
イギリスの労働市場では、従業員が「不当解雇」から法的に保護されるのは、なんと2年以上働いてからである。つまり、最初の2年間は会社の気分次第でポイ捨て可能という素晴らしいシステムが整っているのだ(もちろん例外もあるが)。
では、この2年という魔法の壁を超えた後、労働者は本当に守られるのだろうか? それとも単なる気休めなのか? 今回は、イギリスの「不当解雇制度」の実態を皮肉たっぷりに深掘りしていく。
2年経てば安心? いやいや、それは幻想です
イギリスの法律では、従業員が2年以上働くと「不当解雇」から保護されることになっている。しかし、これを**「安心」と考えるのは甘すぎる**。
なぜなら、
- 会社は**「合理的な理由」**があれば解雇できる
- その「合理的な理由」は、会社が決める
- 訴えたとしても、労働裁判所(Employment Tribunal)まで行くのは金も時間もメンタルも消耗する
- 仮に勝ったとしても、会社が従うとは限らない
つまり、2年以上働いても「会社に都合のいい従業員」でない限り、あなたの雇用は風前の灯火だ。
では、不当解雇の訴えを起こすと何が起こるのか?
労働裁判所に訴えたらどうなる?
「不当解雇だ!」と感じたら、労働裁判所(Employment Tribunal)に訴えることができる。勝訴すれば、以下のような「救済措置」を受ける可能性がある。
- 補償金(Compensation):会社が支払うべき賠償金
- 復職命令(Reinstatement):元の職に戻す命令
- 再雇用命令(Re-engagement):同じ会社内の別の職に就かせる命令
ただし、ここで重要なポイントがある。
- 補償金の額は、意外とショボい
多くのケースでは数千ポンド程度。つまり「解雇されるストレス」と「裁判のコスト」に見合わない額しかもらえないことが多い。 - 会社が復職命令をガン無視するケースも
労働裁判所が「元の職に戻せ」と命じても、会社側は「そんなの知るか」と拒否することがある。従わなかった場合の罰則も、そこまで厳しくない。 - 再雇用されたとしても、地獄が待っている
もし同じ会社に戻った場合、職場の雰囲気は氷点下。「アイツ、会社を訴えたやつだ」と陰口を叩かれるのは間違いない。
では、そんな環境でも働き続ける強者はいるのだろうか?
会社を訴えたのに、そのまま働き続ける猛者たち
「労働裁判所に訴えたのに、まだ会社に居座る人なんているの?」と思うかもしれないが、意外といる。
どうしてそんなことが起こるのか?
- 労働裁判所が「復職命令」を出したから
- 会社が解雇を撤回したから(「めんどくさいから、まぁいいか」となるケース)
- 労働組合のバックアップで、会社側が諦めたから
- 経営陣が「関わりたくない」と思い、うやむやにしたから
特に公共部門や大企業では、労働規則が厳格なので、意外と「訴えたけど職場に残る」パターンが発生する。
「会社を訴えたけど辞めない」メンタルはどこから来るのか?
職場に戻った後、同僚たちの視線は冷たくなることが多い。しかし、そんな環境でも「気にしない」「むしろ開き直る」強者が存在する。
- 「権利を守れる人間」として尊敬(?)される
- 逆に強気に出られるようになる(「私を解雇するなら、また裁判するけど?」)
- 労働組合が守ってくれるので無敵モード
- 「辞めたら負け」という意地
「法的に守られている」という安心感があれば、職場の雰囲気が最悪でも気にしないメンタルが鍛えられるのかもしれない。
まとめ:イギリスの不当解雇制度は「勝っても地獄、負けても地獄」
イギリスの不当解雇制度は、一見「労働者を守る仕組み」のように見える。しかし、実態は次のようなものだ。
- 最初の2年は、会社の都合で好きにクビを切れる
- 2年経っても「正当な理由」があれば簡単に解雇可能
- 裁判に勝っても補償金はショボいし、復職命令も形だけ
- 職場に戻ったとしても、空気は最悪
要するに、「労働者は守られている」という幻想を持たせるためのシステムなのだ。
結局のところ、本当に強いのは法律ではなく、「クビになっても困らないくらいのスキルと人脈を持っている労働者」 だということだ。
イギリスで働くなら、この事実をしっかり理解しておく必要がある。
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