
同じフィッシュアンドチップスでも、ロンドン・ヨークシャー・スコットランドでは“衣”の味も食感もまるで別物。 その違いを生むのは、魚の種類(タラ or ハドック)、揚げ油、そして地域の文化です。 本記事では、イギリス各地の「ベスト衣」を研究しながら、サクサク食感と香ばしさの秘密を紐解きます。
地域別“衣”スタイル早見表
地域 | 特徴 | 主な魚 | 使用油 | 食感 |
---|---|---|---|---|
ロンドン南部 | 軽いバッタータイプ。炭酸水を使う店も多く、衣が薄く香ばしい。 | タラ(Cod) | 植物油(キャノーラ・ひまわり) | 軽快・カリッと系 |
ヨークシャー北部 | 厚みがあり、ふっくら膨らむタイプ。やや塩味強め。 | ハドック(Haddock) | 牛脂(ビーフドリッピング) | 重厚・香ばしい・濃い黄金色 |
スコットランド | 衣に麦芽酢やビールを使うケースが多く、風味が強い。 | ハドック主体 | 牛脂+植物油ブレンド | 香り高くコクが深い |
ウェールズ西部 | やや薄衣、塩と酢を効かせた軽い後味。 | タラ中心 | 菜種油またはピーナッツ油 | さっぱり・軽やか |
タラとハドックの違いが“衣”を変える
タラ(Cod)は水分が多く身がふっくら。 そのため衣は薄く軽いタイプが合います。 炭酸水やビールを使って泡を多く含ませることで、蒸気の逃げ道を作り、衣がサクサクに仕上がります。
一方のハドック(Haddock)は筋肉が締まり香りが強い魚。 油と馴染むように厚めの衣で香ばしさを重ねるのが北部スタイル。 ビーフドリッピングのコクと相性抜群です。
揚げ油の種類と風味の違い
- ビーフドリッピング: 北部で愛される伝統油。香ばしさと濃厚な旨み。揚げ温度を高めに保ちやすい。
- 菜種油(ラプシード): ロンドンなど都市部主流。軽く、魚の香りを邪魔しない。
- ピーナッツ油: 香ばしさと安定した温度が特徴。ウェールズや南西部に多い。
- ブレンド油: スコットランドで多く、牛脂+植物油でバランス重視。
サクサクを生む調理技術と温度管理
- 温度帯: 一次揚げ160℃、仕上げ180℃。二度揚げで衣の内外に温度差を作る。
- 衣の粘度: 泡立てすぎず「とろみ」がポイント。落とした時に2秒で沈む程度が理想。
- 冷水使用: 衣を直前に作り、冷たさでグルテン形成を抑える。
- 排油: 揚げた直後にワイヤーラックで油をしっかり切る。
この工程はどの地域でも共通して「ベスト衣」を作る基本。 温度管理が1〜2℃違うだけでサクサク感が激変します。
現代英国のトレンドと日本で再現するコツ
- ビールバッター:クラフトビールを衣に使い、香りと色を調整。
- グルテンフリー化:米粉やコーンスターチを混ぜ、軽やかな食感に。
- 日本での再現:菜種油 or 牛脂ミックス+炭酸水衣で近い仕上がりに。
- 低温+高温の二段揚げ:衣がはがれず、冷めてもパリパリ。
よくある質問(FAQ)
ロンドンとヨークシャー、どちらが本場?
どちらも本場ですが、発祥地はロンドン。衣文化としては北部(ヨークシャー)がより“香ばし系”で根強い人気です。
なぜ北部では牛脂を使う?
寒冷地では固まりやすい植物油より、保温性の高い動物性脂が伝統的に使われてきました。風味も深く仕上がります。
家庭で再現するなら?
衣に炭酸水+少量のビールを加え、180℃で二度揚げ。仕上げにモルトビネガーをひと吹きで“英国の香り”が完成します。
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