最近「クライシス」という言葉をよく聞くが

「クライシス(Crisis)」日本語に訳すと「危機」という言葉をコロナパンデミックが始まってからほぼ毎日のようにテレビやネットで見かけるようになりました。
英国のEU離脱後からと言ったほうが正しいでしょうか。
本日は、英国で過去3年以内に起こったクライシスについて紹介します。

長距離大型トラック運転手のクライシス

簡単に説明すると、長距離大型トラック運転手の大半は東ヨーロッパからの出稼ぎで成り立っていたのだが、英国のEU離脱後に、英国の貨幣価値が下がった影響で東ヨーロッパの人たちが英国から自国へ引き揚げてしまいました。
もともと、労働環境の悪い長距離大型トラック運転手という職は英国人には人気がなく、運転手の数は十分だったわけではありませんでした。
それが英国のEU離脱後から運転手不足問題が深刻化し、さらにコロナパンデミックが追い討ちをかける形となりました。
食料のほぼ50%を輸入に頼る英国にとってはかなり深刻な問題で、一時期スーパーの野菜コーナーから野菜が消えるという事態にまで発展しました。

PPE(個人防護用具)クライシス

コロナパンデミックは全世界で起きたことではありますが、英国ではコロナパンデミックが起きた後にいろいろな問題が発生しました。
そのうちの1つがこのPPE(個人防護用具)が不足するというクライシスでした。
日本でも薬局の店頭からマスクが消えて、ネット上で高値取引されるというのがニュースになっていましたが、英国では病院のスタッフが使うPPEが不足事態となり、医師や看護師が使い捨てのマスクや手袋を使いまわすという状態になり、多くの医師や看護師が命を落とす結果となってしまいました。
このクライシスの裏側には政治家の利権問題が大きくかかわっていたのは言うまでもありません。
ボリス・ジョンソンが人命よりもお金を重んじる人間だというのが垣間見られた瞬間でもあります。

エナジー・コスト・クライシス

ウクライナ戦争が起きてからのガソリン、ガス、電気代の急激な値上がりが、国民の家計をひっ迫しているという話です。
英国はロシアのガス供給にそんなに頼っていないので影響ないと思われがちですが、ロシアからたくさんのガス供給を受けていた国々が英国のガスの供給元(ノルウェー、カタール、USなど)からガスを購入することになり供給が一気に加速したのです。
ロシアからのガスの供給がなくなったから、ガスは使いませんとはなりません。
そのため、ガスがある国に注文が殺到するわけで、ガス所有国がそれを断る理由はありません。
需要が増え、価格が上がるのは自然の摂理といえるでしょう。
ただ、英国では石油会社、ガス会社が過去最高益をただき出してバッシングを浴びていますが、石油会社、ガス会社が利益を上げているのは、各会社の投資部門が大きな利益を上げているというだけで、一般市民から高い公共料金をせしめて利益を上げているわけではありません。
バッシングされる相手はいまだに30-40%の税金をガソリンにかけている英国政府なのではないでしょうか。

賃貸物件クライシス

賃貸物件クライシスとは、賃貸物件の件数が昨年にくらべ3分の1に減少したことで、家賃が急激に上昇してしまったことです。
ロンドン市内の平均賃貸価格は17%も上昇しました。
賃貸物件もガソリン、ガスと同じで原理で供給が急激に減り、需要は去年と変わらないので、家賃が上昇してしまうのは当たり前の話です。
ただ、問題はなぜ賃貸物件が減少したのかということです。
ある調査によりますと、今年の3月~6月にかけて約94%の賃貸物件のオーナー(英国ではランドロードと呼ばれています。)が物件の貸し出しを辞めて売りに出したという報告がされています。
理由は、税制の改正や中央銀行の金利引き上げなどで不動産投資自体にうまみがなくなってしまったことでしょう。

住宅ローン・クライシス

賃貸物件クライシスとつながってきますが、英国中央銀行が利上げに踏み切ったことで、住宅ローンの金利も今後上がってきます。
通常は2年、5年の固定金利で住宅ローンを組むのが一般的で、今までは安い金利の人だと2%、通常で3.5%でした。
それが今後ローンの金利が6%ぐらいに上がることになりますので、月々の返済額が約4%上がります。
人によっては400~500ポンドの出費となり、住宅ローンを払えずに銀行に家をとられてしまう人が出てくることも考えられます。
さらに、これから物件を買おうと考えていたひとが金利の引き上げに伴い、既に通っていた住宅ローンの融資実行が取り消しになる事態も発生しています。
9月下旬から10月上旬にかけ、約2000件の住宅ローンの融資実行が取り消しになりました。
前の首相リズ・トラスのせいだというマスコミもいますが、本当の理由は金利の引き上げです。

フード・コスト・クライシス

単純に食料品の値段がとにかく上がって一般家庭の家計をひっ迫している状態です。
英国はとにかく昔から物価が高いということを言われていましたが、ここ10年ぐらいはそんなに物価が上がっているという実感はありませんでした。
しかし、今年に入りウクライナ戦争が始まってからは、食料品の値上げに歯止めがかかりません。
先月の食料品だけに関しての値上げ率は17%と、異常な値上がり率になっています。
英国には、フードバンクという生活保護団体が低所得者向けにスーパーの食料品を無料で配布するサービスが普及しており、現在そのフードバンクを利用している人の数は英国内で217万いると言われています。

今後どうなる?

英国に現在住まわれている方、これから英国に来る予定の方がいちばん知りたいのは、今後英国はどうなっていくのか、ではないでしょうか。
正直わかりませんが、このまま政府が何もしなければ、状況がよくなることはないと思います。
英国はアメリカと同じで、金融の引き締めという道を選んでしまったため、もとの金融緩和に戻ることは、まず、ありえないでしょう。
金融緩和がないということは、減税も恐らく行われないでしょう。
ただ、底辺の人たちを見捨てないというのが英国のいいところではあるので、金融支援的なことは要所要所で行われることになるでしょう。
英国にいれば、飢え死にすることはないということです。

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