価ができるサービスが普及し、それらを優先する乗客が増えています。ブラックキャブは即時乗車・回転率というメリットはあるものの、選択肢と比較すると割高・柔軟性に欠けるという見方もあります。
第三に、環境・規制の変化です。都市部の低排出ゾーン(LEZ)・超低排出ゾーン(ULEZ)などの導入により、古い車両の乗り入れ制限が強化されています。ブラックキャブ車両も規格更新や追加コストが求められ、その影響が料金・車両数・運行頻度に波及しています。
ブラックキャブ利用時のメリット・デメリット
メリットとしては、専門運転手によるドア・トゥ・ドアのサービス、車両サイズ・荷物スペース・車いす対応モデルなど利用者の多様なニーズに応える実績があります。一方、デメリットとしては以下のようなものが挙げられます。
- 料金の透明性が低いこと:出発前に料金が明確でない場合があり、渋滞や待機時間が多いと追加料金が発生しやすい。
- アプリ配車に比べ利用者選択肢が少ない:車両の指定・クラス選択・料金比較などが事前に行いにくい。
- 環境規制・車両更新コストの転嫁:新しい低排出車両導入に伴う費用増が料金や運行数に影響。
代替手段として知っておきたい選択肢
英国の都市部でブラックキャブに代わる手段として特に注目されているのが、配車アプリ(ライドハイア/ライドシェア)と公共交通機関の使いこなしです。
- 配車アプリ車両:スマートフォンで車両を呼び、料金・車種・運転手の評価を確認できる。料金も競争的で、領収書・支払いもオンラインで完結しやすい。
- 公共交通機関+徒歩/シェアバイク併用:渋滞の影響を受ける道路輸送から離れ、地下鉄・バス・トラム・自転車シェアを組み合わせた移動が効率的なケースも多い。都市中心部では特に有効です。
- 事前予約型ミニバス・シャトルサービス:空港・郊外・早朝夜間などでは、予約制のシャトルやミニバスが安定的かつコスト抑制的な移動手段となります。
いつ・どう使い分けるべきか
では、具体的に「ブラックキャブを使う・使わない」をどう判断すれば良いでしょうか。以下のようなケース分けが参考になります。
- 荷物が多い/車いす・ベビーカーを含む移動:ドア・トゥ・ドア対応が必要な場合、ブラックキャブが有利な選択です。
- 深夜・早朝/公共交通が少ない地域からの移動:公共交通が使えない時間帯や地域では、ブラックキャブの迅速性が安心材料になります。
- 都市中心部・渋滞ピーク時間帯/料金を抑えたい場合:配車アプリや公共交通の方がコスト・効率ともに優位となることが多いです。
- 環境意識・コスト重視/事前予約可能な移動:環境規制・旧型車両の課題を考えるなら、最新の配車サービスや公共交通を優先すべきでしょう。
まとめ――“便利”だけで選ばず“賢く”選ぶために
英国で長く親しまれてきたブラックキャブには、確かな実績と安心感があります。しかし、都市交通が変化する中で、同じ“便利”という言葉でも状況・目的・コストが変わりつつあります。移動手段を選ぶ際には「目的地・時間帯・荷物・料金・環境規制」を整理し、複数の選択肢を比較することが肝要です。
結論として、ブラックキャブは「いつでも最良・唯一の選択肢」ではありません。むしろ「条件に応じた合理的な選択肢」の一つとして位置づけ、必要に応じて他のサービスと使い分けることが、これからの英国移動を賢くする鍵となるでしょう。










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