ロンドンに来る前、多くの日本人は少し期待しています。
イギリスに行けば、イギリス人の友達ができる。
パブでイギリス人と仲良くなる。
週末はローカルの友人と出掛ける。
自然に英国文化の中に入っていく。
しかし、実際にロンドンで生活してみると、意外な現実に気づきます。
仲良くなるのは、なぜかイギリス人ではない。
気づけば、友達は中東の人、東欧の人、南米の人、アジア系の人。
職場でも、近所でも、学校でも、最初に距離が縮まるのは移民同士。
「せっかくイギリスに来たのに、イギリス人の友達が全然できない」
これは、かなりロンドンあるあるです。
そもそもロンドンは「イギリス人だけの街」ではない
まず大前提として、ロンドンは普通の意味での「イギリスの街」ではありません。
もちろんロンドンはイギリスの首都ですが、人口構成を見ると、世界中の人が集まる巨大な国際都市です。Trust for Londonによると、ロンドン住民の41%は英国外で生まれており、他のイングランド主要都市の21%と比べても非常に高い割合です。
つまり、ロンドンで生活していて出会う人のかなりの割合は、そもそもイギリス生まれのイギリス人ではありません。
さらに、ロンドンには世界中から来た大きなコミュニティがあります。Trust for Londonは、2021年国勢調査に基づき、ロンドンには5,000人以上のディアスポラを持つ国が94か国あると説明しています。
だから、ロンドンで中東の人、東欧の人、南アジアの人、アフリカ系の人、南米の人と仲良くなるのは、実はまったく不自然ではありません。
ロンドンは、イギリスにありながら、世界の縮図のような街なのです。
イギリス人はすでに自分の人間関係を持っている
ロンドンでイギリス人の友達ができにくい理由の一つは、彼らがすでに自分の人間関係を持っているからです。
地元の友人。
大学時代の友人。
家族。
昔からの同僚。
パートナーの友人。
子ども関係のつながり。
イギリスで生まれ育った人には、すでに生活の中に人間関係の土台があります。そこに、大人になってから来た外国人が自然に入り込むのは、簡単ではありません。
これは冷たいというより、どこの国でも同じです。
日本でも、大人になってから来日した外国人が、日本人の学生時代からの友人グループに自然に入るのは簡単ではありません。
職場で話すことはあっても、週末に家へ招かれる関係になるには時間がかかります。
ロンドンでも同じです。
移民同士の方が距離が縮まりやすい
一方で、中東の人や東欧の人など、同じようにロンドンへ来た人たちは、最初から共通点があります。
英語が母国語ではない。
ビザや仕事で苦労した経験がある。
家賃の高さに驚いている。
イギリスの天気に文句を言っている。
NHSや銀行口座や住宅探しに苦労したことがある。
家族や故郷を離れて暮らしている。
この「外国人としてロンドンで生きている」という共通体験が、かなり大きいのです。
イギリス人とは文化の話から始まるかもしれませんが、移民同士では生活の苦労がすぐに共有できます。
「家賃高すぎるよね」
「イギリスのサービス遅すぎるよね」
「天気悪いよね」
「英語のアクセント難しいよね」
「ビザ面倒くさいよね」
このような会話は、移民同士だと一瞬で通じます。
だから、自然と距離が縮まりやすいのです。
東欧の人は距離感が日本人に近いことがある
日本人が東欧の人と仲良くなりやすい理由の一つは、意外と距離感が合うことです。
もちろん国によって違いますが、東欧出身の人には、最初は少し無愛想に見えても、仲良くなると情が深い人が多い印象があります。
最初から過剰にフレンドリーではない。
無理に明るく振る舞わない。
本音と建前が比較的分かりやすい。
仕事や生活に対して現実的。
移民として努力している人が多い。
日本人にとって、イギリス式の軽い雑談や皮肉、階級的な空気よりも、東欧の人のストレートさの方が分かりやすい場合があります。
「言っていることが分かりやすい」
「無理に笑わなくていい」
「仲良くなると助けてくれる」
こうした感覚が、日本人には意外と合うのです。
中東の人は人間関係の温度が高い
中東の人と仲良くなりやすい理由は、また少し違います。
中東系の人たちは、家族や友人とのつながりを大切にする文化を持つ人が多く、日本人から見ると人間関係の温度が高く感じられることがあります。
一度仲良くなると、食事に誘ってくれる。
家族の話をしてくれる。
困っていると助けてくれる。
ビジネスでも個人的な信頼を重視する。
会話に感情がある。
イギリス人のように、礼儀正しいけれど距離がある関係に比べると、中東の人との関係は早く温かくなることがあります。
日本人は最初、少し距離の近さに驚くかもしれません。
しかし、ロンドンで孤独を感じている時には、その人懐っこさや面倒見の良さがありがたく感じることもあります。
イギリス人の社交は意外と閉じている
イギリス人は表面的にはフレンドリーです。
「How are you?」
「You alright?」
「Lovely weather, isn’t it?」
「We should catch up sometime.」
しかし、この「フレンドリー」と「友達になる」は別物です。
イギリス人は軽い会話は上手です。
でも、実際にプライベートな友人になるには時間がかかります。
職場で毎日話していても、仕事後に会うとは限らない。
パブで盛り上がっても、次に会う約束をするとは限らない。
「Let’s meet up sometime」と言われても、本当に予定が決まるとは限らない。
日本人から見ると、「あれ?仲良くなったと思ったのに」と感じることがあります。
イギリス人の社交は、入口は柔らかいのに、奥の部屋に入るのは意外と難しいのです。
階級・教育・趣味の壁もある
イギリス社会には、見えにくい階級や教育背景の壁があります。
話し方。
アクセント。
学校。
大学。
仕事。
住んでいるエリア。
趣味。
パブやスポーツの文化。
こうした要素が、人間関係に影響します。
日本人から見ると、同じイギリス人に見えても、実際にはかなり細かい文化的な違いがあります。ロンドンの中でも、職業や地域によって人付き合いの雰囲気はまったく違います。
そのため、イギリス人の友人グループに入るには、単に英語が話せるだけでは不十分なことがあります。
冗談の感じ。
皮肉の受け取り方。
パブでの振る舞い。
政治や階級の話題の避け方。
フットボールやテレビ番組の共通知識。
こうした「暗黙の文化」を共有していないと、なかなか深い関係になりにくいのです。
英語が完璧でない者同士の方が楽
ロンドンでは、英語が母国語ではない人同士の会話の方が楽なことがあります。
お互いにアクセントがある。
お互いに完璧な表現を求めない。
分からなければ聞き返せる。
文法が少し崩れても気にしない。
ゆっくり話しても恥ずかしくない。
一方で、ネイティブのイギリス人との会話では、スピード、皮肉、冗談、アクセント、スラングについていく必要があります。
もちろん親切なイギリス人も多いですが、会話のテンポが速いと、外国人側は疲れます。
その点、東欧、中東、南米、アジア系の人とは、英語を第二言語として使う者同士の安心感があります。
完璧な英語より、通じる英語。
正しい発音より、分かり合える会話。
これが、友達になりやすさにつながります。
ロンドンでは「イギリス人と友達になる」より「ロンドン人と友達になる」方が現実的
ここで考え方を変える必要があります。
ロンドンに来たからといって、友達が白人イギリス人でなければ意味がない、というわけではありません。
ロンドンらしさとは、むしろ多国籍であることです。
ONSの2021年国勢調査では、イングランドとウェールズ全体でも国外生まれの人口は1,000万人、全体の16.8%に達しています。
その中でもロンドンは特に国際色が強い都市です。
つまり、中東の人や東欧の人と友達になることは、「イギリス生活に失敗している」のではありません。
むしろ、ロンドンらしい生活をしているとも言えます。
ロンドンで出会う人は、イギリス人だけではありません。
イラン人、トルコ人、ポーランド人、ルーマニア人、ウクライナ人、ブルガリア人、インド人、ナイジェリア人、ブラジル人、中国人、韓国人、日本人。
こうした人たちが同じ街で働き、学び、家賃に苦しみ、地下鉄に文句を言いながら生きている。
それがロンドンです。
「本物のイギリス」を求めすぎると疲れる
日本人は、せっかくイギリスに来たのだから「本物のイギリス」に触れたいと思いがちです。
イギリス人の友達。
英国式の家。
パブ文化。
アフタヌーンティー。
きれいな英語。
ローカルな生活。
しかし、現実のロンドンは、観光パンフレットのようなイギリスではありません。
ロンドンの現実は、もっと混ざっています。
英語のアクセントもバラバラ。
食べ物も世界中の料理。
職場も多国籍。
隣人も外国出身。
パブの店員も移民。
大家も外国人。
同僚も外国人。
つまり、ロンドンで「純粋なイギリス人社会」に入ろうとすると、逆に不自然なほどです。
ロンドンで暮らすということは、イギリス文化だけでなく、世界中の文化が混ざった街で生きるということです。
イギリス人の友達を作るにはどうすればいいのか
もちろん、イギリス人の友達ができないわけではありません。
ただ、自然に待っているだけでは難しいことがあります。
イギリス人と友達になりたいなら、共通の活動に入るのが一番現実的です。
趣味のクラブ。
スポーツ。
ボランティア。
地域イベント。
子どもの学校関係。
犬の散歩仲間。
読書会。
ランニングクラブ。
音楽やアートのコミュニティ。
イギリスでは、ただ「友達になりましょう」というより、何か一緒にすることを通じて関係ができることが多いです。
職場だけで友達を作ろうとすると、意外と仕事上の関係で終わります。
しかし、趣味や地域活動を通じると、もう少し自然に距離が縮まります。
それでも中東・東欧の友達ができるのは悪いことではない
せっかくイギリスに来たのに、友達が中東や東欧の人ばかり。
そう感じると、少し「これでいいのか」と思うかもしれません。
でも、それはむしろロンドン生活の自然な形です。
彼らもまた、イギリスで生きる仲間です。
家賃に苦しみ、英語に苦労し、仕事を探し、ビザに悩み、家族を離れて暮らしている。
その経験は、日本人のロンドン生活と重なる部分が多いのです。
イギリス人と友達になれないから失敗なのではありません。
外国人同士でつながることも、ロンドンのリアルな人間関係です。
むしろ、イギリス人だけと付き合うより、ロンドンという街の本質を知ることができるかもしれません。
まとめ:ロンドンで友達になる相手が外国人なのは、かなり自然なこと
ロンドンで生活していると、イギリス人よりも中東の人や東欧の人と仲良くなることがあります。
その理由は、単純です。
ロンドン自体が多国籍都市だから。
イギリス人はすでに自分の人間関係を持っているから。
移民同士の方が共通体験が多いから。
英語が第二言語同士の方が楽だから。
中東や東欧の人の距離感が日本人に合うことがあるから。
イギリス人の社交は表面的に見えて、実は奥に入るのが難しいから。
せっかくイギリスに来たのに、イギリス人の友達ができない。
でも、気づけば中東や東欧の友達ができている。
それは失敗ではありません。
むしろ、ロンドンという街にちゃんと入っている証拠です。
ロンドンは、イギリスであって、イギリスだけではない街です。
そこで出会う人たちは、英国人である前に、ロンドンで生きる人たちです。
イギリス人の友達を作ることだけにこだわらず、ロンドンで出会った人との関係を大切にする。
その方が、結果的にロンドン生活はずっと豊かになります。










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